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雇用契約を何度も更新すれば無期化する?有期雇用が無期雇用に変わる境界線。

反復更新

 





何度も更新しているから実質的に無期雇用という強引な理屈。

労働契約法が改正されて、平成25年4月1日から有期雇用の無期雇用への転換ルールが実施されました。

ただ、実施されたといっても、実際に雇用契約の転換が発生するのは、早くても平成30年からなので、今すぐに何かが変わるわけではない。

労働契約法の改正について解説したリーフレットは下記のリンクより。
(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829-01.pdf)


5年を超えて有期労働契約を更新すると、無期の雇用契約に変わる。これが労働契約法の改正の主要な部分です。

有期雇用がどの時点で無期雇用に切り替わるのか。この点について、以前は基準が無かった。

3ヶ月の雇用契約を3ヶ月毎に更新する。6ヶ月の雇用契約を6ヶ月毎に更新する。これをずっと続けて、7回更新とか、9回更新とか、13回更新というように、数珠繋ぎで雇用契約を継続してきた。そんな方もいらっしゃるはずです。


何度も契約を更新している人が、ある時点で契約の更新を断られて、いわゆる雇い止めをされると、「何度も雇用契約を更新しているのだから、実質的に期間の定めのない雇用契約だ」という理屈を展開する。

確かに、7回、9回、13回と有期雇用契約を更新していれば、実質的には無期雇用の状態になっていると言いたい気持ちになる。

しかし、更新すると中身が変わる契約というのはオカシイと思えるはず。


例を挙げると、1個80円で部品を供給する契約で取引していて、内容を変えずにその契約を何度か更新していると、いつの間にか1個100円で部品を供給する契約に変わってしまっている。これは困りますよね。

部品を買う企業にとっては、1個80円で取引していると思っており、さらに契約でも1個80円と決めていた。にもかかわず、1個80円の契約を更新していると、いつの間にか知らないうちに1個100円の契約に変わってしまっていた。

部品を売っている企業は困らないかもしれませんが、それを買っている企業は困っちゃいます。


「何度も雇用契約を更新しているのだから、実質的に期間の定めのない雇用契約だ」と主張するのは、上記のように、いつの間にか1個80円の契約を1個100円の契約に変えてしまう場合と同じぐらいヘンなことなのです。

1個80円の契約は、その内容を変えない限り、何度更新しても1個80円のままです。

それと同様に、有期雇用契約は、その内容を変えない限り、何度更新しても有期雇用契約です。

有期雇用契約がいつの間にか無期雇用契約に変わるというのは、大根を育てているつもりがいつの間にかゴボウに変わっちゃったというのと同じぐらい奇妙な変化なのです。


「実質的に期間の定めのない雇用契約になっている」という理屈でゴリ押ししていた状況に対して、裁判所はこの理屈を認めていない例が多かったのです。これは裁判所の判断が正しい。

気持ちでは理解できても、法律の話では肯定しがたいですからね。「契約を更新すると契約の内容が変わる」というオカシさを裁判所は受け入れなかったのだと思います。


ただ、有期雇用契約を何度も更新している状況で、契約をそのまま有期雇用のままにしておくのは、法的には妥当であっても感情的にはモヤモヤ感が残ってしまう。

有期雇用契約はどの時点で無期雇用契約に変わるのか。この点について法律では決まりがなく、今まで曖昧なままでした。

この曖昧さを解消するために、労働契約法で有期雇用と無期雇用の境界線を決めたわけです。






5年に達する前に雇い止めされるかどうか。

5年を経過すると、有期雇用が無期雇用になるため、問題として指摘される点があります。

「契約期間が5年を超える前に雇い止めされるんじゃないか」、雑誌や新聞、ニュースなどで聞いたり読んだりした方もいらっしゃるのではないかと思います。

つまり、無期雇用になる直前に雇用契約を解除して、雇用契約の無期化を回避する企業がでてくるのではないか。そう思うのでしょうね。


具体的には、下記のような例です。

首都圏大学非常勤講師組合、早大を刑事告発へ
http://mainichi.jp/select/news/20130407k0000e040126000c.html

上記の例では、就業規則の変更手続きに不備があるという点が問題であるかのように書かれていますけれども、手続きに問題があるというのは確からしいですが、主な争点はそこではなさそうです。

雇用契約の期間を通算で5年までにする。この点が主な争点なのだと思います。

こういうニュースを見ると、「あぁ、そんなことが起こるのか。じゃあ、他の会社や組織でも起こるんだろうな」と思ってしまいがち。


ただ、5年も務めた人を、雇用契約が無機化するというだけで契約を解除するとは限らないのではないかと思います。

想像ですが、大学では5年で非常勤講師を置き換えても影響が出にくい職場なのかもしれない。5年で人員を入れ替えても、ドンドンと新しい人が非常勤講師の募集に応募してきて、人を集めることに苦労しないので、雇用契約の契約期間を通算5年までに制限するのかもしれません。

確かに、大学院を出た人だと、企業に就職する人もいますが、大学での研究職を探す人も多いのではないかと思います。大学院を卒業する人は年々増えていて、大学の非常勤講師になる可能性のある人も増えているのではないでしょうか。

一方で、大学の数はそんなにポンポンと増やせませんし、既存の大学でも非常勤講師を受け入れる枠を大幅に増やすのはカンタンではなさそうです。

となると、大学の非常勤講師の労働市場では、超過供給の状態が生じ、5年で人員を入れ替えても大学は困りにくい状況になっているのかもしれません。


とはいえ、大学以外の職場でも同様のことが起こるかというと、これは可能性が低いと思う。

なぜならば、5年も勤務している社員を、雇用契約が無期化するという理由で契約を更新しないとは思えない。

新しく人を雇って、5年まで勤務してもらい、仕事に慣れてもらうには、相応の時間が必要だし、教育する手間もかかる。新しく採用した人に仕事を教えるのは大変です。実際に教える立場になった人ならば分かるはず。

すでに日常業務を理解している人ならば、本人の判断で仕事を進めてくれる。だから、周りの人もラクです。


「1年を超えたら無期雇用」という条件ならば、雇い止めも発生するかもしれない。しかし、5年というラインに設定すれば、新たに人を採用して仕事を覚えさせるよりも、今の人に仕事を続けてもらう方がいいだろうと判断する可能性が高いのではないかと思う。

今回の改正では、あえて5年というラインを設定したところが絶妙です。1年だと短すぎるし、3年でも雇い止めの可能性がやや高そうな感じがする。かといって、10年にしてしまうと、期間が長過ぎて、改正そのものに意味がなくなるとも思える。

おそらく、練りに練って5年という期間に決めたのではないか。私はそう思います。





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