労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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やってはいけない 代休の代わりに有給休暇を充当して相殺

休日消滅

 

同じ休みであるという共通点があるが、代休と年次有給休暇は別物。

ご存知のように、法定休日に出勤して、後日に休みを取得することを代休といいます(事前に出勤日と休日を振り替えるものである振替休日とは別物)。

代休日はもちろん仕事がなくなり、休みになるわけですが、このとき、代休ではなく有給休暇を充当することで、代休を取得したことと同じにできるのかが疑問を抱くところです。

つまり、単純な休日ではなく、年次有給休暇を代休と入れ替えて利用することで、賃金付きの休日に変えることができるので都合がいいだろう、という意図ですね。

確かに、代休と年次有給休暇は「休みの日」という点では共通しています。それゆえ、代休であろうと有給休暇であろうと、どちらを利用しても差し支えないだろうと思えるわけです。休むだけならば。

しかし、そう簡単に処理ができるものでしょうか。パッと考えると、「あぁ、それでもいいんじゃないか」と思えてしまうのですが、どうでしょうか。



法定休日が消滅してしまう。

代休の休みと有給休暇の休みは違うものです。

休日労働の代わりに休みが発生するのが代休であり、休暇の取得権に基づいて休みが発生するのが有給休暇です。つまり、休日の発生根拠が違います。

休日を出勤日に変えて休日労働をしたわけですから、その潰れた休日を別の日に代休として取れるようにする。これが代休です。

一方、年次有給休暇は、年休を取得する前に、休日労働をする必要はありませんし、自分が望んだ日に有給休暇を取得できるものですから、休日が出勤日に変わってなくなってしまう、という前提がありません。

「確かに、休日が発生する根拠は違うかもしれないけれども、同じ休みの日なのだから代休を有給休暇に変えてもいいんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。休みという共通点に意識が向くと、どうしてもこのように思えてしまいますよね。

無給の代休よりも、年次有給休暇を使ったほうが本人も都合がいいだろう。こんな理由も考えられます。

代休の元をたどると、それは法定休日なのです。つまり、「代休=法定休日の日程が他の日に変わったもの」であって、実質的には代休は法定休日なのですね。それゆえ、もしそれを年次有給休暇に変えてしまうと、法定休日を消滅させる効果が発生する可能性があります。実質的に法定休日である代休を有給休暇に変えてしまうと、法定休日はどこにいってしまうのでしょうか。ここが問題の焦点です。

労務管理では、休日は2種類あり、法定休日と法定外休日、この2つがあります。法定休日に出勤してから、後日、休みを取るとなると、それは法定休日が代休に変わったと解釈できます。他方、法定外休日を出勤日に変えた場合は、後日、代休を取るとしても、その代休は法定休日の代わりではなく、法定外休日の代わりとなります。

1週間に少なくとも1日の休日を取らなければいけない。これが法律での法定休日なのですけれども、法定外休日を代休にして、年次有給休暇に変えてしまってもいいのかは微妙な判断が必要になります。

「同じ休みなのだから、代休も有給休暇も一緒だ」と考えてしまうと、処理の仕方によっては法定休日がどこかにいってしまうかもしれない。それゆえ、代休を有給休暇で代替してはいけないのですね。

 

法定外休日の代休に年次有給休暇を充当したらどうなる?

ただし、法定外休日を代休処理したときには、代休に有給休暇を充当する可能性はあるかもしれません。この点は上で少し書きました。

本来は、「代休=法定休日に勤務した代わりの休日」なのですが、法定外休日を代休処理する場面もあり得ます。

例えば、土日が休日で、土曜日が法定外休日で、日曜日が法定休日として固定されているとしましょう。この場合、土曜日に出勤し後日に代休を取得した(日曜日は通常通り休日だったと仮定)とすると、この代休は法定休日ではありませんね(土曜日の代わりですから)。

それゆえ、この代休を有給休暇に切り替えたとしても法定休日は消滅しない。この手順ならば、代休を有給休暇に変える可能性があり得るかもしれない。

使用者と労働者がお互いに合意の上で、法定外休日の代わりである代休を年次有給休暇に変えたとなると、これは当事者間の契約の範囲内ですから、法律で禁止するところではなく、このような形の代休ならば、年次有給休暇に振り替えるという道はあり得ます。

ただし、使用者と労働者がきちんと合意していることが前提ですし、代休も法定休日の代休ではなく法定外休日の代休であるという前提が必要です。

どの休日が法定休日で、どの休日は法定外休日なのか。これをキチンと区別して認識している人が職場にどれぐらいいるのか、という別の問題もありますね。

しかし、雇用契約や就業規則で、1週間に休みの日は2日あると決めていたとしたら。土曜日が休日ではなく年次有給休暇に入れ替わると、休日が週に1日になってしまい、雇用契約や就業規則と違う対応になってしまいます。

法定外休日は、休日でも出勤日でも構わない日であって、休日にすることもできるし、勤務日にすることもできます(雇用契約や就業規則で決めておく必要あり)。法的には週1日の休日があれば足りるので、それを超える休日を設けるかどうかは事業所次第です。週休2日でもいいし、隔週で週休2日でもいい。さらには、週休1日でも構わないのです。

ただし、事前に「土曜日、日曜日は休日」というように就業規則や雇用契約にてあらかじめ休日である日を決めているとすると、法定外休日であっても、それを勤務日に変えてしまうわけにはいかない。

先程の例だと、本来、休日である土曜日を出勤日に変えたならば、なくなってしまった休日を別の形で補填しなければいけないのです。

代休は代休。有給休暇は有給休暇。それぞれキチンと区別して取り扱うのが良いですね。妙な仕掛けを作ると、思わぬ副作用が発生することもありますので、注意が必要です。



山口正博 社会保険労務士事務所
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