交通費が支給されるから郊外に家を持つ。
政府・与党は27日、2016年度税制改正で、会社から支給される通勤手当や定期券の所得税の非課税上限を、現在の月10万円から15万円まで引き上げる方針を固めた。新幹線網の発達で近年は遠くからの通勤が増えていることに対応する。新幹線通勤を促すことで、人口の東京一極集中の緩和につなげる狙いもある。
新幹線に乗ってまで通勤する人がいるんですね。各地の主要な場所に駅があり、飛行機よりも早くて便利になった新幹線ですが、通勤で使うというイメージはありません。
在来線よりは新幹線の方が乗り心地は良いですけれども、新幹線に乗らなければいけないほど遠くから通勤するのは賢い選択なのかどうか。
日本の人口(東京も例外ではない)は自ずと減っていくのですから、一極集中よりも通勤ラッシュを解消する方が先でしょう。
交通費全額支給、雇われているとこれが当たり前だと思いがちですが、交通費がタダになるから、無理に遠い場所から通勤してくるのでしょうね。都心で家を持つのではなく、郊外に一戸建てを建てて、そこから電車で通勤する人も多いのでしょうが、この選択が通勤ラッシュを酷くしている主因ではないかと思います。
交通費が支給されるから、郊外に35年ローンで自宅を買ったりする。移動コストをゼロだと見誤ると、職場から遠くてもヘッチャラだと考え、ヘンな場所に家を買ってしまうわけです。
確かに都心よりも郊外のほうが住居コストは低いですから、そこに住居を構えるのは合理的ではあります。しかし、毎日、人がイッパイ乗った電車でモミクチャにされて通勤する苦痛や時間のロスを考えれば、職場の近くに済むほうが賢いのではないでしょうか。
通勤ラッシュの原因は、通勤交通費を税金で優遇しているところにあります。
なぜか住宅手当を優遇しない。
通勤手当を優遇せず、住宅手当を優遇して、職場と住居を強引に接近させれば、通勤ラッシュで痴漢に遭うことは無く、冤罪も起こらず、苦痛とともに多量の時間を失うことも無い。
もし、住宅手当を月15万円まで非課税にするとなれば、どうなるか。
家賃の半分、上限は月15万円まで会社が手当として支給する場合、最大で家賃30万円のマンションに住めます。月額30万円の家賃を支払うとなると、東京の都心でもかなりいいマンションを選べるでしょう。六本木でも千代田区でも渋谷でも、予算が30万円もあれば、選択肢は多いでしょうね。
住宅手当の対象を賃貸に限定すれば、転勤の際にも対応しやすい。借金を負わないし、大きな借金を作らないので自分の与信枠を他の用途に使えます。
さらに、職場まで徒歩で通勤、もしくは自転車で行けるとなれば、移動時間のロスはゼロになります。時間を失わない。職場と住居を近づける最大の利点は、時間を節約できるところにあります。
毎日通勤で1時間使っていた場合。週に5日で5時間。1ヶ月が4週間だとして、月に20時間も通勤で時間を失います。1ヶ月のうち1日を通勤で捨てているようなものです。
通勤中に本を読めばいいとか、外国語を習得するために音声を聴けばいいとか、何かと通勤のための時間を有効に使って、その時間は無駄ではないと強引に肯定する人もいますが、やっぱり無駄です。
本を読みたいならば、何も人間でギュウギュウ詰めの電車内で読まなくてもいいでしょう。他人と押しくらまんじゅうをしながらドイツ語の音声を聴かなくてもいいでしょう。むさ苦しい場所で本なんか読む気分になれないし、スマホをいじくって時間を潰すなんて論外です。
住宅ローンにせよ、住宅取得の際の減税にせよ、何かと住宅関連で優遇施策を設けているのに、なぜか住宅手当には後ろ向きです。
新幹線で通勤すれば、デキるビジネスパースンというイメージを作れるでしょうが、通勤で時間を多量に浪費しているとなると、デキないと評価される方が妥当でしょう。
会社の経費で新幹線を使えるほどの人材ならば、職場の近くに住むぐらい難しいことではないはずです。
通勤手当で月15万円。
住宅手当で月15万円。
金額では両者は同じですが、通勤時間の有無という点で違います。1日分の時間を毎月捨てるか。それとも自分のために1日分の時間を使うか。この差を大きいと考えるか、小さいと考えるか。それはあなた次第。
どうしても電車に乗りたければ、通勤以外で乗ればいい。休みの日に小田急線で旅に出るとか、路面電車の風情を味わうとか。毎日同じ電車に乗っていると、電車を嫌いになってくるけれども、ここぞという時に乗ると、妙に嬉しいものです。
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