あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

退職するときに有給休暇を使い切る

使い切り

 


退職するとなると、

仕事の引き継ぎ、
退職届への記入、
持ち物の整理など、

色々とやることがありますが、

「残った有給休暇を退職までに使っておきたい」


そう思う方もいらっしゃるはず。

 


有給休暇を使えるのは退職日まで。

退職すると決めて、

その時点で、
仮に20日の有給休暇が残っていたとしましょう。

20日分、1日の給与を1万円だとすれば、
20万円相当ですからね、

少なくは無い金額です。


退職した後は、もう有給休暇を使えませんから、
退職日までに使えるようにスケジュールを決めます。


ここで、
もし退職日まで残り20日ちょっとだとしたら、
どうなるでしょうか。


退職日まで、あと23日。
残っている有給休暇は20日。

有給休暇を全部使ってしまうとなれば、
出勤できるのは3日だけになります。

 

 

時季変更権を行使できるのかどうか。

もし、退職日まで残り23日で、
20日分の有給休暇を使うとなると、

時季変更するとしても、
変更できる余地があるのは3日だけです。

 

出勤日が3日残っているとして、
時季変更権を行使するとすれば、
その3日の出勤日、いずれかを対象にしないといけない。

スケジュールがカツカツで、
他の日に変更する余地がほとんどありませんので、
時季変更権を行使するのは難しいでしょう。


ちなみに、
時季変更権を行使できるのは退職日まで

退職日から後の日に休暇を時季変更する
ことはできないんです。



有給休暇の残日数を考えて、
退職日までどれぐらいの時間的な余裕が必要か。

これは本人が考えておかないといけませんね。

 

 

あと付け加えると、

時季変更権を行使するときは、
変更後の休暇日を指定する必要があります


例えば、

6月7日に有給休暇を取る予定だったところ、

使用者が時季変更権を行使するとなれば、

具体的にどの日に変更するのかを決めます。

6月7日を6月18日にするというように、
変更後の日にちを時季変更権を行使した段階で
決めておきます。

時季”変更”権ですからね。
有給休暇を取り消す権利ではありません。

 

 

公休日が途中に入っていたら?

残った有給休暇を一気に使うとなれば、
公休日との兼ね合いが問題となります。

公休日というのは、法定休日のことです。

毎週、少なくとも1日は休日が必要で、
これは労働基準法35条(以下、35条)でも決められています。


毎週1日が休日だとすれば、

退職日まで23日もあれば、
3日ほど休日が入ります。

となると、この3日の休日をどうしたらいいのか。

 

「休日は休日として取って、
有給休暇はそれとは別扱いにする」
のか、

それとも、

「休日も有給休暇にしてしまう」
のか。


ここは判断が分かれるところですよね。


休日を潰して有給休暇を入れてしまっていいのか。

35条の休日は法定休日だから、有給休暇とは別扱いにしておくのか。

この点については、
下記のページで詳しく書いていますので、
そちらを御覧ください。

公休(法定休日)を入れずに有給休暇を使える?


35条の休日は別枠にしておいて、
その休日以外の日に有給休暇を入れるのが
無難な処理でしょうね。

 

 

有給休暇の申請書を作る。

有給休暇に関する部分は、
働く人からの関心が高いため、
何かとトラブルが起こりがちです。

そのため、申請を書面で残しておきます。


書面といっても、
契約書のように色々と書く必要はなく、

  1. 申請日
  2. 名前
  3. 有給休暇を取得する日

主に必要な項目は
これぐらいです。

書く内容が少ないですから、
小さい申請用紙で足ります。


こういう書類じゃないとダメという
フォーマットはありません。

書面で記録を残せるならば、
方法は色々とあります。


ノートを1冊作って、
『有給休暇管理台帳』にするのもいいですね。

有給休暇の取得に関する記録を1冊にまとめておいて
名前、申請内容、取得済み、日付などを書いておく。

 

 

退職日まで、雇用保険や社会保険に加入する。

有給休暇を使っている間は、
「在職中」になりますから、
雇用保険や社会保険で被保険者資格を喪失できません。

つまり、保険から抜けることはできないという意味です。

もちろん、有給休暇を取っている間も
社会保険料や雇用保険料がかかります。


例えば、

丸々1ヶ月、有給休暇を取った場合、

1ヶ月間、出勤して仕事をしていませんけれども、
雇用保険料や社会保険料は給与から天引きされます。

 

 

