労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

職場にスマホを持ち込んでもいいの? BYODとMDM。

持込禁止

 

車を運転している最中にポケモンGOをプレイする人がいて、物議を醸していますが、運転しながら操作したくなる気持ちは分かります。

ポケモンGOがリリースされた当初、すぐにスマホにインストールして実際にプレイしてみましたが、確かに歩きながらスマホの画面を見たくなります。地図を移動しながら遊ぶのが特徴で、自分が操作するキャラクターが地図の上を移動すると、モンスターに遭遇して、それを捕獲できるんですね。

「モンスターなんか捕獲して何になるんや?」と思うでしょうが、それは実際にプレイしたことがない人の感想。ポケモンGOで遊んでみると、人があれだけ熱中する気持ちが分かります。

ちなみに、私は確かレベル5でポケモンGOをヤメました(もう大分前なので記憶が曖昧)。延々とマップを移動して、黙々とモンスターを捕まえて、育ててレベルアップさせ、ポケモンジム(他のプレイヤーと対戦できる場所)でバトルする。この単純作業を延々と繰り返さないといけないと感じて、レベル5になった頃に、もういいだろうと思いアプリをアンインストールしました。


歩きながらスマホを操作する人は今でも多いですが、中には自転車に乗りながらスマホの画面を見ている人もいます(相当に危ない)。さらには、信じがたい光景ですが、バイクを運転しながらスマホを操作している人までいます(これはもう免許を剥奪すべき)。

2016年の11月には、バスの運転手が運転中にスマホでポケモンGOをプレイしていたとのニュースもありました。

nlab.itmedia.co.jp

そこまでしてプレイしたいという欲求を掻き立てるようなゲームなのです。

モンスターを集めたところで報酬が得られるわけではない(時間を失うだけ)ですし、社会的な評価が上がるわけでもない(トラブルでむしろ評価が下がる)。スマホのゲームとはそういうものです。ガチャというものを1回すために何千円もお金を捨てて、何らの価値もないキャラクターやアイテムを手に入れることに熱心になる方もいます。

暇つぶしにこれほどの大金と多くの時間を現代の人は浪費するのかと、ある意味での学習になります。


もはやスマホはただのケータイではなく、カメラ、メール、SNS、ゲーム、写真、ビデオ撮影、株価や為替のチェックなど何でもありな道具になっています。

そういうものをポケットに入れていれば、使うな、見るな、操作するなと言っても人の行動を止めるのは難しいでしょう。


最も簡単な対処法は、「仕事中は私物の携帯電話を持ち歩いてはいけない」と就業規則で制限してしまうことです。物理的に持っていなければ使いようもありませんので、ポケモンGOを業務中にプレイしないようにするには、スマホを持てないようにすればいいでしょう。

ただ、私物のケータイを業務中にも使う職場もあります。仕事中に電話で連絡する、業務連絡をメールやLINEで送るなど、本人所有のケータイを業務でも使うようにしている場合、それを持ち歩かざるを得ません。


手が届く範囲に自分のスマホがあれば、無意識に触ってしまうもの。ちょっとメールをチェック。ちょっと為替レートを見る。ちょっとLINEを。ちょっとポケストップでアイテムを。などと、スマートフォンがコモディティ化した現在では、呼吸するようにスマホを触っている人がいても不思議ではありませんよね。

近頃のバスには、運転席付近(料金箱付近を撮影していると思われる)の映像を撮影するドライブレコーダーが取り付けられており、スマホでゲームなんてしようものなら、後から映像をチェックされて詰問されるはず。


仕事中にはケータイを触らせないならば、私物の携帯電話を持ち歩かないように就業規則で決める。

業務でも私物のケータイを使わせているならば、業務中にスマホを操作する人がいても、ある程度は誤差として受け入れざるを得ないでしょう。

 

 

もはや職場のPCで個人的な連絡はしない。自分のスマホの方が高性能。

「業務中に私的なメールをしない」

こんなルールを設けている会社もあるのではないでしょうか。2020年の現在、もはやメールはあまり使わないという方もいらっしゃるでしょうが、古い就業規則だと、こんなことが書かれていたりするものです。

就業規則にメールについて書かれている場合もあれば、暗黙のルールとか、口頭での注意でもって仕事中にメールをしてはいけないと伝えているところもあるかもしれません。

業務中には"職務専念義務"というものがあって、就業規則の服務規程の部分に書かれていたりします。

メールを制限するような規定だと、「じゃあ、メールではなく、SNSでメッセージを送るのはOKだな」と解釈されてしまい、メールを使わない人には効果がありません。

通信可能な会社のPCや個人的に所有している携帯電話などの通信端末を使うと、業務とは関係ない通信を行うことも可能です。そのため、私的なメールを禁止する会社もあるのでしょうね。

