労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

試用期間中だから自由に解雇できる、という誤解。

 

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本採用する前に試用期間を設定して、
どれぐらい働けるか見てみる。


このように採用前に試用期間を設けている職場は多いのですが、

「試用期間中は自由に解雇ができる」

と誤解している人がいらっしゃいます。


お試し期間なんだから、
会社側の判断で雇用契約を解除してもいいだろう。

そういう理屈というか思い込み(?)なんでしょうね。


ですが、

実際は試用期間中といえども、解雇は制限されています。

 

 

 

試用期間中でも解雇予告の手続きは必要。


例えば、

採用から2ヶ月は試用期間中だから、
この期間ならば自由に解雇ができる。

そう思っている方もいます。


「試用期間だから解雇は自由」

 

どういう理屈なのか分かりませんが、
試用期間中であっても自由に解雇はできないんです。


採用から1ヶ月を経過した時点で、
事業所が雇用契約を解除したいと考えた場合、
それは通常解雇と同じ扱いになります。

 

  1. 客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかどうか(労働契約法16条)。
  2. 解雇予告期間を設けるか、解雇予告手当を支払う(労働基準法20条)。

この2つの手順が必要になります。


試用期間は2ヶ月間であったとしても、
採用から1ヶ月を経過していれば、
もう自由に解雇はできません。


試用期間だから、
客観的に合理的な理由なく、社会通念上相当でなく、
解雇予告の手続きも無しに解雇できる。

これは間違いです。

 


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解雇予告無しで解雇できるのは採用から14日目まで。


例外として、

採用から14日目までの試用期間ならば、
解雇予告の手続き無しで雇用契約を解除できます(労働基準法21条)。

ただ、この場合でも、
労働契約法16条は適用されますから、

「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかどうか」
の判断は必要です。


どういう条件を満たせば、
「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかどうか」
と判断されるのか。

ここは具体的に書いていないため、悩ましいですよね。


例えば、
常習的に遅刻をする人を解雇するならば、

いつ、どれだけの時間、遅刻したのか。
事業所はどういう注意をしたのか。
顛末書なり反省文を書かせたのか。
遅刻はどれぐらいの頻度なのか。
今まで何回、遅刻をしたのか。

こういう具体的な事実を記録しておく必要があります。


会社の物品やお金を横領した場合も、

いつ、何を横領したのか。
どれぐらいの規模で。
今まで同じことをやっていたのかどうか。

など、具体的な記録を残しておかないといけません。

 

どれぐらいの情報が蓄積されれば、
「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」
と判断されるのかは、個々に違いがあります。

具体的に詳しく記録を残していれば、
解雇は妥当だと認定される可能性は高まります。

 

 

 

 

試用期間の長さはどれぐらいが適切なのか。


試用期間を設けるか、設けないかは事業所が任意に決められます。

さらに、その長さも自由に設定できます。

1ヶ月でも2ヶ月でも、3ヶ月でも6ヶ月でも構いません。


試用期間の目的は、
本人に適性があるかどうかを判断する期間です。


ならば、

1ヶ月も必要なのか
2ヶ月もいるか
3ヶ月や6ヶ月では長すぎるのでは

と思えてきます。

 

番組名は忘れましたが、
テレビでラーメン店が人材を採用するかどうか
判断するシーンが放送されていて、

そのお店では、
30分で採用するかどうかを判断していました。

実際に、30分間、
お店で仕事をしてもらって、
どれぐらい動けるかを見て、
採用するかどうかを決めるんですね。


「たった30分で判断しちゃうの?」
と思うところですが、

お客さんが入ってきたらお冷が必要で、
すぐにお冷を出せるように準備をする。

食器が足りなくなる前に洗い物をしておき、
料理ができたら運ぶ。

お客さんが会計に行ったあとは、
食器を下げる。

このような動作がそれなりにできるかどうか。

もちろん、
教えてもらえなければできない業務もありますが、
お冷や洗い物、食器の下げものぐらいならば、
入ってすぐの人でもできそうです。

 

