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プレミアムフライデーはノー残業デーと同じ運命になる。

時間保存の法則


金曜日の退勤時間を15時にすることで、週末に使える時間を増やそうという目的を達成するために「プレミアムフライデー」を設けるとのこと。

金曜日の勤務時間を減らすという発想は良いものの、どうやって実現するのかが8月の現段階では不明。

2016年の10月に実行計画を策定して、実際に実行するとなると、翌年2017年の1月、もしくは4月からということになるでしょう。

このプレミアムフライデーについて知ったとき、「これはノー残業デーと同じ結果になるんじゃないか」と思えてしまいます。

ノー残業デーというのは、この日に限って残業を控えようという企業での自主的な取り組みのこと。水曜日に設定される傾向が多かったようですが、何曜日に設定してもOKです。

今でもノー残業デーを設けている企業はどれぐらいあるのでしょう。自主的な取り組みですので、残業してもペナルティはありません。そのため、ノー残業を守るインセンティブは無く、形だけで終わっていたところもあるのではないでしょうか。


今回のプレミアムフライデーも、ノー残業デーと同じように企業の自主性に任せていては、うまくいきません。単に金曜日は早く仕事を終えましょうというだけでは、従わなくても差し支えないですし、法律のように罰則があるわけでもありません。

しかも、金曜日だけピンポイントで労働時間を減らすとなると、これまた難易度が上がります。


労働時間を減らすには、法定労働時間を減らさないとどうにもなりません。1日8時間、1週40時間、この基準が法定労働時間ですが、この時間を基準にして所定労働時間が決まりますので、法定労働時間が減らないかぎり労働時間が減ることはありません。

なぜ1日の労働時間は8時間なのかというと、法定労働時間の上限が1日8時間だからです。法律の上限に合わせて勤務時間を決めていくので、フルタイムで働く人は1日8時間、1週間で40時間の勤務時間になるわけです。

法定労働時間を基準にして所定労働時間を決めるので、法定労働時間を減らさないと、労働時間は減らないのです。

金曜日は午後3時で終業とするならば、法定労働時間を2時間減らす必要があります。ただ、2時間だけ減らすだけだと、金曜日以外の日に労働時間を減らす可能性があり、金曜日は通常通り8時間勤務になる(空けた枠が他の曜日に回される)とも考えられます。ピンポイントで金曜日の勤務時間だけを減らすのが難しいと考えるのはこの点です。

1つの方法としては、金曜日限定で割増賃金のパーセンテージを5割に引き上げて、勤務時間を短縮するインセンティブを与えることも考えられます。

他にも、変形労働時間制を利用して、金曜日に短縮した2時間分を他の日に回すことで、トータルでの時間数を維持するのも一考です(この方法が最も現実的)。


労働時間なり残業を減らすために、最も効果的な方法は、法定労働時間を短縮することです。例えば、1日8時間を1日6時間に。1週40時間を1週30時間に。このように上限時間を引き下げれば、半ば強制的に労働時間を短縮できます。

未払い残業なり、長時間労働の抑制なり、残業削減なり、色々と何年も取り組んできましたが、企業の自主性に任せていては解決できないことは明らかです。

法定労働時間という根本部分が変わらないので、所定労働時間も変わりませんし、働く時間もそのままです。




ノー残業デーに効果はあるの?

何年前だったか、残業を減らすために、「ノー残業デー」を設定して、その日は残業をしないようにしましょうという一種のブームのようなものがありました。

ノー残業デーを検索すると、Wikipediaの「水曜日」の項目が検索結果に表示されて、ノー残業デーは水曜日に設定されることが多いようです。

水曜日は一週間の中間だから。商売では「水」というのは縁起が良くないので定休日にする。学校でも水曜日は職員会議があるので早く学校が終わる。このような理由で、水曜日というのはノー残業デーに適している日ということらしいです。

確かに、小学校や中学校でも、水曜日は授業時間が少なかった記憶があります。小学校では4時間目の授業が終わり、給食を食べて、昼休みの後に掃除をしたら、午後の授業は無しで下校する。職員会議が水曜日にあるという理由のようでしたが、「水曜日は早く帰れる」というのが学生の頃の常識のようになっていましたね。

水曜日に設定されることが多いノー残業デーですが、どれほど残業を減らす効果があるのでしょう。

10年ほど前はノー残業デーが新聞や雑誌、ニュースで登場することもありましたが、最近はめっきり聞くことも見ることもなくなりましたね。

もし、自分の会社で、ノー残業デーが設定されたら、残業は減ると思いますか。それとも、そうは思わないでしょうか。




慣れると効果を織り込むようになる。

筆者は、ノー残業デーは「5分進めた腕時計」と同じ。のようなものだと考えています。

最近はスマホの性能が向上してきて、何かあればスマホと言っていいほど万能な道具になっていて、腕時計なんかなくてもスマホで時間を確認できればそれでいい。そう思っている方も多いのではないでしょうか。

確かに、人と会っても、腕時計を付けている人は減っていて、特に10代や20代の人は腕時計を付けていない人が多いです。その傾向は若い人だけなのかというと、そうでもなくて、40歳代や50歳代の人でもケータイで時刻を確認している人が多くなっているように思います。

そのため、5分進めた腕時計についてイメージしにくい方もいらっしゃるかもしれませんね。ケータイの時刻は自動で調整されて、常に正確な時間を表示しているでしょうから、あえて時間をズラした時計を使う意味を感じにくいところ。

5分進めた腕時計というのは、例えば、現在の時刻が午前8:25だとしたら、腕時計の時刻は午前8:30を表示している状態です。わざと5分だけ時間を早めているんですね。

なぜこういうことをするのかというと、実際の時間よりも腕時計の時刻を早めておけば、常に5分前行動ができるというのがメリットのようです。

しかし、今では便利になっていて、電波時計などというお節介な時計もあって、時刻をズラして使えない腕時計もあります。電波時計は自動で時刻を調整するので、5分だけズラしておいても、いつの間にか時刻が正確に修正されて、時間をズラした効果が消えてしまいます。

腕時計の時刻を早めれば、予定よりも早い行動ができる。これは確かにそうです。

しかし、自分の腕時計の時間を自分自身で5分早めたと知っていると、次第に「あぁ、まだ5分だけ余裕があるなぁ」と思ってしまうようになり、時間をズラした効果が薄れてしまいます。

つまり、5分だけ時間を早めた効果を織り込んでしまい、予定の時間よりも早く行動できる効果を打ち消してしまう。

これと同じことがノー残業デーでも発生してしまうのではないでしょうか。

ノー残業デーを設けた当初はチャンと機能していたけれども、3ヶ月ぐらい過ぎた頃になると、「ちょっとぐらいいいじゃないか」と思うようになり、半年も経てば何もないかのように普通に残業をしている。

まさに5分進めた腕時計と同じように、効果が除々に薄れて、しまいには効果がなくなる。

言葉やスローガンだけでは人の行動は続かないものです。「水曜日はノー残業デーです」と決めるだけでは人の行動は持続しないもので、これが普通です。

残業を減らすには、仕事の中身を変える必要があります。例えば、水曜日だけは仕事の量を3割減らすとか、終業時刻の1時間前から仕事を終える準備を始めるとか。このような具体的な仕組みを伴うと、人の行動は持続するようになります。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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