選択肢は2つ。
有給休暇を取得した日には賃金を支給しますが、この賃金を計算する手段が2つあります。
1つ目は、平均賃金を利用する方法。もう1つは、実際に出勤した場合と同様に賃金を計算する方法です。
平均賃金は、労働基準法12条で定められている方法で計算する賃金です。ザックリ書くと、過去3ヶ月分の賃金を平均して算出するのが平均賃金なのです。
有給休暇を取得した日の賃金については、労働基準法39条6項で取り扱いが書かれています。
39条6項
平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。
平均賃金については先ほど書いた通りです。「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」というのは、休暇を取得した日に、仮に出勤したら支払われたはずの賃金です。
有給休暇を取得した日の給与については、2パターンの計算方法がありますので、「じゃあ、どっちにしようかな」と悩むところです。
1,平均賃金で計算する。
2,実際に出勤したと仮定して計算する。
どちらの方法も正しいのですが、選択肢が2つあると「う〜ん」となります。
正確さか。それとも簡便さか。
どちらの選択肢にも一長一短あります。
1を選択した場合、説明が必要になります。実際に出勤した場合の賃金と平均賃金は異なるでしょうから、なぜこの賃金なのかと説明しなければいけない場面に遭遇するでしょう。
また、給与計算をする人が平均賃金を計算しないといけませんので、慣れていないと時間がかかるでしょう。余談ですが、会社の事務を担当している人で、平均賃金を計算した経験がある人はどれぐらいいるのでしょうね。
次に2を選択した場合、実際に出勤した場合を想定して計算できますから、処理が簡単です。5時間出勤の日に有給休暇を取得すれば5時間で計算すればいいし、8時間出勤の日に有給休暇を取得すれば8時間で計算すればいい。簡単で助かります。
しかし、勤務時間数が多い日に有給休暇を取ると、給与が多くなるという欠点があります。フルタイム社員の場合は、勤務日にかかわらず勤務時間数がほぼ一定しているでしょうから、日ごとに勤務時間がバラつくことはあまり無いでしょう。
しかし、パートタイム社員の場合、日によって勤務時間が違うことはよくあります。月曜日は4時間勤務、火曜日は6時間、木曜日は5時間、というように日によって勤務時間数が変わります。
月曜日に有給休暇を取得すると、賃金は4時間分です。しかし、火曜日に有給休暇を取得すれば、賃金は6時間分に変わります。
「そりゃあ、都合が悪いな。じゃあ、平均賃金にするか」と思うところですが、2の方法は処理が簡単なところが利点です。確かに有給休暇を取得する日によって賃金が変わりますが、平均賃金を取り扱う手間を省けるところは捨てがたいところです。
ちなみに、私が推奨するのは、2の方法です。欠点はあるものの、労務管理は簡単であるほど良いです。平均賃金を本人に説明しなくてもいいし、事務を担当する人も平均賃金を計算する手間を省けます。
複雑にすればするほどきめ細かい労務管理ができていると錯覚しがちですから、私は労務管理をシンプルにする方法を考えるようにしています。