- 健康診断の日に給与がでなくてもそれは誤差の範囲か
- 健康診断は仕事なのか、仕事ではないのか
- 健康診断の日に給与が出るかどうかは会社ごとに違う
- 健康診断を受けている時間に給与が出ても誤差程度のもの
- 健康診断を受けている時間に給与が出るデメリット
- 健康診断の時間に給与が出る人、出ない人
- 健康診断も仕事と同様に時間が拘束されている
- 健康診断の結果が改善したら手当が出る
- 健康診断の結果でコンテストを実施する
健康診断の日に給与がでなくてもそれは誤差の範囲か
会社に所属して仕事をしていると、年に1回、定期に健康診断があります(深夜勤務がある方だと年に2回という方もいらっしゃいます)。これは労働安全衛生法という法律で決まっている健康診断で、会社に勤めている人(学生など一部を除く)は毎年1回は受診するように決められているものです。
ちなみに学生は、学校保健安全法という法律に基づいて、学校経由で健康診断を受けるようになっており、職場で健康診断を受ける必要がないのです。
健康診断の内容は、身長、体重、視力、聴力、他には心電図や採血、問診、胸部X線検査などもあります。検査の項目を知りたい方は、下記のPDFで紹介されていますので参照ください。
労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/130422-01.pdf
健康診断は仕事なのか、仕事ではないのか
年1回の健康診断は、時期は決まっていないものの、いつの時点かで実施しますが、健康診断の当日に、診断のために要した時間は仕事の時間になるのかどうか。この点は昔からずっと話されてきて、今でも労務管理で話題になる点の1つです。
「受診しないといけないならば、それは仕事と同じじゃないか」、「健康診断そのものは仕事じゃないから、それに要した時間は労働時間にならないのでは?」と、判断が分かれるところです。さらに、「診断の時間は1人あたり15分程度(ただし診断項目の多さで変わる)だし、会社負担で健康診断を受けられるのだから給与がでなくてもいいじゃないか」と考えることもできます。
例えば、休日や有給休暇の日に健康診断を受けるように会社から求められたら。どう思うか。つまり、勤務日に健康診断を受けると、仕事を中断しないといけないし、診断を受けている時間も勤務時間として扱われるので、休みの日に健康診断を受けさせるという判断です。
健康診断をいつ、どの時間に受けるかは会社が決められるので、休みの日に健康診断を受けるように手配しても構わない、と考えるのか。
それとも、
定期の健康診断は「受けない」という選択ができないので、任意ではなく義務で受けないといけない。だから、仕事の時間と同じように、健康診断に要した時間は勤務時間として計算するべき、と考えるのか。
判断が分かれるところで、悩んでしまいますよね。
健康診断の日に給与が出るかどうかは会社ごとに違う
結論から先に書くと、どちらの判断も正しいです。休みの日に健康診断を受けさせるのは構わないし、健康診断に必要な時間は仕事の時間と同じように扱うのもOK。
「え~!? どっちでもいいって、、困りますぅぅ、、」と反応したい気持ちはよく分かりますが、客観的な基準がないので、どちらでも構わないと言わざるをえないのです。
仮に、健康診断に必要な時間を勤務時間として扱ったとしたら、どうなるか。先ほどの立場だと、後者の立場で判断したらどうなるかを考えてみましょう。
健康診断を受けている時間に給与が出ても誤差程度のもの
定期健康診断に必要な時間は、1人あたり30分から1時間程度です。早い人だと20分もあれば終ってしまう人もいるし、採血や胃カメラなどまで対象になっている人だと1時間ぐらいは想定しておく必要があります。
いや、1時間はちょっと長すぎるか。となれば、1人あたり30分と仮定しましょう。
健康診断に必要な時間は30分として、時間あたりの賃金を1,500円だと想定すれば、健康診断に要した時間を勤務時間として扱えば、750円の賃金が発生します。
750円の価値をどれぐらいだと見積もるかは人によって違いますが、定期健康診断は年に1回なので、750円の賃金が追加されるのも年に1回です。つまり、1年という期間に、わずか750円というお金が上乗せされるだけです。1年は365日、1日あたりだと、2円程度です。
健康診断を受けている時間に給与が出るデメリット
もし、健康診断に必要な時間に給与を支払えと会社に求めると、会社も賃金が発生している時間に対して厳格になるのでは。仕事に関係しないことはさせない。例えば、軽い雑談ですら禁止されかねないし、喉が渇いたから飲み物を飲みたいと思っても休憩時間じゃないからダメとか、トイレは3時間に1回だけとか。社員が時間に対し過剰にキッチリすれば、それに反応して会社も時間に対して過剰にキッチリとなり、お互いにギスギスした関係になる。
