労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

年次有給休暇の使い方、病欠に有給休暇を使うと困るかもしれない。

病欠有休

 

 

有給休暇の使い方は法律で決まっていない。

https://lmedia.jp/2017/06/21/80050/
体調不良による当日の有給申請は認めない…使用を縛るのは問題ない?


有給休暇は法律で決まっている休暇制度ですが、端から端まで細かくルールが決まっているものではなく、休暇を付与する条件や日数については法律で決めています。しかし、休暇の使い方については特に注文は無く、当事者間の裁量に委ねられているのが現状です。

そのため、休暇の使い方でスッタモンダして、「この場合はどうするの?」と悩んだりするわけです。

風邪などの体調不良のときに、有給休暇を休んだ日に充当するのはありがちですが、このような形でも休暇も色々と物議を醸します。

病欠で休んだら給与が出ないので、有給休暇で収入を補填できるから便利。こういう考え方もあります。

他方、欠勤するのだから、その日はもう出勤しないので、有給休暇を使えない。このような判断をする人もいます。出勤する日を休みに変えるのが有給休暇なので、すでに欠勤すると決まっている日を休暇に変える余地はないという理屈です。「労働義務がない日に有給休暇を取ることはできない」と言う方もいらっしゃいます。こういう人は頭は良いんですけども、なんというか堅いというか、「遊び」が無いんですね。

有給休暇の使い方を最も緩く設定するならば、法定休日以外の日ならば有給休暇を使えます。法定休日を有給休暇に変えてしまうと、労働基準法35条違反ですので、この点を回避すれば、どの日であっても有給休暇を使えてしまいます。

体調不良になって、当日に有給休暇を使うように求めて、それを認めるかどうかは会社次第です。

病欠のときに有給休暇を普段から使っているような会社だと、当日であってもスンナリと休暇に変更できます。しかし、そういう休暇の使い方をしていない会社だと、拒否される可能性は高いです。会社が10あれば、10通りの結果があります。

仮に、病欠当日に休暇を使えなかったとしても、他の日に休暇を使えるならば不満は感じないでしょうし、病気で休んだ日が1日だけならば給与への影響も軽微です。

当日いきなり休暇を使うと言われてしまうと、会社側が時季変更権を行使する余地がないため、会社と労働者とのバランスが崩れます(労働者側が有利なため)。そうなると、休暇の取得を拒否する方へ流れが強まります。

他には、いずれににせよ休むのだから、有給休暇を充当しても差し支えないとも考えられます。有給休暇を使わせなければ出勤するのかというとそうでもないですからね。

有給休暇の使い方は法律で決めるものではなく、当事者の自由ですから、「こう判断すれば間違いない」という基準はありません。ただ、判断するコツとしては、当事者の一方(会社側もしくは労働者側)が有利になるような判断をするのではなく、お互いに妥協できそうな着地点を狙います。

今回のケースならば、欠勤した当日に有給休暇は認めないとしても、その代わりに次の木曜日は休暇にしようか、という代替案を提示すれば、本人としても納得しやすいでしょう。これも一種の時季変更権の行使ですね。

一方的な解決策は失敗しやすい。これが労務管理の実務なんですね。

就業規則で、有給休暇の使い方についてルールを決めるのも大事です。普段から「このようにします」という基準があれば、休暇を使う方も動き方が分かります。

休暇を取得するときは事前に申請しないといけないのか。事前というと、何日前までなのか。さらに、仮に7日前と設定したならば、その日数は長いんじゃないかとか。事後申請は一切ダメなのか、それとも認める余地を残すのか。病気や怪我で休む場合も有給休暇を使えるのかどうか。

有給休暇の使い方にはあえてルールを設定せず、休暇を使い切ってくれればそれでいい。という対応もアリです。日数の消化だけを目的にして、どう使うかは現場にお任せする。ただし、日数を消化できなかった場合は、管理する立場の人に何らかのペナルティを課す。この方法ならば、休暇を消化することだけに集中できますから、申請方法の類で頭を悩ますことはありません。

 

 

有給休暇を使えば給与が減らない。だから便利。

病気で仕事を休むとき、そのままだと当日の給与がなくなるので、事後的に有給休暇で処理している。そんな会社、少なくないのではないでしょうか。そのまま休んでしまうと給与が出ませんが、年次有給休暇を充当して休めば給与を受け取りながら休めます。

