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36協定で決める残業の上限時間は何時間がいい?

残業上限

 

 

残業できる時間には限度がある

国循の残業協定、過労死ラインの3倍以上に

大阪府吹田市の国立循環器病研究センター(国循)が、医師や看護職員の時間外労働を「月300時間」まで可能とする労使協定(36協定)を締結していたことがわかった。

 過労死ラインの目安とされる「月80時間」の3倍以上にあたり、国循は今後、協定内容を見直す方針。

 過労死問題に取り組む松丸正弁護士(大阪弁護士会)が、府内の主要病院が労働基準監督署に届け出た36協定について、国に開示請求して判明した。府内の約10の主要病院では、時間外労働の上限を100時間前後としている病院が多かったという。

 国循の36協定は、非常勤を含む勤務医や一部の看護師、研究職らについて、緊急時の手術の対応など特別の事情がある場合、時間外労働を「月300時間(年6回まで)、年間2070時間」まで延長できる内容。国循が独立行政法人となった2010年以降、同内容の協定を労使間で毎年更新していた。現在、対象は約1000人という。

 
労使協定は法律で内容を決めるものではなく、使用者と労働者の間でその内容を決められるため、36協定の内容は事業所ごとに違いがあります。

1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて残業するには36協定を締結しておく必要があり、この協定で1日あたり何時間まで残業ができるか。さらに、1ヶ月あたり何時間まで残業ができるかを書面で決めます。

ここで設定する時間が、最大で月300時間になっていたり、月100時間になっていたりするわけですが、相場がないため好き放題に設定できてしまうのが現状です。

では、36協定で決める残業の上限時間は何時間にするのがいいのか。ここが悩みどころです。

そこで参考になるのが、厚生労働省告示である『時間外労働の限度に関する基準』です。


告示では、1ヶ月あたりの時間外労働は45時間まで。1週間あたりでは15時間。1年間だと360時間です。これを目安にして36協定を締結するのが妥当なところです。

今後、月45時間、年間で360時間のラインを設定し、長時間労働を法的に制限する予定ですから、この限度時間の告示を目安に36協定を締結することをオススメします。

ただ、医療機関における労務管理には特殊な面があり、なかなか労働時間を削減できない事情もあります。

医師でなければできない仕事。看護師でなければできない仕事。それらを分けて処理する。他にも、紹介状なしで大病院に行くと初診料が高くなるというのも、外来対応の負担を減らすためです。健康保険が使いやすいというのも病院の負担増に繋がっている可能性もありますね。

 

 

週40時間を超えたけど、残業代は無い?

1日8時間を超えて働いた場合。もしくは、1週40時間を超えて働くと、残業代と言う名の割増賃金が必要です。例えば、1日に9時間働けば、1時間が残業になり、この1時間に対して割増賃金を支払う。また、1週間で勤務時間が43時間になったとすれば、3時間分が残業ですので、これに対して残業代が必要となるわけです。

ここまではご存じの方も多いはずです。

ところが、1週間で40時間を超えているけれども、残業とはならないようなケースもあります。

具体的に示してみましょう。


月曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
火曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
水曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
木曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
金曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
土曜日:7時間勤務(21:00 - 翌日4:00)
日曜日:休み。

()は実際の勤務時間帯。
※説明を簡単にするため各日の休憩時間を省略

7時間勤務で月曜日から土曜日まで続いていますので、1日8時間はオーバーしていませんので、この点では残業はありませんね。一方、1週間単位では、合計で42時間ですので、40時間を2時間オーバーしています。

ここまで読むと、「じゃあ、2時間分が残業になるんだな」と分かります。

さらに、土曜日は深夜時間帯(22時から翌日5時まで)が含まれています。22時から4時までの6時間が深夜時間帯ですので、この時間に対しては割増賃金の残業代とは別に深夜労働に対する割増賃金が必要です。

ここまでをまとめると、2時間が残業。6時間が深夜勤務。という形になります。さらに、日曜日が法定休日だとすると、0時から4時までの休日割増賃金も必要です。



ところで、上記の例では月曜日が1週間の始まりであるかのように書かれています。つまり、1週間の始まりは月曜日だと知らないうちに前提とされていたわけです。

確かに、月曜日から日曜日までを1週間と区切っていれば、先ほど書いた通りです。では、日曜日を1週間の始まりとした場合はどうなるか。つまり、日曜日から土曜日までを1週間として区切るのです。

日曜日:休み。
月曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
火曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
水曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
木曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
金曜日:7時間勤務(10:00 - 17:00)
土曜日:7時間勤務(21:00 - 翌日4:00)

毎週日曜日は休みだとして、先ほどの曜日表を日曜日だけを前に持ってきました。これで日曜日が1週間の起算日になりますよね。

この場合、月曜日から金曜日までは先ほどと同じです。金曜日までは合計35時間の勤務時間になります。

さて、問題は土曜日の処理です。

土曜日は21時から翌日である日曜日の4時までが勤務時間となっています。1週間の起算日は日曜日ですので、日曜日の勤務時間は翌週に繰り越されます。つまり、今週の勤務時間には含めないというわけです。

となると、21時から0時までの3時間だけが今週の勤務時間に計上されます。

月曜日から金曜日までで35時間。土曜日の3時間。これを合わせると、1週間で38時間です。

これだと、1日8時間。1週40時間も超えていませんので、法定時間外労働に対する割増賃金はなくなります。ただし、22時から0時までの2時間は深夜勤務ですので、これに対する割増賃金は必要です。

さらに、日曜日が法定休日になっていると考えれば、休日割増賃金(35%)が必要ですし、0時から4時までは深夜勤務ですので、深夜勤務に対する割増賃金(25%)もありますから、合計で60%増の給与になります。


最初に示した例だと、1週間で42時間。後から示した例だと、1週間で38時間。勤務時間は変えていませんが、1週間の起算日を変えると勤務時間の計上範囲も変わるのですね。


1週間の起算日を何曜日にするかは会社ごとに設定できます。カレンダーも日曜始まりと月曜始まりのものがありますよね。ちなみに、私は月曜始まりが好みです。日曜日で締めて、月曜日から始まる。そういう感覚があります。

どこが起算日かによって、残業があったかどうか、割増賃金が必要かどうかが変わる。「労務管理ってすんごいメンドクサイ仕事」と思ってしまうところですが、そういうもんなんです。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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