もちろん、時間は曖昧に管理せず、キッチリ管理する方が良いのですが、いわゆる「遊び」の部分を無くすぐらい詰めてしまうと、かえって不都合な状況を招くかもしれません。
健康診断の時間に給与が出る人、出ない人
健康診断の日を固定すると、その日は休みの人もいれば、出勤日の人もいます。休みの人は健康診断のためだけに会社まで来ないといけないでしょうし、出勤日の人は勤務時間中に抜けて健康診断を受けるので、診断に要した時間は勤務時間に含まれることも。一方で、休憩時間と同じように、健康診断の時間を勤務時間から控除しているところもあるのでは。
健康診断のために中抜けした時間を控除しないとすれば、休みの日に健康診断を受けた人と扱いの違いが生じますが、健康診断の実施日を固定していると、この違いを解消するのは難しいです。
全ての従業員が、出勤日、休日ともに同じ事業所でしたら、全員が同じ扱いになるのでしょうが、サービス業だと年中無休のお店があり、健康診断を実施する日が休みの人もいれば出勤日の人もいて、全員が揃うのは困難です。
他にも、勤務時間帯が違う人もいますよね。もし午前中に健康診断を実施すると、夕方から出勤する人、夜から出勤する人、こういう人たちも勤務時間外に健康診断を受けないといけない。午前中に出勤している人は勤務時間中に健康診断を受けるけれども、それ以外の人は勤務時間外に健康診断だけを受けないといけない。
月曜日から金曜日まで、始業時間と終業時間は同じ、休みの日も同じ、そういう社員ばかりの会社ならば、一斉に同じ時間に健康診断を受けられるでしょうから、上記のような扱いの違いは発生しません。しかし、そのような会社ばかりではありませんから、どうしてもある程度の誤差を受け入れないといけないのです。
健康診断の日を固定せず、社員の休日に健康診断の実施日を合わせるとなると、同日に健康診断を実施できません。
社員数が多い会社だと、健康診断サービスを販売する業者に依頼し、専用のワゴン車(胸部レントゲンや胃部レントゲンの装置を搭載したもの)で会社まで乗り付けてもらい、会社で一斉に健康診断を実施するでしょう。会社の会議室や食堂を一時的に健康診断の会場に切り替えて、胸部X線検査は業者のワゴン車内で行う。
一方、社員数が少なければ、個別にどこかの病院やクリニックで受けてもらうところもあるでしょう。これならば、個人ごとにスケジュールに合わせられます。しかし、会社から遠い場所に病院があるかもしれないし、移動するとなると移動時間の扱いはどうなるんだという新たな問題もあります。
どちらも一長一短です。
会社の全額負担で健康診断を受けられるのですから、そのために必要な時間は誤差の範囲だと認めたほうが、物事はスンナリと進むように私は思います。
健康診断も仕事と同様に時間が拘束されている
会社に勤めるとなると、入社した時や、毎年1回の定期の健康診断を受けるかと思います。診療所や病院に行って、各自で健康診断を受けてもらい、その費用を会社が負担する形の事業所もあるでしょうし、胸部レントゲン撮影ができる大きなバスが会社までやってきて、職場でまとめて健康診断を受けるところもあります。
出勤日と健診日が重なったときは、通常の仕事を離れて、健康診断を受けるわけです。年齢によって診断項目が変わり、1人あたりの所要時間も異なりますが、15分から30分ぐらいでしょうか。
健康診断といっても態様は色々あり、1〜2時間程度で終了する診断もあれば、半日や全日で実施する健康診断もあります。会社経由ではなく、自己負担で健康診断を受けると、時間と費用をかけて内容も充実したものになります。
会社で実施する定期健康診断は、労働安全衛生法という法律で求められているもので、診断項目も決まっています。若い方だと血液検査すら無く、「こんなもので健康診断として足りるのか?」と思うほど簡素なもので終わってしまいます。
健康診断を受けている時間は仕事として扱うのか。それとも、休憩時間のように仕事ではないものと扱うのか。この点で悩むことがあります。定期健康診断は義務ですし、従業員としても受けないといけないものですから、短いものの時間も拘束されます。
健康診断は仕事ではないから給与を支給しない。確かに、健康診断そのものは仕事ではありませんし、付加価値を生み出す活動でもありませんから、給与を支給しないという判断は正しいものです。
他方、任意で受診するものではないし、仕事に関連するものだから、給与を出すべきなんじゃないか、という判断もできます。半ば強制的に受けさせられるものですからね、仕事とほぼ同じじゃないかと思うのは分かります。
ただ、仕事ではない行事に対して、仕事を行ったと同等の給与が支給されるとは限らないこともあります。
健康診断を受ける日の給与については、事業所によって対応は色々とあるかと思います。
- 健康診断を受ける日に従業員全員が休日になっているならば、給与は出ない。
