あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

2つの残業。残業代が付く残業、残業代が付かない残業。

残業代

 

 

どこからが残業で、どこまでが残業ではないのか。

決まった勤務時間をオーバーして働くと、それは残業と言われる。そして、残業したら、それに対して残業代が支払われる。

何の事はない、普通のことを普通に書いているだけと思ってしまうが、残って仕事をしたからといっても、必ずしも残業代が必要な残業になるとは限らないのです。


何をもって残業とするのか、どの勤務時間に対して残業代が必要なのか。ここをキチンと理解していないと、残業じゃないのに残業だと思ってしまったり、残業代が出ないところで「残業代が出るんじゃないか?」と誤解してしまう。

 

例えば、10:00から15:00までが勤務時間である井上さんという人がいるとしましょう。休憩時間は無しで、働く時間は5時間です。

さて、この井上さんは、ケーキを作る職人の方で、11月に入って、そろそろクリスマスケーキを作る準備に入ります。

話は脱線しますが、12月23日や24日に販売されるクリスマスケーキというのは、早めに作って冷凍で保存されているものもあり、作ったものをすぐに売っているとは限りません。こじんまりしたケーキ屋さんではケーキを作ってすぐに販売するのでしょうが、コンビニやスーパー、百貨店で注文したケーキは冷凍ものが多いんですね。

冷凍したものをお客さんのところへ送って、自然解凍で食べてもらう。生で作ったケーキと較べても遜色ない味と食感ですから、生ケーキだと思って食べている人もいるでしょうね。

話を戻すと、ケーキ職人の井上さんですが、今年は思いのほかクリスマスケーキの注文が多く、場合によっては15時以降も仕事をしないといけなくなりました。


クリスマスケーキを作るために、10時から仕事を始めたものの、15時では終わらず、16時まで仕事をして、やっと1日の仕事を終えた場合。15時以降の1時間は残業になるのかどうか。

通常だと10時から15時ですので、5時間勤務です。しかし、クリスマスケーキを作るために仕事の時間を延長した日は、10時から16時ですので、6時間勤務です。

では、15時から16時までの1時間は残業なのかどうか。さらに、残業代は必要なのかどうか。

 

 

残業かどうかを判断する基準。

法律では、1日8時間までが労働時間として設定されています。この時間をオーバーすると、残業となり、残業代である割増賃金が必要になるわけです。

ということは、1日8時間を超えていなければ、法律上は残業ではなく、割増賃金である残業代もありません。

決まった時間(所定労働時間)をオーバーしたら残業、、、とは限らないのですね。

先ほどの井上さんの場合、10時から16時までの6時間勤務ですので、1日8時間の枠を超えておらず、"法律的"には残業ではないのですね。

しかし、指定の勤務時間をオーバーしたのだから、「それは残業だろう」という解釈もあります。確かに、決まった時間をオーバーすることが残業であるならば、井上さんのケースは残業に該当します。しかし、法律ではそれを残業とは扱わないのです(「法定内残業」と表現する場合がある)。


残業代に関しても、1日8時間を超えていないと発生しませんので、井上さんの場合は残業代(割増賃金)はありません。

ただ、残業代が無いといっても、無賃労働になるわけではなく、15時から16時までの1時間分の賃金はもちろんあります。上乗せされる25%の割増賃金が無いのであって、基本となる賃金は支給されます。


決まった勤務時間をオーバーすれば一般的な解釈では残業と扱われますが、法律では1日8時間を超えないと残業とは扱わないのです。一般的な意味と法律での意味にズレがあるのですね。

残業代も、8時間を超えた時間に対する割増賃金だと解釈すれば、15時から1時間オーバーしても、トータルで勤務時間が8時間を超えていないのですから、割増賃金である残業代は無いのです。ただし、割増賃金は無いものの1時間分の賃金はもちろんありますから、仮に時給1,500円だとすれば、その1,500円は支給されます。

もし、25%の法定時間外労働に対する割増賃金が上乗せされると、時間給は、1,500円 + 375円になりますので、1,875円です。しかし、10時から16時までの勤務ですので、上乗せの375円は無しで、1,500円だけが賃金となるわけです。

 

 

残業には二種類の残業がある。

労働基準法で法定時間外労働という言葉を使うとき、それはいわゆる「残業」を意味しますよね。日常会話では、法定時間外労働という言葉よりも残業という言葉のほうが認知されていますし馴染みがあります。

会社によっては、残業するときには、上司の人に連絡したり、許可を得る必要があるかもしれない。もしくは、残業の申請をする書類を作成する必要があるところもあるかもしれませんね。

ところで、この残業という言葉ですが、2つの種類があることはご存知でしょうか。「残業は残業でしょう? 1つだけなんじゃないの?」と思うかもしれません。

残業という言葉を使うとき、法定労働時間の枠を超えたから残業なのか、それとも、所定時間を超えたから残業なのかによって、残業という言葉を2つに分けることができます。つまり、1日8時間、1週40時間の枠を超えたから残業なのか。それとも、会社が決めた所定労働時間(例えば、1日7時間30分など)を超えたから残業なのかという違いです。

もし、残業の届出をする必要がある環境に自分がいるとしたら、上記の2つのうちどちらの場合に残業の届出をするのでしょうか。

法定労働時間の枠を超えた時のみ届け出るのでしょうか。それとも、所定労働時間を超えた時も届出をするのでしょうか。

 

 

