労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

好きなだけ労働時間を盛り放題。残業代も取り放題。

 

 

関西大学に是正勧告=教員残業で2年連続-労基署

 学校法人関西大学(大阪府吹田市)が設置した小中高校で、労使協定を結ばずに教員に残業をさせたなどとして、同法人が茨木労働基準監督署から2年連続で是正勧告を受けていたことが3日、分かった。1年間の残業時間が2000時間を超える教員もいたという。
 同法人によると、是正勧告を受けたのは昨年4月と今年3月。残業時間などに関する労使間の協定を結ばずに1日8時間の上限を超えて働かせたほか、残業代の未払いなどを指摘された。
 教員には残業代の代わりに一定額の手当を支払っていたが、出退勤の時間は把握していなかった。労基署は、勤務時間の管理徹底や労使間の協定を締結するよう勧告した。
 同法人が調査したところ、2016年度は教員61人のうち52人が残業しており、最長で年間2042時間に達していた。法人側は同年度の残業代計約3400万円の支払いと協定の締結について労働組合と協議中という。


労使協定と書かれていますが、
これは「36協定」のことです。


36(サブロク)協定とは、

法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合に必要な労使協定です。

 
法定労働時間は、1日8時間ですが、
この時間数をオーバーしない職場ならば、

36協定を締結しなくてもいいのですけれども、

 

1日8時間勤務のフルタイムで働く人がいる職場ならば、
ちょっと時間オーバーするだけで8時間を超えます。


そのため、どこの職場でも

時間外労働に関する協定、つまり36協定を
締結しておく方が良いです。

 

 


4時間勤務を5時間勤務に延長しても、"法的には"残業じゃない。

「残業」と一口に言うと、

決まった時間を超えて働くことを意味します。


ただ、36協定で扱う時間外労働、つまり残業というのは、


1日8時間を超えた部分

もしくは、

1週40時間を超えた部分

この超過時間を"法的には"残業と言います。

 
例えば、

 

火曜日に、

10:00から14:00までの勤務シフトだったところ、
終わりの時間を15:00まで延長すると、

14:00から15:00までの1時間は
残業」です。

確かに、残業です。

間違いなく、残業です。


その点は間違いないのですが、
36協定で対象となる残業ではないんですね。


上記の例えでは、

1日8時間を超えておらず、
15時まで仕事をしても、
勤務時間は5時間です。

 

それゆえ、

36協定の効果が及ぶ残業ではなく
割増賃金も出ない時間というわけです。


もちろん、通常の賃金は出ます。

仮に、時間給1,200円ならば、
14時から15時までの仕事に1,200円の給与は付きます。

 

ただし、

「割増賃金は付かない残業」

という扱いになるんですね。

 

 


36協定を締結し忘れる違反は多い。

厚生労働省では、法令違反した事例を公表しており、
その中にも時間外労働に関する協定をしていない
企業が出てきます。


労働基準関係法令違反に係る公表事案(厚生労働省)

 

  1. 36協定を締結していない。
  2. 36協定を締結しているが、協定で決めた残業時間の上限を超えている。

公表事案の一覧を見ると、この2つはいくつも出てきます。

 


1日あたり何時間まで時間外労働を可能にするか。
1ヶ月あたり何時間まで時間外労働を可能にするか。

これらを決めるのが36協定です。

 

つまり、「残業できる上限時間を決めている」のが、この協定なんですね。

 

 

「残業代、つまり割増賃金をチャンと払っていれば文句ないだろう?」

と考える方もいらっしゃるでしょう。

 


しかし、

法定労働時間を超えて働いてもらうには、


まず、36協定を締結して、書面を労働基準監督署に出す

その後、協定で決めた残業時間の上限を超えないように勤務シフトを組む。

法定労働時間を超えた残業が発生したら、それに対して割増賃金を支払う


こういう順序が必要です。


「お金さえ払えば、ナンボでも残業してエエやろ」

という荒っぽい考え方ではダメなんです。

 

 

 

年間2,042時間も残業できるの?

上の事例では、

年間2,042時間の残業が発生していたとありますが、

『教員には残業代の代わりに一定額の手当を支払っていたが、
出退勤の時間は把握していなかった』

とも書かれていますので、

おそらく片っ端から労働時間に計上されて、
その時間数になったのではないかと想像します。


残業時間だけで年間2,042時間ですから、

これを1ヶ月あたりに換算すると、
月に170時間も残業していた計算になります。

 

この時間に、残業以外の基本部分の労働時間も入れると、

月に20日勤務すると仮定し、

1日8時間勤務ならば、

月に160時間


通常の労働時間が月に160時間あり、
そこに170時間の残業が上乗せされて、

1ヶ月の労働時間は330時間になります。

 

これを1日あたりに換算すると、
1日16時間30分の労働です。

 

 

 


時間管理していないから、やりたい放題。

いくらなんでも、
この時間が全て労働時間なのかどうか
疑わしい感じ。


1日24時間のうち、16時間30分が仕事に使われるとすると、
仕事以外の時間は7時間30分しかありません。

7時間30分で、移動時間、日常生活などを過ごすというのは、
何だか無理があるんじゃないかと。


『教員には残業代の代わりに一定額の手当を支払っていたが、
出退勤の時間は把握していなかった』

という部分が学校側の手落ちで、

 

「アナタの好きなだけ労働時間を盛ってもいいですよ」
と言っているに等しいんですね。

 

白紙の小切手を渡すようなもんです。


その結果、年間の残業時間が2,042時間なんてことになるのでしょう。


適当に労務管理した結果がコレですからね。

怖いもんです。

 

 

