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主婦の年金と主夫の年金

主婦と主夫



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主婦の年金と主夫の年金
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3号被保険者=女性とは限らない。

国民年金には3つの被保険者種別があり、それぞれ1号被保険者(以下、1号と表記する場合がある)、2号被保険者(以下、2号と表記する場合がある)、3号被保険者(以下、3号と表記する場合がある)と分かれています。この点はご存じの方も多いかと思います。単独で国民年金に加入する人は1号、会社員の人は2号、会社員の配偶者は3号に分かれています。

去年2011年3月頃に、国民年金の運用3号制度がニュースに出てきてチョットだけ話題になりましたが、その直後に3.11の地震が起こり、災害以外のニュースがテレビや新聞でも出てきにくくなりましたので、運用3号制度についてはあまり報道されることなく過ごされてしまった感があります。

運用3号とは、会社員の配偶者出なくなった人が3号から1号に切り替えるところを手続きをせずに、そのまま3号のままで国民年金に加入していた人をフォローするために設けられた取り扱いです。本来は1号となるところをそのまま3号のままだと思って手続きしなかったのですから、本来は保険料の未払い状態になってしまうはず。しかし、手続きを忘れただけでそのまま未払い状態になり、後になって気づいても時効で保険料を納付できない期間も生じるので、運用3号の仕組みでもって保険料を納付して国民年金に加入していたものとして扱うようにしたわけです。

平成23年の1月1日から運用3号の取り扱いが実施されたものの、物議を醸すことになり、2月24日には取り扱いを保留し始め、3月に入ると取り扱いを廃止しています。平成21年の終わりごろぐらいから対処を検討し、22年3月の段階で運用3号の取り扱いを決めているようで、1年程度の期間で準備を進めていたのでしょうね。

なぜ運用3号の取り扱いが物議を醸すかというと、1号に切り替わるところをそのまま3号であると思って手続きをしない人を、国民年金の保険料を納付したものとして扱ったのがその理由です。手続き漏れの期間をいわゆるカラ期間(加入期間だけ反映し、年金額には反映しない期間のこと)として扱うだけならばさほど問題にはならなかったのかもしれませんが、保険料を納付して加入していた期間として扱ったため、3号から1号への手続きをキチンと行った人との均衡を保てなくなったのです。

そこで、平成23年の11月22日に「主婦年金追納法案」が179回国会に提出され、まだ2012年1月5日の段階では成立していないのですが(第179回国会での内閣提出法律案 http://www.clb.go.jp/contents/diet_179/law_179.html 閣法番号15 国民年金法の一部を改正する法律案 にはまだ成立の星印が付いていません)、この法案は「主婦年金」と書かれていますが、必ずしも主婦限定のものではありません。国民年金の3号被保険者というと、パートのおばちゃんを思い浮かべますが、年金加入者のデータを見ると女性だけが3号被保険者というわけではないのが分かります。

平成22年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001xz56-att/2r9852000001xz6n.pdf

上記のファイルを見ると、平成22年度の時点では3号被保険者は1,005万人います(2ページの図1より)。さらに、3ページ目の表1で3号被保険者の内訳が書かれており、女性の3号被保険者が993万人、男性の3号被保険者が11万人です。つまり11万人の男性の3号被保険者がいるのですね。退職して会社員の妻の扶養になっているパターン、妻が会社員で夫が専業主夫というパターン、夫が退職した後に妻がパートタイムとして社会保険に加入し、夫を扶養に入れているパターンなどが考えられます。おばちゃんだけが3号被保険者というわけではないのですね。

 

運用3号で影響が出るのは0.2%の人。

3号から1号への切り替え手続きをなぜ忘れるのかを考えてみると、「自分自身は何も手続きをしなくてもいいだろう」と感じてしまうからではないでしょうか。つまり、夫が会社員で妻が3号被保険者として生活しているとして、何らかの理由で夫が退職すると妻は3号被保険者から1号被保険者に切り替わるのですが、妻自身は何も環境が変わっていません。妻が退職するわけではないので、自分自身は何も変わったことが起こっていないのだから何も手続きをしなくてもいいんじゃないかと思ってしまいがちなのでしょうね。それゆえ、3号から1号への切り替え手続きが行われず、そのまま3号被保険者として取り扱われ続けたという流れです。

自分自身に何かイベントが発生すれば、「あぁ、何か手続きらしいことをしなくちゃいけないんじゃないか」と思うはずです。しかし、配偶者である夫や妻にイベントが発生したとして、「自分自身に関して何かやらなくちゃいけないんじゃないか」と思うには、公的保険の手続きに詳しい人でないと難しい所があるのではないでしょうか。以前も同じような手続きをしたことがあるとか、どこかの会社なり組織で事務手続きを経験したことがあるとか、市役所や年金事務所で働いたことがあるとか、何らかの気付くきっかけがないと行動を起こしにくいでしょうね。年金は難しいというイメージもあって、自分ではなるべく手続きをせずに、会社や行政窓口におんぶに抱っこの状態になっていると、被保険者種別の切り替えが漏れるのも無理のないことなのかもしれない。