中には、イントラのみに接続し、インターネットには繋がらないようにしている会社もあり、色々とネット関連での管理方法があるのです。

私的なメールを禁止するルールを設けるのはよいとしても、果たしてそれだけで足りるのかどうかが疑問を抱くところです。個人で持っているスマートフォンがありますし。

会社のPC経由を経由したメールのみに限定しているならば、携帯電話などでのメールはOKとも解釈できます。さらに、会社のPC以外の通信端末を含めて私的メールを禁止しているならば、「じゃあ、メール以外ならばOKなのか? メッセージアプリや通話アプリで通信するのは構わないのか?」との解釈も可能です。

通信手段が充実してきている状況で、果たしてメールのみを禁止するだけで目的は達成できるのかどうか。ここが今回の考えどころです。

 

 

通信手段は職場のコンピューターだけではない。

1998年頃ならば、主な通信手段といえば電話、FAX、メールぐらいでした。BBS(もはや死後か?)を使った通信もできましたが、これは不特定多数に情報を発信する手段でしたので、個別に連絡する手段としては、左記の3つが主体だったと思います。

昔ならば、メールと通話を制限すれば、仕事中の通信をコントロール出来ました。しかし、2013年の時点では、メールと電話だけが通信手段ではありませんよね。2020年に至っては、1人1台でスマートフォンを持つのは当たり前になりつつあります。

FacebookやTwitterなどを利用していると分かりますが、これらのウェブサービスでは、専用のメール機能やメッセージ機能を使って、利用者間で個別に連絡する機能があります。これらの機能はスマートフォンのアプリを経由して利用できるので、従来のメールや電話よりもカンタンに個人間の通信が可能です。

他にも、LINEやSkypeのようなチャット機能を持ったウェブサービスを利用すれば、メールや電話と同様に、相手と通信することができます。

こんな状況で、メールを禁止するだけで足りるのでしょうか。もはや、メールだけが私的な通信手段じゃないのですから、「私的なメールを送ってはいけません」というような就業規則のルールは効果を見込めません。


では、どうやって私的な通信を制限するのか。

おそらく、業務中は通信機器そのものを持たせないようにしないと、私的な通信は防げません。スッとスマートフォンをポケットから出して、画面を見ることもできますし、レスポンスを送るための時間も数十秒で足ります。

更衣室のロッカーに携帯電話を入れるとか、貴重品ロッカーに通信機器を入れておくとか、業務中は私物の通信機器を持てないようにしないといけません。本気で制限するならば。

ただ、鍵がかからない更衣室のロッカーだったり、ロッカーそのものがない職場も多いはず。となると、貴重品である携帯電話はポケットに入れて仕事をせざるを得ません。

また、仕事中に連絡するとき、個人の携帯電話に電話することもあるでしょうから、むしろ携帯電話を仕事中に持っていてもらうほうが都合がいい場合もありますよね。本人を探すよりも、本人の携帯電話に連絡する方が早かったりしますから。

となると、ケータイは持っていてもいいけど、仕事中は業務連絡以外の理由であまりいじらないようにしてもらう。そんな個人のモラルで管理してもらうぐらいしかなくなります。

 

 

通信機器の持ち込みと管理。

高性能な携帯通信端末が流通してきて、生活もさらに便利になってきたように思います。

以前だと、携帯電話の機能は、電話だけとか、電話とメールだけ、ネットはオマケ程度という状況。画面は小さく、思ったような操作をするにはちょっとシンドイのが携帯電話でした。2インチのディスプレイで、ボタンをカチカチして文字を入力したりカーソルを動かしていく。あまりにもどかしくて、ケータイのネットなんて使いたくないと思ったのが懐かしいですね。

しかし、今では、携帯電話でPCと同じことができます。携帯電話といっても、従来のパカパカと開けるケータイではなく、指のタッチで操作するスマートフォンが主流になり、性能もPCとほぼ同じぐらいのものが使われています。中には、PCよりも高性能で、アプリ経由ならばスマホの方が便利だと感じるものもあります。

カメラ機能もあり、さらには、ビデオ撮影する機能もある。テレビ電話のような機能がついている端末もあり、これ以上何をするのかと思えるほど充実しています。

これだけ機能が充実してくると、端末の中には個人的な情報や会社や組織に関する情報がたくさん記録されていて、もし端末を紛失すると、困る場合もあるはず。単純に電話だけできる携帯電話やポケベル(今はもうないかもしれない)ならば紛失してもさほど困らないのかもしれないけれども、PCのように使うスマートフォンだと電話帳、メールの内容、さらにはウェブサービスとアカウントでリンクされているならばそこに保存されているデータなど、芋づる式に情報がつながっていて、1つの端末を失うと多くの情報を失う可能性があります。

