雇用契約にサインして、就業規則にサインしない
採用時には、雇入契約書や雇用契約書といった書類を用いて雇用契約を締結しますよね。
働く時間や場所、勤務する曜日や時間、給与や休日、休暇など。色々な内容がズラッと書かれていて、必要な内容を書き込んだら、会社側と社員側、双方で署名と押印をする。これが典型的な雇用契約の手続きです。
契約書というのは、内容を読んで、その内容に納得したら名前を書いて、その横にハンコを押すのが通例です。これは雇用契約に限らず、ケータイの契約やアパートやマンションの契約でも同じです。
契約書には署名と印鑑が伴うのが普通ですが、就業規則に署名してハンコを押した人はどれぐらいいるでしょうか。
「えっ? 就業規則に署名なんて必要なの? ハンコも押したことなんてないよ」と思った方がほとんどでしょう。確かに、就業規則に署名する必要はないし、ハンコを押す必要もありません。法律でも求められていませんからね。
でも、不思議だと思いませんか。
雇用契約と就業規則の効力関係は、就業規則が上で雇用契約が下です。つまり、雇用契約よりも就業規則の方が効力が強いのです。
にもかかわらず、雇用契約には署名して印鑑を押すのに、就業規則にはそれらがない。
逆ならば分かるのですが、効力が弱い方ではチャンと手続きしているのに、強い方では手続きはしていない。これはヘンな感じです。
雇用契約よりも強い効果を持つにもかかわらず同意が不要
海外では"I agree" formというものがあって、採用時にEmployee handbook(日本の就業規則のようなもの)の内容に同意するように求められるようです。
(参考)
Employee handbook
http://en.wikipedia.org/wiki/Employee_handbook
雇入れ通知書や雇用契約書を作り、誓約書を作り、身元保証書を作り、採用時にはナンダカンダと書類を作るはずですが、就業規則への同意書はなぜか作らないんですね。
「法律では就業規則への同意を求められていないのだから当然じゃないか」と思うところですよね。確かに、その通りです。
就業規則は、作るときには会社側が内容を決めて作成できるし、労働基準監督署へ届け出るときも意見書を添付するだけでいいので、社員さんの同意は不要です。
また、採用時にも、就業規則のコピーや就業規則の内容をコンパクトにまとめた冊子を配布するだけで、特段の同意や誓約などは取っていないはずです。
法律では求められていませんが、雇用契約には同意して署名しハンコを押すのに、就業規則には同意は不要で署名も押印も要らないというのはどうも不自然な感じがします。
就業規則には同意、署名、押印が必要。雇用契約には同意、署名、押印が不要。これならば分かります。効力の強い方でキチンと手続きしているのだから、効力の弱い方では簡素に済ませる。こういう関係ならば自然です。
就業規則の中身を理解した上で採用されるように、就業規則に個別の同意を求める。これは日本でも可能です。
法的には就業規則への個別同意は不要ですが、チャンと就業規則の中身に目を通して納得したと同意してもらうのはいいんじゃないでしょうか。後から、「就業規則なんて見たこと無い。読んだこともない」などと言われることもなくなるでしょうから、会社へのメリットもあります。
雇用契約書にはサインするでしょうが、就業規則にサインする会社はほとんど無いのではないでしょうか。そのため、就業規則の中身に対する意識が弱くなるとも考えられます。サインするとなれば、さすがに目を通すはずですから、就業規則の内容を周知させる手段としては有効でしょうね。