出勤する日を休みにして、
その代わりに他の休みの日を出勤日に変える。
これが振替出勤であり振替休日です。
振り替えるときは、
丸1日を出勤日、もしくは休日に変えるのが通常です。
では、
1日ではなく、
2時間だけ他の日と勤務時間を振り替えるとどうなるか。
2時間だけ振り替える?
例えば、
火曜日に、
10時から21時まで働いたとして、
休憩は途中で1時間あるとすれば、
火曜日の勤務時間は10時間です。
ここで、
火曜日の2時間分だけ、
他の日の勤務時間を減らす。
こういうことをしたらどうなるでしょうか。
つまり、
10時間のうち、2時間を他の日に回して、
火曜日は8時間勤務に。
他の日、例えば金曜日に火曜日の2時間を持ってきて、
当日である金曜日は6時間勤務にする。
その結果、
火曜日の勤務時間は8時間。
(10時間から2時間減る)
金曜日の勤務時間は8時間。
(火曜日の2時間が回ってきたので、残りの6時間だけ勤務)
このように時間配分を変えることで、
火曜日の残業を無かったことにする。
そんなことが可能なのかどうか。
割増賃金の支払いを免れる手段に使われる。
火曜日が10時間勤務のままだと、
2時間分は残業になり、
割増賃金が必要です。
しかし、先ほどのように、
火曜日の勤務2時間分を金曜日に回すと、
火曜日は8時間勤務になります。
人によっては、
「これで割増賃金は要らないだろう」
と思えてしまうでしょうね。
火曜日に2時間、余分に勤務したものを、他の曜日に回す。
その代わりに、金曜日は2時間だけ勤務時間を短縮する。
これで残業を無かったことに。
数字のやりくりとしては、それで良いのですけれども、
火曜日の残業は、その日の段階で確定するものですから、
他の日の勤務時間を減らして相殺することはできないのです。
「勤務時間の一部分だけ振り替える」
これは便利なのですが、
使い方によっては、
割増賃金の支払いを免れる手段として悪用されてしまいます。
もちろん、どんな時でもダメと言うほどの手法ではなく、
割増賃金の支払いを免れない範囲ならば、
今回のような振り替えも可能です。
例えば、
大雪が降ってお客さんが少ないから、
お店の閉店時間を2時間早めたい。
そのために、従業員の終業時間を2時間早めて、
その代わりに他の日の勤務時間を2時間延長する。
こういう振り替えはOKです。
しかし、すでに1日8時間を超えて残業が確定しているのに、
他の日に勤務時間を振り分けて、
割増賃金の支払いを免れる結果になれば、
それは労働基準法37条(割増賃金の支払い)違反になります。
道具も使い方次第で、
良い効果をもたらす場合があれば、
良くない効果をもたらす場合もあります。
今日は1時間だけ長く勤務して、その代わりに、明日は1時間だけ短く勤務する。状況によって、このような振替勤務を実施する場面がありますよね。
例えば、今日9時間勤務して、明日は7時間勤務するという場面です。
ただ、今日の1時間分を明日の1時間減と相殺することで、両日とも8時間勤務と考えることはできるのかというと、それはできないのです。
今日の1時間を明日に回すことで8時間勤務と扱い、明日は前日の1時間が加わるので実質は8時間勤務になるということですよね。
こうすれば、今日の時間外勤務(8時間を超えた勤務)は無しにできそうとも思えます。
1日8時間(法定労働時間)というのは、「その日ごとに判断する」ものです(変形労働時間制度を適用している場合を除く)。
それゆえ、今日、9時間勤務したとするならば、1時間は時間外労働ですから、1時間分の割増賃金が必要です。
「明日は7時間勤務にするから、今日の1時間の時間外勤務と相殺しよう」というわけにはいきません。1日毎に労働時間を精算し、時間外労働が発生したかどうかを判定しますから、翌日の勤務時間を短くして帳消しにはなりません。
ただし、「今日の時間外勤務である1時間」を「明日の1時間減」と振り替えること事体はもちろん可能です。
ですが、9時間勤務した日の割増賃金は支給します(1時間分を振替えたとしても手当は必要です)。
「2日間を通算して1日あたり8時間だから、時間外手当は不要だよね」とはなりません。
1時間分の時間外手当がキチンと払われているならば、「今日は9時間勤務だから、明日は7時間勤務にします」として取り扱うのはOKです。
割増賃金の支給を免れようとするために、時間単位の振替勤務を利用するのがダメなだけであって、時間単位の振替勤務そのものを否定するものではありません。