“退社8分後に出勤”で考える過労社会の処方箋「インターバル休息」制度 | THE PAGE(ザ・ページ)
本来、日本の法律では、1日8時間・週40時間を超える労働、つまり残業を認めていません。しかし、実際には当たり前のように残業が行われています。それは、経営者側と労働者側との間で合意さえすれば、1日8時間を超えて残業させることができるという例外ルールがあるからです。「36(さぶろく)協定」と呼ばれるものです。
例外であるはずの残業が常態化してしまっているのです。残業を織り込んだ働き方を当然のように受け入れ、違法なサービス残業でさえまかり通っているのが、日本の職場の実情です。
労働時間への規制が脆弱な日本に対し、EUの加盟国には強い規制が働いています。
「残業も含めて週48時間まで」という絶対的な労働時間の上限規制に加え、一日単位でも規制をかけています。退社してから次に出社するまで、11時間以上空けることを企業に義務付けるもので、「インターバル休息制度」または「勤務間インターバル制度」と呼ばれています。
睡眠などの休息時間を確保することで、疲労がたまるのを防ぐ狙いがあります。例えば、11時間のインターバル規制を導入した場合、午前1時まで働いていたとすれば、定時の出勤時間が午前9時であっても正午以降に出社を遅らせなければなりません。
終業して、その8分後に始業する。何だかよく分からない流れだと思う方もいらっしゃるでしょうが、この処理には意図があります。
終業すれば、そこで勤務は終了します。同時に、この時点で勤務時間の計上も止まります。例えば、午前の11時から午後の17時まで勤務して終業すれば、勤務時間は6時間です(休憩は省略)。17時の時点で終業していますが、この8分後、17時8分に始業すれば、そこからまた勤務時間がカウントされ、21時に仕事が終わったとすると、勤務時間は3時間52分です。
退社して8分後に出勤させる意図は、累積勤務時間をリセットし、勤務時間が1日8時間を超えないようにして、割増賃金の支払いを回避する点にあります。
上記の例では、勤務を2つに分けており、6時間と3時間52分で、どちらにも割増賃金が付きません。しかし、両方の勤務を一体のものと考えると、勤務時間は9時間52分ですので、割増賃金が必要になります。
あえて勤務を分割し、労働基準法37条の適用を回避しようとする、脱法的な手法ですね。表面的にはキチンと法律を守っているような外観を備えていますが、その中身は数分間の空き時間を勤務の間に挟み込んで割増賃金の支払いを逃れるものです。
この方法は昔から可能ではあったものの、「できるが、やってはいけない」労務管理の1つでした。
仮に、法的な争いになったとしても、「2つの勤務には連続性があり一体のものであると考えるのが妥当であるので、時間外労働に対する割増賃金は必要である」と判断されるでしょうから、会社側が有利になることは無いでしょう。
2016年3月時点で、すでに改正の法律案が国会に提出されており、その中にインターバル規制も含まれています。
労働基準法等の一部を改正する法律案(衆議院)
第二条の二 事業主は、その雇用する労働者の健康の保持及び仕事と生活の調和が図られるよう、終業から次の始業までの間に少なくとも十一時間の休息のための時間を確保するように努めなければならない。