飲食店でなくても、
数日、本人の動きを見ていれば、
適性があるかどうかは判断できるはず。

ならば、
試用期間は1ヶ月や2ヶ月も必要ないのです。


向いていない仕事ならば、
早めに辞めて他の仕事をした方が時間を失いませんので、
本人のためになります。

お店も、適性がない人を雇用することを避けられます。

テレビに登場したラーメン屋は、
職場に合わない人をサッと追い出してくれる優しい事業所です。


試用期間が短いと、
何だか冷たい感じがするかもしれませんが、
本人だけでなく事業所にも良い効果があります。

 


3ヶ月や6ヶ月も試用期間を設定するなどもはや異常で、
その会社は人を見る目が無いと言っているようなものです。

そんなに長い時間をかけなければ、
新入社員の適性を判断できないなら、
もう採用そのものをやめるべきです。


試用期間を引き延ばしても、
自由に解雇はできませんから、
長期間にわたって試用期間を設けるのは無意味です。


試用期間が長いほど、
その会社の労務管理はヤバイと言ってもいいぐらいです。

 

 


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試用期間が満了した段階で本採用しない。これも通常解雇と同じ。


試用期間中に解雇するだけでなく、
期間が満了した時点で本採用しない。

これも解雇となります。


解雇ですから、
先程と同じように、

  1. 客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかどうか(労働契約法16条)。
  2. 解雇予告期間を設けるか、解雇予告手当を支払う(労働基準法20条)。

この2つの条件をクリアしないといけません。


試用期間の満了時点で本採用しなくても解雇にはならない
と思っていらっしゃるなら、それは間違いです。


採用から14日を超えれば、上記2の解雇予告の手続きが必要になります。

さらに、1については、どの時点で雇用契約を解除する場合でも必要です。


試用後、本採用しないならば、

本採用しない理由を具体的に説明し、

その後、1ヶ月間は雇用契約を続けて、契約を解除する。
もしくは、1ヶ月分の解雇予告手当(1ヶ月分の給与だと考えてOK)を支払う。

このような手続きが必要です。


「試用期間が終わったら、本採用はしませんので、悪しからず」
という一言だけで済ませることはできないのです。


最悪なのは、

3ヶ月なり6ヶ月なり、試用期間を引っ張って、
その挙げ句に、本採用しない。

しかも、上に書いた解雇の手続きもしない。


そういう事業所も世の中にはあるのでしょう。

 

あなたが応募者ならば、
採用段階で、試用期間を異常に長く設定している事業所は避けましょう。

試用期間は短ければ短いほど良いです。

短いほど、早くチャンと採用したいという気持ちがあるのですから、
誠実な事業所である可能性が高いです。


一方、試用期間が長い事業所は、
「都合が悪くなればパッと契約を解除してやろう」
と考えている可能性があり、
あまり良い労務管理がなされていないと予想できます。

 

試用期間が終わった段階で本採用しない場合も、
通常解雇と同じ手続きが必要で、

  1. 客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかどうか(労働契約法16条)。
  2. 解雇予告期間を設けるか、解雇予告手当を支払う(労働基準法20条)。

この2つの手順は踏まないといけないことは忘れないでください。

 

 


試用期間は採用から14日間に設定する。


じゃあ、試用期間はどれぐらいがいいのか。

理想は採用から14日までです。

14日目までならば解雇予告の手続きが不要ですし、
解雇されたとしても労働者は方向転換しやすいです。

ズルズルと雇用されると、
他の仕事に時間を注ぐ機会を失ってしまいます。


採用から14日目までならば、
解雇されても不利益の程度はわずかですから、
解雇理由がそれほど深刻なものでなくても
解雇が有効になる可能性は高いです。


14日もあれば、
その仕事に向いているかどうかは判断できるはずです。


今までそうだったから、
1ヶ月や2ヶ月に試用期間を設定しているだけで、

実際はもっと短期間で適性を判断できるでしょう。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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