カメラやビデオの機能を利用して、会社内の情報を持ち出すこともできます。書類をカメラで撮影したり、ビデオで話の内容を録音する。さらに、ビデオならば一定時間にわたって映像を保存できるので、書類を網羅的に撮影することもできるはず。

さらには、個人情報を抜き取るアプリケーションも流通していて、通信の内容を他者に知られる可能性もあります。

便利になると、同時に厄介なことも起こるのが世の中の常ではあります。

最近では、「BYOD」と「MDM」という言葉を目にしたり、聞いたりするときがあるかもしれません。

BYODとは、Bring Your Own Device の頭文字を合わせたもので、自分が所有している通信機器を職場に持ち込むことを意味しています。携帯電話、スマートフォン、タブレット型の通信機器などが Device の代表例です。さらに、ビデオカメラやデジカメも Device の中に含まれるのではないかと私は思います。

また、MDMとは、Mobile Device Management の頭文字で、通信機器を管理することを意味しています。例えば、業務用に利用している携帯電話のシリアル番号を台帳に記録しておくとか、社内に持ち込む通信機器を会社に登録しておく必要があるとか、さらには、アプリケーションをインストールさせて、そのアプリケーション経由で端末の利用状況を把握するという方法も。

会社側の立場で考えると、情報が漏洩しないように通信端末の管理を厳格にしようとするはず。一方、社員側の立場で考えれば、自分のスマートフォンや携帯電話は自由に使いたいし、会社から使い方や管理方法を決められたくないと思うはず。さらに、通信内容をアプリケーションで把握するとなると、プライバシーを侵害する可能性もあるので敏感な問題です。


個人の所有物を管理・監視できるかどうか。

通信機器には2種類あって、「自分で契約して所有する端末」と「会社が契約して社員に持たせている端末」の2つがあります。

後者の場合、会社が契約し所有しているのでしょうから、端末を会社が管理するのは自然なことです。それゆえ、通信内容を管理されても、取り立てて反対するものではない。もし、管理されるのがイヤならば、自分自身で持っている携帯電話などを使えばよいので、不利益なこともない。

しかし、個人的に所有している端末を会社が管理するとなると、物議を醸します。例えば、自分のスマートフォンに通信内容を把握するアプリをインストールするように指示されれば、おそらく嫌でしょう。自宅の鍵を会社に渡すようなものだから、気持ち悪いと感じるはず。

筆者の経験だと、飲食店で働いていたとき、携帯電話などを仕事場に持ち込んではいけないというルールがありました。ルールといっても就業規則で決められているほどのものではなかったと思うのですが、業務中は携帯電話を持ってはいけない、という決まりでした。更衣室の置いておいて、仕事中には持ってはダメだった。

とはいえ、2000年から2002年頃の話なので、その頃は携帯電話といっても今のように多機能ではなかったし、通信料金も高かった。だから、ほとんどの人は電話とメールだけで、ケータイのネットを使っている人はそんなに多くなかったように思います。それゆえ、職場内に通信機器を持ち込まなくても差し支えなかったのかもしれません。

しかし、今では暇さえあればケータイの画面を見ている人も多いです。ちょっと手ぶらになればケータイをポケットから取り出しコチョコチョコといじる。電車の中でずっとケータイの画面を見ている人もいるし、休憩時間の間はずっとケータイを触っている人もいます。歩きながらケータイを操作している人や自転車に乗りながらスマホの画面を見ている人も。

もう、空気のように通信端末を使っていて、手放すことは考えられないくらいに生活に密着しています。

こんな状況で、通信機器を管理しきれるのかどうか。

自分の端末を持ち込むときには、シリアル番号を会社で記録し、端末を管理することもできると思えるけれども、これだと端末そのものを管理できても、どのように使われているかという部分までは管理できないのではないか。個人所有の端末ならば、必ずしも業務用途にだけ使うとは限らないでしょう。むしろ、私的な用途で使うのが普通です。

アプリで社員の位置や通信内容の監視をすることもできるのでしょうが、ここまで露骨なことができるかどうか。ましてや本人が個人的に所有している通信機器に監視アプリを入れると、プライバシーとの兼ね合いを考えないといけなくなります。

通信機器の管理はどこまでできるのかについては、法律だけで判断できる範囲ではありません。技術的な方法で管理できるとはいえ、それも完全な方法ではないはず。

余談ですが、携帯電話に制限を課している一方で、人間の脳には制限を課されないのは興味深い。

人間の脳は映像や言葉、文字を記憶することができるので、スマートフォンと同じぐらい厄介なはずなのに規制されない。ただ、同じぐらいといっても、記憶の容量では通信機器の方がはるかに多いので、人間の脳は放っておいても差し支えないのかもしれない。すぐに忘れますからね、人間の脳は。

さらに、脳を取り外すことはできないので、持ち込むな(!?)とも言えない。通信機器と違って脳は規制できませんからね。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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