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副業の落とし穴 2つの会社で働く人は労災の給付が少なくなる?

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仕事中に怪我をしたり、
業務が原因で病気になれば、
労災保険を利用して治療できます。

この点はご存知の方も多いハズ。

 

 

全員が労災保険の対象になる。


ちなみに、

フルタイムで働く社員だけでなく、
パートタイマーや学生のアルバイトであっても
労災保険は適用されます

 


時折、

「学生は労災保険が使えない」
と思っている方もいますけれども、
学生であっても使えます。

 

学生にも労災保険はある

 


保険料は事業主が払う。


雇用保険や健康保険、
厚生年金の保険料は、
本人も支払いますけれども、

労災保険は事業主が保険料を支払っています


従業員に支払った賃金の総額に
労災保険料率を掛けて、
支払う保険料を決めます。

 

例えば、
毎月、全従業員を合わせて、
総額で3,000万円の給与を払っていれば、

そこに、
労災保険料率、仮に0.3%だとすれば、
9万円が1ヶ月分の労災保険料になります。

 

ちなみに、
労災保険料は業種別に分けられており、
怪我をしやすい業種ほど保険料率が高く、
サービス業など労災事故が起こりにくい業種だと低く設定されています。

【改正】平成30年4月からの労災保険料。上がるのは3業種。下がるのは20業種。

 


2つの会社で働けば、労災保険も2つ加入する。


副業や兼業で働く複数就業者の労災保険給付については、
労働政策審議会でも話し合われているところ。

 

労災保険は、
労災保険が適用されている事業所で働いている人は全員が対象で、
従業員は保険料を負担せず、
事業主が保険料を負担します。

 

もし、
2つの会社で勤務していたとすれば、
労災保険にも2つ入っている状態になるんですね。

 

ただ、
2つといっても
給付が二重になるわけではないのが
問題になっているところ。

 

労災保険に2つ入っているならば、

「仕事で怪我をしたら二重に給付を受けられるんじゃないか」

 

そう思うところですが、
実際はそうなりません。

 

 

 


どこで労災事故が起こったかで、給付額が変わる。


通勤途中で怪我をした。
仕事場で怪我をした。
業務が原因で病気になった。
仕事を終えて、帰宅する途中で怪我をした。


これらの場合に労災保険から給付が出ますけれども、
2つの会社で勤務していると、


【どちら側の労災保険を使うか】

が問題になります。

 

 

 


どの収入を基準に労災保険の給付が決まるのか。


とある人物が
2つの会社で働いていると仮定して、

会社A:月収15万円
会社B:月収50万円

このように収入があるとしましょう。


さらに、
AでもBでも労災保険には加入しているとします。


午前から夕方までは
Bで仕事をして、

その後、

BからAに移動して
夜まで仕事をしています。


Aでの仕事が終われば、
その後は帰宅しています。


1日のスケジュールは
上記のようになっていると
考えてください。




|Bに出勤。

|Bで勤務







夕方

|Bでの仕事が終わり、
|Aへ出勤。


|Aでの仕事が終わる。


帰宅


図で表すとこういうイメージです。


先にBで仕事をして、
終わったらそのまま
Aに移動している。


では、
会社Aで怪我をしたらどうなるか。

高いところに登っていて、
落下してしまい、
1ヶ月ほど治療が必要な怪我をした。


この場合の労災給付はどうなるか。

 

 


52万円なのか、それとも12万円なのか。

 

怪我で仕事を休むと、
労災保険から収入の80%が給付されるとすれば、
その給付額はいくらになるでしょうか。


会社Aでは月収15万円。
会社Bでは月収50万円。

合計すると、この人の収入は月65万円です。

 

付け加えると、
怪我をした場所は、会社Aです。


収入の80%が労災給付となるのですが、
金額はいくらになるか。

 

「月収65万円の人だから、
52万円が労災保険から給付されるんだろう」

「いや、Aで労災事故が起こったんだから、
月収15万円を基準にして、
12万円が労災保険から給付されるんじゃないか」


どちらもなるほどと思える判断ですよね。

では、現実はどうなるか。

 