法定時間外労働のみ届け出るのか。それとも、所定時間外の残業も届け出るのか。

先に書いておくと、残業をするときに届出は必須ではありません。届出の手続きを設けずに残業は可能ですし、割増賃金の支払いも可能です。

届出の手続きが必要な会社では、法定労働時間を超えた時間のみを残業として扱っているところもあれば、所定労働時間を超えた時間も残業として扱っているところもあるはず。

ちなみに、法定労働時間は所定労働時間を包摂していますので、法定労働時間と所定労働時間の関係は、「法定労働時間 ≧ 所定労働時間」となります。ゆえに、所定労働時間を超えた時間を残業として扱っている場合は、必然的に法定労働時間を超えた時間も残業として扱っていると考えることができます。しかし、法定労働時間を超えた時間のみを残業として扱っている場合は、必ずしも所定労働時間を超えた時間を残業として扱っているとは限りません。

それゆえ、残業届の手続きも、2つに分かれるのではないでしょうか。私が以前に社員として経験したことがある届出手続きは、法定労働時間を超えても所定労働時間を超えても残業として扱うものでした。ただし、所定労働時間を超えているが、法定労働時間は超えていない場合には割増賃金は無しでした。

所定労働時間を超えた時間に対しても割増賃金を支払う会社がありますが、この点も2つに分かれますよね。法定労働時間を超えた時間に割増賃金を用意するパターンと、所定労働時間を超えた時間から割増賃金の支払い対象にするパターンです。


残業という点では同じであっても、届出手続きや割増賃金の扱いで違いがあるのですね。

 

 

残業は1つ、、じゃない。

「残業したら残業代が出る」そう思っている人は少なくないのでは?両者はセットだと考えられていますからね。

辞書では、残業は、「規定の勤務時間を過ぎてからも残って仕事をすること」と定義されています。規定の勤務時間、つまり決まった時間内で仕事が終わらなければ、それは残業だということですね。

規定の勤務時間、つまり勤務シフトで決めた時間を過ぎれば、それは確かに残業です。しかし、残業代、つまり割増賃金が伴う残業かどうかは別の問題です。

残業には2種類あります。

1つ目は、残業代が伴う残業。

2つ目は、残業代が伴わない残業。

残業すれば残業代が出ると理解していると、自分が思っていたものとは異なる結果に遭遇するかもしれません。ここでの残業代とは、法定時間外労働に対する割増賃金(25%増し)を意味します。

 

では、どうやって上記の2つを分けて把握するのか。ここが今回のポイントです。

 

 

法律上の残業は1つだけ。

残業代という名称はよく使われるものですが、正式には法定時間外労働に対する割増賃金と表現します。つまり、法律で決まった時間の枠を超えて仕事をすると、それは残業代が必要な残業になるのですね。

ちなみに、所定労働時間を超えて働いた場合は、割増賃金無しの基本部分の賃金だけが給与となります。

別の言い方をすると、法律で決まった時間の枠を超えずに残業したとしても、それは残業代(割増賃金)が必要な残業ではないというわけです。

ちなみに、法律で決まった時間の枠とは、1日に8時間、1周間で40時間(業種によっては44時間になる)です。

では、具体的に考えてみましょう。

14時から19時まで勤務する予定だったけれども、19時30分まで仕事をしたらどうなるか。休憩時間は無しと仮定します。

この場合、19時から19時30分までの30分間は残業です。しかし、この残業に残業代は付かないのです。

なぜならば、法律で決まった時間の枠である1日8時間を超えていないからです。勤務時間は5時間30分ですから。

19時までの予定が30分オーバーしたのですから、「残業」と表現したいところですが、法律的には残業ではないのですね。ちなみに、所定労働時間を超過していますから、その点では残業です。

もちろん、上記の状態を残業と表現することそのものはOKです。ただし、「割増賃金を伴わない残業」であるという点は知っておいてください。

 

次に、13時から22時まで勤務する予定が22時30分まで延びたらどうなるか。

この場合、22時から22時30分までの30分が残業です。では、残業代は付くのかどうか。

13時から22時までは9時間あります。この間に1時間の休憩があったと考えると、勤務時間は8時間です。もし、22時で仕事が終わっていれば、特に何も問題はありません。

22時から22時30分までの30分間。この時間は、法律の時間枠である8時間を超えていますから、残業代が必要な残業です。ゆえに、30分の残業に対しては残業代が付きます。

さらに今回の場合、22時を超えて仕事をしているので、深夜労働に対する割増賃金も必要です。法律では、22時から翌日の5時までは深夜時間と扱い、この時間に仕事をすると深夜割増が必要になります。

よって、今回の場合、30分の残業代(25%増)+30分の深夜割増(25%増)が必要になるわけです。22時から22時30分までの30分間は給与が50%割増になります。


会社によっては、深夜勤務のことを深夜残業と表現したり、早朝勤務を早出残業と表現することがあります。

深夜残業とか早出残業という名称を使うと、他の残業と同じなのかなと思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、この残業は他の残業とはちょっと違います。

通常の残業は、「規定の勤務時間を超える仕事」を意味します。一方、深夜残業とか早出残業は、「特定の時間帯に行われる仕事」を意味します。前者には時間を超過する点に特徴があり、後者には特定の時間帯に仕事をする点に特徴があります。

深夜残業と早出残業は、22時から翌日の5時までに勤務することを意味します。

深夜残業だと、22時から22時40分とか、22時30分から翌日1時20分など、これが深夜残業です。

一方、早出残業だと、3時から6時30分とか、4時30分から7時という時間帯で仕事をする場合がよくある例です。例えば、仕出し弁当を作る仕事とか、ホテルの仕事とか、スーパーマーケットの仕事だと早出残業があるかもしれませんね。

残業代が付く残業とそうでない残業。知ってしまえば何ということでもないのですが、キッチリと分けて理解しておきたいところです。


 

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