労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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休日無しで12日連続で勤務しても法律違反にならないワケ

 

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12連勤でも法律に違反しない。

2014年3月3日に北陸自動車道で起こったバス事故では、法令違反は見つかっていないようですが、居眠り運転で減速せずサービスエリアに突っ込んで事故を起こしたとなると、「何か問題があったんじゃないか」と思うのが普通の感覚です。

国交省監査、法令違反見つからず 北陸道バス事故(朝日新聞デジタル)
http://www.asahi.com/articles/ASG336K15G33UTIL04Z.html

事故を起こしたバスは高速バスで、深夜から朝にかけて移動するタイプ。夜行バスとも言われることもあるバスサービスですが、飛行機や新幹線に比べて料金が安く、目的地が同じでも料金が半分ぐらいで済むので、利用する人も多いはず。


私も大学生の頃は、大阪と東京の移動で夜行バスを使っていました。大学1年の頃は新幹線で移動していたのですが、新幹線だと片道で13,500円ほど必要になるので、学生だった私には結構な負担でした。

「バスで移動すれば安い」と人から聞いて、調べてみると、JR西日本のバスだと6,500円から8,500円ぐらいで移動できるので、新幹線よりも割安だったので、大学2年からはバスを使うようになりました。

一度、片道4,000円だったか、すごく料金の安いバスに乗ったことがあるのですが、実に乗り心地が悪くて、「もう乗りたくないなぁ」と思ったものです。隣との座席が密着していて、寝たくても寝れないような状態で10時間近くバスに乗り続けるので、これは辛かったですね。

別のバスを探すと、隣と座席シートが離れたバスもあって、こちらのバスは実に快適でした。私が主に利用したのはJR西日本のバスです。

西日本ジェイアールバス
http://www.nishinihonjrbus.co.jp/highway/list.html

私が大学生の頃に乗ったのは、ニュードリーム大阪号という名称のバスだったと思います。他にも、中央道昼特急も料金が安くて何度も乗りましたね。

ウェブサイトを見ると分かりますが、新幹線に比べて料金が割安で、座席シートにもゆとりがあり、寝ている間に目的地に到着できるので、一石二鳥です。

深夜に移動するバスというと、2014年時点では「事故が起こりそうで怖い」というイメージを抱かれてしまうのですが、私が乗っていたバスは危険な感じは全くなかったです。むしろ、料金が安くて、寝て移動できるので、新幹線よりもバスの方が好きになったぐらいですから今とは違いましたね。





労働基準法では、12日連続で勤務が可能。

事故を起こした運転手は居眠り運転をしていたのだから、無理な連続勤務だったんじゃないか。そう思う方もいらっしゃるでしょう。

居眠りするということは、疲れている、あまり寝ていないと思われるので、休みが取れないような勤務シフトだったんじゃないかと思われるのも無理のないことです。

労働基準法では、休日に関するルールがあります。労働基準法35条では、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」と書かれています。

つまり、「1週間に1日の休日が必要」ということ。

ただ、1週間に1日の休日ですから、勤務シフトを工夫すると、連続で12日の勤務が可能です。

例えば、下記のような勤務シフトを組んだ場合、労働基準法には違反しません。

(1週目)
月:休み
火:出勤
水:出勤
木:出勤
金:出勤
土:出勤
日:出勤

(2週目)
月:出勤
火:出勤
水:出勤
木:出勤
金:出勤
土:出勤
日:休み


上記の場合、1週目は最初の月曜日に休んで、2週目は最後の日曜日に休んでいますので、1週間で1日の休日を確保できています。よって、法律には違反していません。

「えーっ!? 12日連続で勤務しても法的にOKなの?」と思うかもしれませんが、OKなのです。

ただ、12日も連続して仕事をすると、疲れるのはもちろんですが、何より飽きますよね。同じような仕事が12日も続くと、おそらく7日目とか9日目には頭がボンヤリして、惰性で仕事をするようになる。そして、そういう時に事故が起こったりするもの。


法律に違反していないから問題ないという考えは、確かに正しいけれども、一般人の感覚からしてオカシイと感じたならば、法律に違反していなくても、何らかの対処策が必要です。