空いてるスペースがあれば埋めたくなる。余計な時間があると無駄使いしたくなるものだから、労働時間の分だけ仕事は膨張する。

突然ですが、タンスの中にモノを収納する余裕があります。この時、あなたならば何を考えるでしょうか。

「あっ! まだ入るわ。新しい服を買っても大丈夫ね」と思うでしょうか。
「いや、このタンスはこれぐらいが適度な収納状態だ」と思うでしょうか。

おそらく、多くの人は、前者のように思うのではないでしょうか。


人は、余裕があると、その余裕を何かに使いたくなる。そういう性格なのかもしれません。


収納以外にも、他に例があります。例えば、ノートを書くとき、ほとんどの人は左上から右下に向かって書いていくはず。左上からズラズラっと書いていって、隙間を空けると勿体無いので、なるべく余白が生じないように詰めて書く。そんなノートのとり方をしていた人、もしくは今している人、結構いるのではないでしょうか。

こんなことを言っている私も、学生の頃は、ノートを使うとき、左上から書いていって、あまりスペースは作らないタチでした。

余白を作りながらノートをとると、ページを多く消費するので、ノートを買う頻度が高くなります。だから、なるべく詰めてノートに文字を書く。

このようにノートを使うのは当たり前と思っていましたし、今でもこんな風に使っている人はたくさんいるはずです。

今では、ネット環境、通信機器、飛行機や新幹線など、時間を短縮する手段が充実しています。

以前ならば、相当な時間が必要だった作業も、今では一瞬で終わることができたりします。

ドンドン便利になって、本来ならばもっと短時間で仕事が終わるはずだけれども、働く時間は変わらない。むしろ増えたりする。不思議ですよね。

便利になれば、人が働く時間は減るはずですが、実際はそうなっていない。

便利になると、使える時間が増える。だから、やることをもっと予定に詰め込んじゃえ。そんな風に人は行動しているのかもしれません。

プラスティックの衣装ケースを買ってくると、満タンになるまで服を詰め込む。

タンスがあると、入るだけ入れる。空いている場所があると、「まだ服を買っても大丈夫」と思う。

下駄箱に履ききれないほどの靴をミッチリと入れ込む。

小さい冷蔵庫から大きな冷蔵庫に買い換えると、スーパーでイッパイ買い物をしてしまう。


人は余裕を見つけると、その余裕を何かに使いたくなる。そういう性なのでしょうね。


仕事でも上記と似たような状況に遭遇します。同じ仕事に取り組むとして、持ち時間が3時間だった場合と持ち時間が2時間だった場合とを比較すると、後者のほうがサクサクと仕事を終わらせる。こんなことありますよね。


仕事の内容や量を一定にして、時間だけを長短させた場合、時間の長い方は時間の分だけ仕事を引き延ばそうとするもの。一方、時間が短いと、その制約の中で、どこまで完成できるかを考えて、行動するようになる。


時間に余裕があると、その余裕の分だけ仕事が膨張する。これはノートや収納と同じです。


もし、時間に制約があれば、仕事の膨張を止めることができるはず。そのために、法定労働時間という制約があるのかもしれません。

 

 

仕事を増やすことは簡単。けれども、仕事を減らすのは難しい。

労働基準法では、労働時間は、1日8時間、1週40時間までと制約されています。この時間を超えて働くと残業代が必要になるのはご存じの方も多いはず。

仕事をしていると、「なぜ8時間に制約するのか、自由にやらせてくれ」と思うときもあるかもしれません。確かに、仕事をどれだけやるのかは、当事者が決めるべきであって、法律で制約することに納得出来ない人もいるかもしれません。

ここで、ちょっと考えてみて下さい。

仕事に制限時間がなかったらどうなるか。


法定労働時間というのは、一種の制限時間ですよね。仕事に関連する制限時間というのは、法定労働時間だけじゃなく、個々の作業や製品の納期、調理の時間、パッキングの時間など、様々あります。

もし、法定労働時間による制限時間が余計だと感じるならば、他の仕事での制限時間も余計なものでしょうか。

例えば、3分で終わるべき調理を、10分もかけていたら、料理が冷めたり、材料が傷んだりするはず。30分で終えるはずのパッキングに60分も要していたら、他の仕事に使える時間が減ってしまう。


日常業務で制限時間を重視しているのに、なぜか労働時間となると制限時間は不要だと考えてしまう。

不思議ですよね。


もし、法定労働時間が1日6時間になれば、それに合わせて仕事も変わるはずです。「1日8時間でも足りないのに、6時間なんて有り得ない」そう思う方もいらっしゃるでしょうが、本当でしょうか。

1日8時間あるとして、その8時間の利用密度は均一でしょうか。人間が一度に集中できる時間は45分だと言われているので、8時間ぶっ通しで仕事の密度を維持するのは、まず無理です。

もちろん、仕事には気分転換が必要ですし、休憩も必要です。しかし、それを除いても、1日8時間という枠は大きいのではないかと思います。

もし、法定労働時間が1日6時間だったらどんなふうに仕事をするか。もし、法定労働時間が1日4時間だったらどんなふうに仕事をするか。そんなことを考えてみるのもいいかもしれません。


法定労働時間という制限時間がなければ、おそらく仕事の密度は今よりも低下するのではないかと思います。

人は、締め切りがなければ、動かない。人は、自由にすると、行動しない。適度にプレッシャーがかからないと、人は動かないものです。


だから、法定労働時間という制約を法律で設けて、半ば強引に制限時間を設けている。そんな風に考えることもできるでしょう。労働基準法のルールは何かと邪険に扱われる傾向があって、「そんな法律は無い方がいい」という人もいるかもしれません。

しかし、仕事に制限時間があるのは、法定労働時間で大きく時間を制約しているおかげなのかもしれません。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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