有給休暇の残日数は聞きにくい

「あの~、有給休暇を使いたいんですけど、何日ありますか?」
「有給休暇ってあるんですか?」

こんな質問は、とても気が引けるものですよね(真っ当な質問なのですが)。


大きな会社だと、総務部や人事部が独立して設置されており、
有給休暇のことでも気軽に聞けるはずです。

社員同士ですから、 気兼ねがありません。


しかし、小さな会社、特に10人未満の会社だと、社長が事務を
統括していることも多く、有給休暇についても社長に直接聞かないと
いけませんよね。

このような会社だと、「有給休暇?何言ってんのあんた」
なんて社長から言われたらどうしましょう、とビクビクしないといけません。


こんなことは十分あり得る状況ですよね。

小さな会社で、有給休暇の残日数を告知していないとなると、
有給休暇の取得率は限りなくゼロに近い状態になるかと思えます。

また、残日数を告知 しないことが、ある種の「有給休暇の取得妨害」に
なっていることもあるのです。

何日あるのかを知らせないと、社員さんは有給休暇を使えません。

お店で値段の付いていない商品を買えない(買えるんだろうけど躊躇する)の
と同じですね。


私の経験だと、有給休暇なんて無い、という雰囲気の会社もありましたね。
(余談ですが、週1日勤務のパートタイマー社員さんでも有給休暇はあるんです。有給休暇の比例付与と言います)

 

 

給与明細に手書きでもOK。

告知といっても、何も口頭で、かつ、各社員個別にしていく必要はありません。

具体的には、給与明細の端っこの所に、有給休暇の残日数を書いておくだけでも、
有給休暇の取得は進みます。

これだけでも、社員さんにとってはありがたいですね。


 

 

 

 

知らないと損する給与明細 (小学館新書)

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退職日をいつにするか。

月末に退職する。
給与の締め日まで在籍する。

退職する日を決める方法は
いくつかあるかと思います。


月末の1日前を退職日にすると、
社会保険は退職月まで加入となります。

一方、

月末に退職すると、
退職月の翌月まで社会保険に加入します。

 

「月末で辞めているのに、
翌月まで社会保険に入っているの?」
と思われるでしょうが、

社会保険から外れるのは、
「退職日の翌日」なんです。

 

だから、

月末に退職すると、
社会保険から抜けるのは翌月の1日になるというわけ。

1日だけなのに、社会保険料は1ヶ月分ですからね。

 


社会保険料を払えば、
年金の受取額は増えますけれども、

健康保険は退職日までしか使えません。

月末までは保険証を使えます。

 

しかし、翌月は、もう保険証を使えなくなっているんですね。

社会保険料を支払っているのに。


そのため、

月末に退職するのではなく、

「月末の1日前に退職する」ように
オススメするわけです。


ちなみに、

月の途中、
15日や25日に退職するならば、
社会保険料について気にすることはありません。

 

 

セコい嫌がらせをすると、損をする。


「退職するならば有給休暇は使えないぞ」と、
退職する人への嫌がらせを目的としているならば、
ヤメておくべきです。

そういうセコいことをしても、
ゴタゴタとモメて時間を浪費するだけで終わります。


有給休暇はトラブルになりやすいところで、
働く人の関心が高いため、
ヘンな対応をするのはダメ。


業務の引き継ぎだの何だのと
理屈をつける人もいるでしょうが、

1ヶ月もあれば引き継ぎはできるでしょうし、
それが終わって、有給休暇を全部使い切り、
その後に退職日が来るように設定すれば、
円満退職できます。


余裕を持って退職日を決めて、
仕事の引き継ぎを済ませ、
そこまでに有給休暇を全部使い切るように
スケジュールを入れていく。

これならば問題は起こりません。

 

有給休暇が残っていたとしても、
最大でも40日分です。

単年度で、付与日数は最大20日。

時効が2年であるため、翌年まで繰り越せますから、
20日 + 20日 = 40日。

普段から有給休暇を使っていれば、
減っているはずです。


有給休暇を使う、使わせないと、スッタモンダして、
辞めるときに、険悪な関係になって辞めるのは
何だか寂しい感じ。

 


割増賃金(残業代)の支払いでも、
労働時間の計算でも、
有給休暇でも、

セコイことをすると損をするのが労務管理です。


一万円を捨てて千円を拾うようなことをせず、
千円を捨てて一万円を拾うような判断をするのが賢明です。

 

 

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