- 出勤している日に、中抜けして健康診断を受けたならば、給与が出る。もしくは、中抜け中は休憩時間と同じと扱い、給与は出ない。
- 健診日の当日は休日だけれども30分相当(1人あたりの所要時間を想定したもの)の給与が出る。
- 給与は出ないけれども、500円の健康診断受診手当が出る。
- 当日が休日の人には給与は出ないが、出勤日になっている人は給与が出る。つまり、診断のために中抜けしている時間も労働時間として計上している。
- 無料で健康診断を受けられるのだから、15分程度の給与は無くてもいいだろうと考える。
- 月給制の人は健康診断中の給与が出る。しかし、日給や時間給の人は給与が出ない。
健康診断に要した時間に対して給与を払う法的な義務はありませんから、払おうが払うまいが自由なわけですけれども、何かちょっとした工夫ができそうな感じがします。
上記の選択肢はいずれも間違いではなく、対応方法としては全て正解と言えます。
健康診断の結果が改善したら手当が出る
会社負担で、従業員は無料で健康診断を受けられるのですから、診断のための時間に要した給与ぐらい受け取らなくてもいいじゃないか、と私は考えているタチです。
自己負担で受ければ1万円ぐらいかかるものですし(検査は費用がかかるもの)、それがタダになるのですから、検診費用が給与の代わりだと言われても不満はありません。
ただ漫然と健康診断を受けても、たいして面白いものではありませんし、定期健康診断ですから義務感があり、できればやりたくないと思われているものかもしれません。
そこで、前年度比で、診断内容が改善したら手当なり報奨金のようなものが出るとなれば、定期健康診断を面白いイベントの1つにできるのではないでしょうか。
例えば、前年にメタボと判定された人が、今年はメタボと判定されなかったら、健康報奨金として1,000円が支給される。
他にも、体重の減少量に応じてインセンティブを用意するのも良さそうです。前年比で体重を3kg落としたら500円。5kg落としたら800円。減少量が10kgだったら2,000円という感じで、減量目標を立てて健康診断に備えるようにしたらどうでしょう。
体重の減少割合を競って、トップ3には賞品が出るのも一案です。さほど高価なものではなく、あくまで遊び感覚の賞品でよく、缶詰やゼリー、瓶入りジュースなどを用意するぐらいで良いのでは。
健康であれば仕事も捗るでしょうから、会社としてもありがたいはず。
わずか15分相当の給与を払う、払わないとモチャモチャしているよりも、健康診断をイベント化して楽しむようにしたほうが、職場の人間関係は円滑になるのではないかと思います。
労使間が対立するような環境を作るのではなく、面白さや楽しさを交えた就業環境を実現していくよう工夫するのも労務管理であろうと思います。
健康診断の結果でコンテストを実施する
義務で健康診断を受けるだけで終わってしまうと、乗り気にならないものですし、メタボだの、高血圧だの、体重が増えただの、聞きたくない結果を聞かされます。
そこで、体重の減少割合が多かった順に賞品が出るとか、前回はメタボ判定が出たが、今回はそれが消えた人に賞品が出る、糖尿病の傾向が解消した人に賞品を用意するなど、健康診断に対して積極的になるイベントを付けると、給与を払う払わないという細かい話も消えるのではないでしょうか。
健康診断のデータを改善させると賞品が出るのですから、年1回の健康診断が楽しみになるのでは。どのデータを利用して評価するかは様々ですし、賞品も健康に資するもの、スポーツクラブの無料利用券10枚とか、バランスボールなどを用意するといいのでは。
数百円程度の給与が増えたところで、昼食1回分ぐらいにしかなりませんが、健康な体を維持するような機会があれば、それによって得た健康は、小銭を稼ぐよりも価値あるものになるのではないでしょうか。一生ものの健康体が出来上がると考えれば、健康診断を受ける際に給与が出るかどうかは気にならなくなるのではと思います。
目標があると人間は動き出すものですし、義務で健康診断を受けるだけでは健康への意識は高まりにくいですが、他の人と競って、賞品が用意されていると、人の意識は変わるでしょう。しかも、健康診断への参加は無料です。
労働安全衛生法で健康診断をやらないといけない。それを受けないといけない。そういう気持ちだと気乗りしにくいものですが、人参が用意されれば人は積極的になるものです。
過去に、携帯電話の会社が契約者に対して、ドーナツ2個が無料になるクーポンを配ると、ドーナツショップに行列ができました。1個100円とすれば、1人あたりわずか200円の代物です。にもかかわらず人はワンサカと集まってくるわけです。たった200円で人は行列に並ぶんですね。
「海老で鯛を釣る」という言葉がありますが、人間の世界ではそれと似た手法が繰り返し用いられています。割引、クーポン、キャンペーン、限定など、人を惹き付ける仕掛けは、よく似たものが繰り返し使われていますよね。