余談ですが、3号から1号に切り替わるのを避けたいならば、会社員の夫が退職したら、妻が会社にフルタイムであれパートタイムであれ、社会保険に加入する形態で働くのもいいかもしれない。妻が特に何もなければ、夫が2号から1号に変わるので、妻は3号から1号に変わる。もし、夫が退職するタイミングで妻がどこかの会社に勤務して社会保険に加入すると、妻は3号から1号ではなく、3号から2号へ変わります。さらに、夫が妻の扶養に入るとすると、夫は2号から1号ではなく、2号から3号に変わる。つまり、夫婦がバトンタッチするように、妻が働きに出て社会保険に加入するのもいいかもしれない。フルタイム勤務ではなくパートタイムであっても、週30時間を超える雇用契約ですと社会保険に加入するはずです。

もちろん、上記の例は夫と妻を入れ替えて読み替えることも可能です。先ほど書いたように、3号被保険者は女性限定ではないので、妻が会社員で夫がパートタイムや専業主夫という組み合わせもあり得ます。


主婦年金追納法案について 平成23年11月22日 厚生労働省年金局
http://www.soumu.go.jp/main_content/000136510.pdf

上記のファイルを見ると、3号被保険者制度ができた昭和61年以降、3号から1号へ切り替えた人は1.913万人で、本来は3号から1号に切り替えているはずの不整合な記録を持っている人が97.4万人います。さらに、97.4万人のうち、年金に影響がある不成功記録を持っている人は47.5万人です。

47.5万人の中には、既に年金を受け取っている受給者と年金制度には加入しているものの、まだ年金を受け取る段階には至っていない人が混ざっています。被保険者は現時点では制度に加入しているものの年金を受け取っていない状態なので、記録が修正されたとしてもすぐに今の生活に影響するわけではない。となると、焦点は5.3万人の受給者ではないかと思います。不整合記録を訂正すると、年金の加入期間はそのまま変動しませんが、年金の額は変動しますので、偶数月に受け取っている年金の額が変わるはずです。

すぐに影響があるのは、5.3万人 / 1,913万人 = 0.2で、全体の0.2%の人たちのために主婦年金追納法案を作成したといっても言い過ぎではないかもしれません。もちろん、今の時点で年金を受給していない被保険者にも影響は出るのですが、将来の時点の年金額が変動するのであって今何かすぐに影響が出るものではないので、感覚では「あぁ、そうなんですか」と感じるかもしれない。例えるならば、半年後の賞与が3万円減るよりも、来月の給与が3万円減るほうが心理的な影響は大きいはずです。

不整合記録が最も長い人だと、224月ということですから、19年弱ほど不整合のままだったと考えられます。19年弱の期間となると、老齢基礎年金の月額に換算すると4万円から5万円程度になるはずです。ただ、減額調整は受給していた年金額の10%を上限とするようですので、月額60,000円の人を減額調整したとしても、減額される月額は6,000円までということなのでしょうね。

『不整合記録を有する年金受給者の不整合記録の開始年度別状況』のページを見ると、最も人数が多いところが昭和61年となっていて、3号制度ができた昭和61年の時点で既に不整合が開始されていたということでしょうか。制度ができたばかりで、昭和61年の5月に1号から3号に切り替わり、昭和61年の8月に会社員である夫なり妻が退職し、また3号から1号に戻った人がいたとすれば、この人はおそらく手続き漏れをしているのではないでしょうか。制度ができた年に被保険者の種別を切り替え、さらに配偶者が退職し、またもとの種別に戻るというプロセスが1年の間で発生しているので、訳もわからないままそのままになったとも想像できます。

 

年金問題は行政の責任という責任転嫁。

新聞やニュースでは、行政の案内が不十分だったから3号から1号へ被保険者種別の切り替えができなかったと報道される傾向にあります。何かトラブルが起こるとどこかの企業や組織、行政機関へ責任転嫁しようという風潮がありますけれども、何か一方的な感がします。

『不整合記録を有する年金受給者の不整合記録の開始年度別状況』の(注3)を読むと、勧奨の取り組みについて書いています。昭和63年以降は種別の切り替えを勧奨していたようで、平成2年以降は低水準で抑えています。平成元年と平成9年が気になりますけれども。

さらに、平成10年以降は本人の周辺情報を集めて勧奨しているし、平成17年以降には職権での種別変更も実施している。平成20年度以降は0人になっています。

種別変更程度の作業で何か強制的に執行するわけにもいかないので、上記のような勧奨を行なっていれば(勧奨の内容が不明ですが)、行政側が周知努力を怠っていたとは必ずしも言えないのではないでしょうか。

年金関連で何かが起こると、行政側の落ち度が強調されやすいけれども、それほど一方的なものではないのではと思います。

3号から1号へ切り替えた人はザックリと1,913万人いて、不整合な記録がある人は97.4万人ですので、97.4 / 1,913 ≒ 5.09%となる。約95%の人はキチンと種別を切り替える手続きをしているのですから、行政ではなく本人の責任としても良いような気もします。

加入者側も、年金は自分の貯金ですから、自分で監督しておく必要があります。よく分からないので「会社がチャンとやってくれている」とか、「市役所や年金事務所がチャンとやってくれてる」と思わずに、自分のオカネは自分で管理するように感心を持たれたほうがよいかもしれません。




(今回のメルマガで参考にした資料)

平成22年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001xz56-att/2r9852000001xz6n.pdf

小宮山大臣閣議後記者会見概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r9852000001w1u6.html

主婦年金追納法案について
平成23年11月22日 厚生労働省年金局
http://www.soumu.go.jp/main_content/000136510.pdf

第179回国会での内閣提出法律案
http://www.clb.go.jp/contents/diet_179/law_179.html

厚生労働省が今国会に提出した法律案について
“第179回国会(臨時会)提出法律案”
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/179.html

 

 

 

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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