http://www.news-postseven.com/archives/20170209_491008.html
ジャパネット創業者「残業に国が一律規制かけるのは拙速」
経営側の人間は、「好きなことを好きなだけさせてくれ。仕事もやりたいだけやらせてくれ。全員が同じ規制に適応するのは無理がある」こういう類の意見を出すのが普通です。
確かに、行っていることはマトモですし、間違いもありませんので、私も賛同するところです。
一方、労働者側の人間は、「法律で決まった最低限のルールぐらいは守ってくれ。仕事が好きかどうかは関係ない。過大な規制ではないのだから、それぐらいは遵守できるだろう」という感じの意見を出すでしょうね。
こちらも納得できる意見です。労働基準法を始めとする労務管理への規制は、最低限レベルのものですから、無茶な要求をするものではないですし、それぐらいは守れるだろうと。
経営者と社員、両者はお互いに価値観が違うし、見ている景色も違います。
経営者だと、やったらやった分だけ評価されますから、仕事に対しては「時間なんか気にせずにガンガン行こうぜ」というノリになりやすい。
一方、社員の立場だと、収入も地位もほぼ固定ですから、やったらやった分だけというわけにはいかない。成果が報酬に反映されにくいので、程々に働いて、程よく休みたい。そういう価値観になりがちです。
経営者と従業員は、例えるならば鳥と魚ぐらい違います。どちらが鳥で、どちらが魚でもいいのですが、色々な面でそれぐらいの距離感があります。
経営者に残業規制についてコメントを求めれば、鳥の意見が出てきます。しかし、その意見は、魚には理解できないし、受け入れられない。
もちろん、従業員から取締役に立場が変われば、魚も鳥の気持ちが分かるようになるでしょうが、そういう人は多くない。
経営者が一律の残業規制に反対するのは当たり前で、同じ立場ならば私でもそう考えます。
会社というのは、他人同士が寄り集まって仕事をしているので、魚だけで仕事をしているわけではないし、鳥だけでもない。
同じ環境で生態系の違う人間が共生している状態なのです。
それゆえ、労働者は経営者と同じ気持ちにはなれないし、経営者も労働者と同じ気持ちにはなれない。
「昔は、、、、こうだった」と言う人もいますが、昔は昔、今は今。時代は変わるのです。
労務管理の世界では、もう潮の流れが変わりました。一部の企業がトラブルを起こしたことがきっかけになったのは不幸ですが、これだけ労務管理に対する社会の評価が変わったのは、江戸幕府が無くなったぐらいのインパクトです。
10年前、2005年ごろか、その当時はまだルーズな労務管理が許されていた雰囲気があって、マジメに労務管理しようとすれば、「あまりクソ真面目に考えるなよ」と扱われる頃でした。
遊びのように仕事をして、仕事のように遊ぶ。これは私も好きです。仕事と遊びの境界線がなくなっていく。そういう仕事をすべきだし、そうやって遊ぶべきだと思います。
しかし、自分以外の他人と一緒に仕事をするようになったら、必ずしも自分と同じ価値観を持った人たちだけが集まるわけではないと知るでしょう。他人がたくさん集まった社会に法律があるのと同様に、他人が入ってきたら会社にもルールが必要なのです。