労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

取締役だけれども管理監督者にならない人。

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https://mainichi.jp/articles/20170702/k00/00m/040/143000c

<類塾>講師を「名ばかり取締役」 残業代未払い提訴も

 

 大阪、奈良両府県で進学塾65校を運営する「類(るい)設計室」(大阪市淀川区)が講師らスタッフの大半を「取締役」に就任させ、残業代を払わなかったとして訴訟が相次いでいる。登記簿上の取締役は6月現在で約400人。複数の訴訟で代理人を務める渡辺輝人弁護士(京都弁護士会)は「取締役とは名ばかりで、実態は従業員。会社は労働法規を守るべきだ」と訴えている。

(中略)

 同社によると、講師などを担当するスタッフの大半は株主と取締役を兼ね、全員が経営に参加しているとの位置づけだ。報酬は定額制で、残業代や休日手当はなかった。しかし、この数年で退職者から残業代の請求が急増。09年以降の8年間で約80人が請求し、大半は一部を支払って解決したが、複数の元講師らが大阪、京都の両地裁に提訴し、少なくとも6件が係争中だ。

 同社はこの件を含む複数の訴訟で、講師らとは労働契約を結んでおらず、労働基準法上の労働者ではないと反論。講師らは取締役への就任を承諾したと主張している。

 しかし、元スタッフが起こした訴訟で、京都地裁は15年、出退勤の時間を管理されていることなどから、「会社の指揮監督に従う労働者」と認定。同社にほぼ請求通り約1200万円の支払いを命じた。判決は昨年7月に最高裁で確定し、他の訴訟でも残業代などの支払いを命じる判決が相次いだ。

 

 

なぜ名ばかり取締役というポジションを作ったかというと、取締役になると管理監督者になると考え、法定時間外労働に対する割増賃金が不要になるという扱いにするためです。

労働基準法41条には、管理監督者は時間による規制が除外されていると書かれています。確かに、管理監督者に該当すれば労働時間の制限を受けませんが、その人が管理監督者に該当するかどうかは役職名や肩書だけでは判断できません。

取締役、部長、店長など、これらはいかにも管理職、管理監督者というイメージですが、現実がイメージ通りになるかどうかは別です。

管理監督者というと、社長と同じぐらいの権限がある人で、代表権こそ無いものの、経営者に準ずるようなポジションにいる人を意味します。

  1. 重要な職務を担当しているか。
  2. 責任と権限があるか。
  3. 職務態様は一般社員とは区別されているか。
  4. 管理監督者としてふさわしい報酬水準かどうか。

 

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/kanri.html
管理監督者の範囲の適正化 |厚生労働省



時間に制約されてはできないようなもの。その立場にふさわしい仕事をしているのかどうか。取締役ならば、取締役らしい仕事、経営方針を立案したり、資金繰りについて検討したり、事業を拡大する方法を模索したりするはずです。普段から現場で講師をしている人がこういう職務を担当しているかというと、それはあまりないと思います。

経営者というと、営業方針や人事に関することを決めますが、こういう部分に権限があったのかどうか。さらに、報酬の水準が取締役という立場にふさわしいものだったのかどうか。取締役だと年間報酬を株主総会で決めて、それを毎月分割で支払うようなスタイルが一般的ですけれども、給与のようにチョコチョコと少ない額を支払っている程度ならば該当しないでしょう。



使用者とほぼ同じ立場で、働く時間を自分で管理し、休みの日もコントロールできる。さらに、仕事の進め方にも裁量があり、人材採用も自分次第。塾講師がこのような立場にあったかというと、これはさすがに無理があるでしょう。

一般社員から取締役に切り替える場合も、一度会社を退社して、その後に改めて取締役に就任する会社もあるぐらいで、そういう会社では一般社員(管理監督者となる)取締役を区別しているのですね。

通常の労働者として扱うべき人を無理矢理に管理監督者に仕立て上げるとこういうトラブルが起こります。会社が独自に「あなたは管理監督者です」と決めつけることはできません。

経営者と同視できる立場の人に限って管理監督者として扱うのが正しい対応です。

 

日経新聞朝刊(2008年1月29日)3面にて、「マクドナルドの店長は管理職に該当しない」との記事がありました。残業代の支払いで、裁判上、 争っていたそうで、不払いの残業代がおよそ750万円(だったと記憶しています)。今回の判例で、このお金は支払われることになります(マクドナルド側が 控訴すれば別ですが)。

ここで気をつけるべきは、「店長=管理職」と考えてはいけないということです。マクドナルドの店長であっても、管理職と解釈される場合もあるということです。

管理監督者への残業代不払いというのは、よくあるケースです。例えば、「課長」、「部長」と呼ばれていても、管理監督者に該当したり、しなかったりするの です。「管理監督者」というのは、働く形態や労働時間の自由度、賃金体系によって、「実態的に」判断されます。ですので、課長だから、部長だから、専務だ から、常務だからという形式的な肩書きによって判断はできません。因みに、社長は、管理監督者です(この場合は明白ですので議論の余地はありません)。


「管理監督者」の判断基準は、

  1. 経営方針の決定に参画しまたは労務管理上の指揮権限を有しているか(業務の内容)。
  2. 出退勤について厳格な規制を受けず自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にある か否か(時間管理の自由度)。
  3. 職務の重要性に見合う十分な役付手当等が支給されているか否か、賞与の内容が一般社員と比べて優遇されているか(賃金体系の違い)。

以上3点です。

アルバイトの採用をしたり、勤務シフトを組んだりする程度では、労務管理上の指揮権限を有しているとはいえません。ちょろっと役職手当だけ付けて、管理監督者と解するのもダメです。

注意すべきは、「課長以上は管理監督者」というように杓子定規に解釈しないことです。

「形式判断」ではなく「実質判断」です。

付け加えると、たとえ管理監督者に該当しても、深夜割増賃金は払わなければいけません(深夜割り増し規定に適用除外はありませんので)。あと、管理監督者で あっても、有給休暇と産前産後の休暇も与えなければいけません。さらに、年俸制であっても、報酬を月額換算した上で、時間外手当や深夜割り増し賃金を払わ なければいけません。

山口正博 社会保険労務士事務所
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