初任給の中に残業代を含めているというのが答えですが、過去も現在も、まだこの手の話題が取り上げられるんですね。
もし自分が残業代を未払いにされていたら、どうするか。払うべきものを支払ってもらっていないという不満はあるかもしれませんが、仕事を辞めるのではないかと思います。
割増賃金の未払いは企業の責任ですから、社員本人に責任はなく、「本人は仕事をヤメなくてもいいんじゃないの?」と思うところですが、会社を去るのが最も良い対処法です。
人がいなくなった会社は消える。いわゆる自然淘汰です。
会社を辞めると収入もなくなり、ちょっとシンドイ思いをしますが、「後からガッツリと未払いの残業代を請求してやる」と思いながら日々の仕事に取り組むのはもっとシンドイでしょう。
この会社はヤバイなと知ったら、早めに去る。これが一番の対処法です。
メモして、労働基準監督署に告発して、弁護士に依頼して、会社と交渉して、未払の残業代を回収する。その時間や労力で他の仕事をしたほうが有意義です。
ヘンな会社に付き合っているほどあなたの命は安いのか。そう問いかけたいぐらい。
もし未払いの残業代を請求するとなると、会社を辞める覚悟が必要です。とはいえ、辞めてから請求するならば覚悟は要りませんが。
過払い金請求と同じ感覚で未払い残業代の請求を捉えている方もいらっしゃいますが、同じ感覚で取り扱える問題ではありません。
過払い金は消費者金融からオカネを回収するだけ。回収する本人は嬉しいし、弁護士や司法書士は商売が潤うし、行動をためらう理由はない。しかし、残業代は、それを請求すると、もう会社にはいれない雰囲気になるし、在職できたとしても、人事的に何らかの不都合なことが起こる可能性もある。つまり、行動をためらう理由がある。
住宅ローンがある社員、子供が生まれたばかり、結婚して1年目。そういう人が残業代を請求するかというと、おそらくしない。何らかの弱みがある社員は、会社にとって御しやすいと考えられているフシがあって、子供ができると海外へ転勤させられるのはその典型例です。
正しく計算した割増賃金は確かに支払うべきでしょうし、請求もできるものです。しかし、未払いになっている割増賃金を請求するとなると、色々と考慮しなければいけない点もあり、「払い過ぎた利息が戻ってくるかもしれません」というようなオイシイ言葉だけではお客さんを誘引しにくい。
残業の話がでてくると、必ず長時間労働が俎上に載りますが、長時間労働が必ずしも過酷とは限りません。1日10時間労働、1日14時間労働というと、さも仕事が過酷であると反射的に考えてしまいますが、時間あたりの仕事の密度が分からないので、どれぐらいの負荷がかかっているかは不明です。
上記ではワタミが例として挙げられていたので、ワタミを例に使うと、例えば、JAPANESE DINING「和民」道頓堀店 の営業時間は17:00から翌日の5:00です。つまり、営業時間は時計の短い針が1周する12時間です。
営業時間は12時間ですが、始まりから終わりまでお客さんがイッパイというわけではなく、最も忙しいのはおそらく19時から21時でしょう。この時間はいわゆるラッシュタイムで、もうてんてこ舞いするほどの忙しさになるはず。
しかし、ラッシュタイム以外の時間は、第三者が想像しているよりも暇なはずです。オープンしてすぐの17時ごろとか、ラッシュが終わって一段落した22時頃とか、お客さんが少なく、仕事の負荷は低くなります。
単純に6時間労働とか13時間労働というと、さもその時間はミッチリと仕事をしているように思い込んでしまいますが、実際は時間帯によって仕事の密度にムラがあり、バタバタするほど忙しい時間があれば、同僚と談笑できるほど余裕がある時間もあります。
「残業ー長時間労働ーブラック企業」と単純に連想ゲームを頭の中で展開していると、現実とのズレに気づかない人もいるかもしれません。労働時間の数字だけでは仕事の密度は分からない。この点は意識しておくべきです。
残業は法律で何とかできる問題ではなく、仕事のやり方を変えないとなくならない。残業代を払うとか、計算方法とか、残業を承認制にするか許可制にするか、未払残業代にどう対処するかとか、そのようなことに頭を使っても残業は1分も減りません。