働く時間には法律で1日に8時間までの制約があります。1日に仕事が出来る時間は8時間までと労働基準法で決まりがあり、この時間を超えて仕事をすることはできないルールになっています。
ただし、一切できないわけではなく、労働基準法36条の36協定を利用すると、8時間を超えて勤務できます。とはいえ、1日8時間の上限は変わりませんので、毎日8時間が通常の勤務時間と残業時間の境目になる。
仕事をしていると、毎日8時間ではなく、ときには長くしたり、ときには短くしたりして、柔軟に時間を配分したいと思うのではないでしょうか。日ごとや週ごと、場合によっては月ごとや年ごとに仕事の中身は変わるはずですから、仕事に合わせて時間を設定したい。こう思うのは自然なことです。仕事が多い時期には勤務時間を長くして、そうでもない時期は勤務時間を短くする。このように弾力的に時間を決めることが出来れば便利です。
しかし、1日8時間で勤務時間の枠が固定されていると、時間の配分を変えるのはちょっと難しいですよね。例えば、今日は6時間の勤務にする。その代わりに、明後日は10時間の勤務に変える。そして、2日間の勤務時間を平均すると1日で8時間を超えていないのだから、10時間勤務の日も残業にならないようにしたい。1日8時間の時間枠で拘束されていると、こんなことはできません。
とはいえ、1日あたりでは時間の長短があるけれども、総時間では法律の制限時間を超えていないのだから、上記のような時間の管理もできて良さそうなものです。
そこで使うのが、「変形労働時間制度」という仕組みです。名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。変形労働時間制度とは、一定の条件を満たすと、上記のように、ある日は6時間、ある日は10時間というように勤務時間を配分して、一定の期間を平均して法律上の制限時間を超えていないならば、残業にならないようにできる仕組みです。
変形労働時間制度は、残業の時間がなるべく発生しないように勤務時間をコントロールするために使えます。ただし、良いことばかりの仕組みではなく、この制度を使うには条件があり、その条件をきちんと満たした上で、さらに、正しく制度を運用する必要があります。
もし使い方を間違えると、残業の時間を減らすどころか、残業代の未払いを発生させてしまう可能性もある制度です。そのため、正しく理解して正しく使う必要があります。
そこで、正しく変形労働時間制度を使って、残業をコントロールしたいと考えているならば、『残業管理のアメと罠』を読んでいただいて、事前に仕組みを理解した上で制度を使っていただきたいと思います。
ちょっとだけ内容を紹介すると、、、
どんな会社が変形労働時間制度を使えるのか。
正しく運用した場合とそうではない場合の違いは何か?
就業規則や雇入れ通知書と足並みを揃える。
変形労働時間制度を使うと「できること」と「できないこと」。
もし、間違った使い方をすると、、、?
以下、前書きより抜粋
仕事は忙しい時もあれば、そうでないときもあります。例えば、荷物を運ぶ仕事の場合は、お盆の時期と年末には仕事が多くなりますが、それ以外の時期はお盆や年末ほど仕事が多いわけではないでしょう。
お中元のときは、そうめんやビールを送る人もいるし、メロンを送る人もいて、運送業の人たちは忙しくなる。年末も、ハムや洗剤、コーヒーなどのお歳暮を送る人がいるので、荷物を配達する仕事は多くなる。ならば、7月と8月、12月に仕事の時間を長くして、それ以外の時期は短くすると良いだろうと思えます。お盆や年末の時期は、1日9時間や11時間、1週46時間や49時間のように時間を長くして仕事をして、それ以外の時期は1日6時間や7時間、1週38時間や35時間というように時間を短くして仕事をする。つまり、仕事が時期に応じて変わるのだから、1日8時間や1週40時間に束縛されず、働く時間もそれに合わせて変わるのが自然です。
他に、飲食店ならば、ビジネス街ならば平日の客数が多く、週末の客数は少なくなる。繁華街だと、週末に来客が集中するというお店もあるかと思います。さらには、宴会を受け付けているお店だと、宴会の準備と当日は仕事が多くなるのではないでしょうか。
事業所が多い地域では平日の勤務時間数を長くして、住宅が多い場所にお店を構えているならば週末や祝日に勤務時間数を長くする。このように時間配分を変えることが出来れば便利です。そのために変形労働時間制を使えるのではないかと思えますね。
ご存知のように、労働基準法では、1日8時間、1週40時間という労働時間の制約があり、この制約を超えると、いわゆる残業として処理しなければいけません。さらに、残業には割増賃金も伴います。この点は法律に書かれていることですし、すぐに変えることもできないものです。
しかし、「すべての日を8時間までに制限する必要はないんじゃないの?」と思う人も多いのではないでしょうか。忙しい日は8時間を10時間に変える。その代わりに、仕事が少ない日は8時間を6時間に変える。このように柔軟に時間を管理できたらいいですよね。
中元や歳暮の時期には仕事の時間を長くして、それ以外の時期は短くする。お客さんがお店にたくさん来る日は勤務時間を長くして、それ以外の日は短くする。このように、他の日の仕事時間を短くして、仕事が多い日に他の日の時間枠を充当する。そうすることで、複数の勤務日を平均して1日8時間に収まっていれば、残業にならないようにしたい。こんなことが出来れば、時間の管理も柔軟になります。
さらに、1週間という単位でも、「1週40時間というように枠を固定せずに、他の週と時間枠を融通できるようにして、ある週は35時間勤務にする代わりに、ある週を45時間勤務にというように柔軟に対処したい」と思うこともあるはずです。これも実現できれば、労働時間を弾力的に管理できるので都合が良い。
上記のように、働く時間を柔軟に管理したい企業にとって便利な仕組みがあります。通常ならば、1日8時間、1週40時間という制約の下で労働時間を管理する必要があるのですが、ある特別な制度を利用すれば、先ほどのように労働時間の枠を変動させて、柔軟な時間管理を実現することが可能です。
その特別な仕組みが「変形労働時間制度」です。名前を聞いたことがある人は少なくないかもしれません。また、初めて聞いた人もいるかもしれません。この制度を利用すると、忙しい日に労働時間を集中させ、時間に余裕のある日には勤務時間を減らし、勤務シフトを柔軟に組むことができるようになります。
ただし、変形労働時間制度は、知らずに使うと未払い残業代を発生させるだけの仕組みになり得ます。キチンと導入して、キチンと運用する必要があるのです。便利な選択肢には何らかの副作用があるものです。その副作用を知らずに制度を利用してしまうと、残業代を減らすつもりがむしろ増やしてしまっているという皮肉な結果になりかねません。これでは逆効果です。いかにして副作用を回避しながら、変形労働時間制度を活用するか。この点についても本文で説明しています。
知っていても使わなければ知らないのと同じです。車も乗り方を知って実際に乗っているからこそ便利なのであって、免許を持っていて車も持っているけれども、実際に車に乗らないならば車も免許も飾りです。変形労働時間制度に限らず、公的な制度は、ジッとしていても誰かが手引きしてくれるように待っている人ではなく、自ら情報を獲得するように行動する人にしか知ることはできません。結果には必ず行動が伴いますし、結果無きところには行動が伴いません。「労働時間をもっと柔軟に管理したいと思い、何か方法がないか」と自ら行動を起こした人が読んでいるかと思います。あなたもそのうちの1人かもしれませんね。
なお、この冊子は本屋では販売していないので、ここでしか買えません。