バスの運転手が少なくて、どうしても1人で多くの乗務をこなさないといけないという事情もあるでしょうが、今回のような事故を起こせば会社がなくなる可能性もあるので、せめて連続勤務は最大で5日までぐらいの制約は必要でしょう。

「法律に違反していないからいいんだ」という乱暴な主張には、粗雑さ、粗野な価値観、荒っぽい雰囲気というものを感じてしまうのは私だけではないはずです。

法律上は合法であっても、使用者には安全配慮義務が課されていますから、休日なしで12連続で従業員を働かせて事故を起こせば、使用者としての責任を負います(労働契約法5条)。法令に違反していないかどうかは大事ですが、現実に問題が起こらないかどうかも労務では考えないといけないわけです。

※労働契約法5条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

 

労働基準法の休日ルールが変わるかも、、。

2014年も12月になり、衆議院選挙があったため、成立せずに未了扱いになった法律案がありましたが、労働基準法の改正も今年の国会で実施される予定でした。

衆議院 第186回国会 での議案に、労働基準法等の一部を改正する法律案がありました。

衆議院 労働基準法等の一部を改正する法律案
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18602001.htm

提出された法律案の内容
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18602001.htm

上記の法律案の中に、『第三十五条第一項中「少くとも」を「少なくとも」に改め、「休日を」の下に「直前の休日の翌日から七日以内に」を加え、同条第二項を削る。』という部分があります。

35条というのは、労働基準法35条のことで、休日に関する内容が書かれた条文です。


ちなみに、2014年12月の時点で、35条にはどんなことが書かれているか。

第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。


これを法律案通りに改正すると、

第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を直前の休日の翌日から七日以内に与えなければならない。
2 (削除)

という内容になります。


では、以前の内容と改正後の内容ではどのような違いがあるのか、説明しましょう。




毎週、確実に1日は休みがある状態になる。

まず、35条の1項から話しましょう。

古い方の内容は、『使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。』と書かれています。これは、1週間という期間内に1回の休日が確保されている必要があるということを意味します。

1週間に1回の休日でいいのですから、例えば次のような働き方もOKになります。

(1週目)
月曜日:休日
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤

(2週目)
月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:休日

2週間のうち、休みは1週目の月曜日と2週目の日曜日です。その他は出勤ですので、12日連続で出勤日が続きます。「うへぇ、、こりゃあダルいゼ、、」と思うでしょうが、こういう働き方でも法律には違反しないのです。

「ええーっ!? 12日連続勤務なのに合法なの?」と反応する方もいらっしゃるでしょうが、確かに合法です。

もう1度、35条1項の内容を読んで下さい。『使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。』と書かれています。つまり、1週間に1回の休日があればOKなのだから、上記のような働き方でも35条1項には違反しないのですね。

とはいえ、このように働けるからといって、実際にこのような勤務シフトを組むような会社はあまり無いでしょうが、可能であることは確かです。


では、法律を改正したらどうなるか。

『使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を直前の休日の翌日から七日以内に与えなければならない』という内容に変わりますので、1週目の月曜日に休日を設定したら、その翌日の火曜日から7日以内、2週目の月曜日までには次の休日を設定する必要があります。

この改正によって、連続勤務が最大で6日までに制限され、12日連続勤務という無茶な勤務シフトは組めなくなります。

12日連続で勤務が可能という点はもう10年以上も前から放置されていて、2014年時点で、やっと変わりそうな状況になりました。これは良い改正です。


あとは、35条2項が削除されるとどうなるかという点ですが、以前は『前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。』と書かれており、4週間という期間で休日を配分できましたが、法律案通りに改正すると、この変形休日の仕組みは無くなります。

4週間という区切りが中途半端で、「なぜ1ヶ月じゃないんだ?」と何度も疑問に思っていましたが、スパッと削除する方が分かりやすいですね。


2014年12月26日時点で、まだこの法律案は成立していませんが、成立すれば休日のルールがシンプルで分かりやすいものになりますので、これは早く成立して欲しいですね。


余談ですが、衆議院や参議院は法律を審議して成立させる場所ですので、これらのウェブサイトで掲載されている法律案を見ると、制度がこれからどのように変わるのかを先んじて知ることができるので面白いです。興味のある方は、他の法律案も見てみると良いでしょう。裁判官や検察官の報酬も知ることができますよ。



 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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