 


収入が少ない職場で労災事故が起こると、給付も少なくなる。


Aで怪我をしたり、
Aに行く途中で通勤中に怪我をしたら、
月収15万円で労災の給付額が決まってしまうのです。

この人の収入は合計では月65万円ですから、
この水準で労災の給付を決めないといけないはずですが、
それができないのが現状です。

 

ゆえに、
Aで怪我をしてしまうと、
月収15万円の80%、
12万円が労災給付の額となってしまうんですね。

 

「え〜! 月収65万円なのに、
労災給付は12万円になっちゃうの?」
と理不尽な感じですけれども、
そういう仕組みなのですね。


また、

保険料を二重に払っている(AとB、両方から労災保険料は支払われています)のに、
給付する段階になると片方の会社での収入しか考慮されない。

 

ゆえに、

「副業や兼業で働く複数就業者の労災保険給付をどうするか」
が問題になっているわけです。

 

 

 

問題を解決する方法。


まず、会社AとB、
どちらからも労災保険の保険料は支払われています。

保険料率が0.3%だとすれば、

会社Aでは15万円に対して保険料は450円。
会社Bでは、50万円に対して1,500円。


どちらの会社でも労災保険料は支払われており、
月収65万円を基準にして労災の給付を受けられる条件は整っています。

 

ということは、
全治1ヶ月の怪我で仕事を休めば、
収入の80%である52万円(65万円の80%)が
労災保険から給付されても良いのではないかと思えますよね。


収入が多い就業先で怪我や病気になれば、労災保険の給付額は多くなります。
収入が少ない就業先だと、労災保険の給付額も少なくなる。

どちら側の会社で労災保険が使われるかで
給付額が変わってしまう。

 

ここを何とかできないかが
最大の考えどころです。

 

 

 

マイナンバーで収入を名寄せする。


会社AとBでの収入をマイナンバーを使って合算すると
収入総額が分かります。

その総額を基準に労災の給付額を決めると、
先程のように収入に比して労災給付が少なくなりません。

 

労働保険や社会保険では、
手続書類にマイナンバーを含めるようになりましたから、
賃金情報を名寄せすることは可能です。


名寄せとなると、
副業や兼業をしていると就業先にバレてしまう
という心配がありますが、

事業所単位では名寄せ情報が分からないようにして、
労災保険の手続きを処理する労働基準監督署と
本人が分かるように限定すれば良いのではないでしょうか。

 


労災保険では、労働者側には保険料がありません。
また、保険料も社会保険に比べて安い。

さらに、

労災保険が適用されている事業所ならば全員が労災に加入しており、
社会保険のように加入条件がありません。


マイナンバーを使って、
複数の事業所での賃金を合算し、
その賃金を基準に労災から給付する。

解決法としてはこの方法が妥当なところだろうと思います。

 

 


社会保険でも同じ問題がある。


2つの会社で働いていると、
社会保険に加入するかどうかで
労災保険と同じ問題が起こります。

ただ、

社会保険には個々に加入条件がありますが、
労災保険は、事業所に労災保険が適用されていると、
全員が加入するという点が違います。

保険料も、
社会保険だと本人と会社で半分づつですけれども、
労災保険は本人が保険料を払いません。


社会保険だと、
異なる会社間での調整ができず、
収入を名寄せするだけでは問題を解決できません。

 

しかし、

労災保険ならば、
保険料は安いですし、
財政状況も黒字で安定しています。

また、

あっちの会社では加入するけれども、
こちらでは加入しないなどと考える必要はありません。

 

2つの会社で働いていれば、保険料はそれぞれで回収できますし、
3つの会社でも、さらに4つの会社で働いていても、
保険料は全て回収可能です。

 

給付のための保険料は集められているのですから、
それぞれの事業所での収入を合算して、
労災保険の給付額を決めても支障は無いはずです。

 

 

労働保険の年度更新をカンタンにするには?

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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