筆者も、病気で休んだ時に有給休暇で振り替えてもらっていた経験があります。便利で助かりますよね。年次有給休暇を残しているだけでは意味がありませんので、病欠時に使っていけば日数の消化も進みます。

よくあるのは、風邪で休んだ日に年次有給休暇を充当する場面。結構あるんじゃないでしょうか。冬の時期ならば、インフルエンザで休むときに有給休暇を使うとか。ただ、インフルエンザの場合は、会社によっては特別有給休暇が設定され、手持ちの有給休暇を使う必要がないところもありますね。

余談ですが、1週間ほど療養で休むときは、健康保険の傷病手当金を利用できます。最初の3日間は待機期間で、傷病手当金が出ませんので、その期間だけ年次有給休暇を使い、4日目以降の期間で傷病手当金を申請するのが通例かと思います。

他にも、怪我をしたときに有給休暇を使うかもしれません。捻挫したとか、骨折とか、打撲とか。業務中の怪我ならば労災保険で対処しますが、私的な怪我の場合は自己対処になりますから、有給休暇を使う場合があるでしょう。

病気や怪我で休むときに有給休暇を使うと、便利で助かるのですけれども、場合によっては不都合な結果を招くこともあります

例えば、普段は年次有給休暇を使いにくい職場だと、病欠ぐらいしか休暇を使う方法がない。そのため、わざと病欠で休み、休暇を消化する人が出てくる可能性があります。旅行に行くとか、温泉に行くという理由では休暇を取りにくいけど、病欠ならば休暇を使える。そういう職場だと、上記のような有給休暇を充当する仕組みが悪用される可能性があります。

普段から年次有給休暇を利用しやすい職場ならば、あえて偽って、病欠で有給休暇を消化しなくてもいいでしょう。仮病を使ってまで休暇を利用する動機がありませんから、仕組みを悪用される可能性は低くなります。

嘘を言わないと年次有給休暇を使えない環境が問題の原因なのですけれども、良かれと思って運用している仕組みが、思わぬ結果を招く。病欠に有給休暇を充当する場面がその例なのかもしれません。


病欠に有給休暇を使うのは諸刃の剣。

有給休暇を消化する目的で病欠されてしまうと、本来出勤するべき人がいなくなるわけですから、出勤している他の人に影響が出ます。さらに、他の人の仕事が増えて、残業になり、勤務時間が延びて、人件費を増やすかもしれない。

病欠に有給休暇を充当している会社は、就業規則にこの点について書いていないはず。「病気で欠勤するときは、有給休暇を欠勤日に充当する」なんて就業規則には書けませんものね。有給休暇は自由に利用するのが前提ですから、休暇の使用用途を限定するような規定を就業規則には書けない。

だから、有給休暇の病欠振替は、就業規則に基づかない暗黙の処理になってしまう。さらに、就業規則に基づかないから、運用方法が定まらず、仮病で有給休暇を消化するような人まで出てくる。

病欠に有給休暇を充当することは悪いことではないし、法律で禁止されているわけでもないです。風邪を引いたから年次有給休暇で休むのは構わないですし、私生活で怪我をしたから有給休暇を使って病院に行くのもありです。

年次有給休暇の付与について法律はルールを設けていますが、その使い方については当事者に任せられています。

労働義務の無い日には有給休暇は使えないのですが、有給休暇をどのように利用するかは当事者が決めることであって、欠勤日を有給休暇に振り替える場合もあります。

「じゃあ、病欠で有給休暇を使えないようにすればいい」と思うところですが、実際はそうならないもの。

社員さん自身は病欠時に有給休暇を使うことを望むでしょうし、会社もその望みに応じるでしょう。つまり、当事者の思惑が一致しているために、病欠時に有給休暇を使わないようにする可能性は低い。中には、嫌がらせか意地悪で、病気欠勤する日に有給休暇を使わせないようにしている事業所もあるでしょうが、本人が希望すれば、欠勤に年次有給休暇を充当する必要があります。

もし、会社で、上記のように有給休暇を欠勤日に充当しているならば、仮病で有給休暇を消化する人が出てくることを覚悟しないといけないでしょう。

便利な仕組みには、副作用があるものです。

とはいえ、年次有給休暇の日数には限りがありますから、本人の好きなように使ったとしても、日数がゼロになればそれで終わりです。仮病で有給休暇を使う人がいたとしても、本人が持っている残日数の範囲内ならば構わない、と考えるのも1つの解決策です。

ルールを設けるのは労務管理ですが、ルールを設けないのも労務管理です。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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