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メールマガジン 本では読めない労務管理の"ミソ"
山口社会保険労務士事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━ (2011/7/20号 no.266)━
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振替休日と代休は1つにすると分かりやすい。
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■代休と振替休日はそっくり。同じものを違うと言うから混乱する。
学校の運動会は、秋の日曜日に開催されることが多い。月で言うと、9月が多いと思う。日曜日に運動会があるので、その日は休みにならないが、翌日の月曜日が代休になる。
運動会の翌日は代休として扱われることが多いが、これを振替休日として扱っても差し支えないはず。学校の先生が生徒に向かって、「は~い。次の日曜日は運動会です。次の日の月曜日が代休でおやすみになりま~す」という感じで説明すると思う。この説明を、「は~い。次の日曜日は運動会です。次の日の月曜日が振替休日でおやすみになりま~す」と説明しても何の違和感もない。
休日に、学校のイベントや仕事をして、休みが無くなって別の日に休みを変更するときには、代休という名称を使ってもいいし、振替休日という名称を使ってもいい。一般的には両者は同じものとして扱われているからです。「代休と振替休日の違い? どっちも一緒でしょ? 言い方が違うだけで」と考えるのですね。つまり、代休と振替休日は実質的に同じものとして通用している。
ところが、労働基準法では、代休と振替休日は互いに違うものとして取り扱う。勤務日と休みの日を交換するという点は同じなのに、違うものとして扱わなければいけない。
辞書では、振替休日は「1,祝祭日が日曜日と重なったとき、その翌日を休日とすること。2,休日に出勤や登校した場合など、他の日を代わりに休日とすること」と定義され、代休は「日曜や祭日などの休日に出勤した代わりにとる休暇」と定義されている。
振替休日の定義の2番と代休の定義を読み比べると、内容は同じですよね。
ということは、「代休と振替休日の違い? どっちも一緒でしょ? 言い方が違うだけで」という判断が正しいのです。内容は同じですからね。
しかし、労務管理では、代休と振替休日を同じものとして扱うとダメだと判断されるわけです。代休には割増賃金が必要であり、振替休日には予め勤務日と休日を振り替えるという処理が必要なので、両者は違うのだと理屈をこねるのです。
上記のように、一般的な感覚と労働基準法の感覚にズレがあるために、人の混乱を招くのですね。
■代休と振替休日は同じものと感じる。しかし労働基準法的には違うもの。
なぜ、代休と振替休日の取り扱いを分けたのかという点が疑問です。
素直に考えれば、代休と振替休日は言葉が違うだけで中身は一緒なのですから、取り扱いを変える必要は無いはずです。振替休日と代休は同じものとして一般には認知されているにもかかわらず、なぜあえて両者を分ける必要があったのか。ここが謎です。
もしかして、「休日割増手当が必要な場合」と「必要ではない場合」を分けたいという要望が産業界(経団連など)からあったのではないだろうか。休日に勤務すれば必ず割増賃金が必要というのでは不都合なので、割増賃金が不要な休日勤務を可能にしたい。そこで、「振替」という仕組みを用いたのかもしれない。
つまり、振替休日は、代休と実質は同じなのに、休日割増賃金を回避するために考えられた方便なのではないか。もしそうならば、随分と狡猾な仕組みですよね。
「休日と勤務日を交換しているだけだから、休日勤務ではない」と振替休日を支持する理屈がありますが、これには無理がある。この理屈は、「代休も同じように、休日と勤務日を交換しているじゃないか」と反論されます。
本来は休日であるべき日に仕事をしたのだから、素直に休日勤務として扱えばいいものの、振替という仕組みを持ち出して休日勤務を回避する意図が分かりかねます。
「振替休日=代休」と考えるのが素直なのですから、あえて「振替休日≠代休」と考えずに、振替休日か代休に一本化すれば分かりやすい。
■代休を使わず、振替休日に集約する。
筆者は、代休と振替休日はどちらかに一本化するのが良いと思います。
2つの仕組みを併存させると、「振替休日=代休」という感覚と「振替休日≠代休」という感覚のズレが続くはず。
振替休日を使うとなると、休日と勤務日を"事前に振り替える"必要がありますが、事前に振り替えるといっても、どの程度事前であれば事前と判断するための基準がありません。1日前でいいのか、30分前でもいいのか、3日前まででないといけないのか。「事前に」という言葉だけでは事前の程度が分かりませんからね。
また、振替後の休日はいつまでに取得するのかという点も基準がなく不明です。振替勤務日から何日後までに振替後の休日を取得すればいいのか。1週間以内か、1ヶ月以内か、給与の締め日まで(ちなみに、この立場だと、締め日の直前に振り替え勤務をすると、振り替える余裕がなくなるという欠点がある)か、3ヶ月以内か。
代休のような振替休日を使って煙幕を張る会社もあるかもしれない。実際は代休なのに振替休日として扱ってしまう場面を想定するといい。
上記を踏まえると、振替休日を消滅させてメニューを代休だけに絞るのが妥当です。
休日の勤務は全て代休として名称を一本化。振替休日よりも名称が浸透している点も都合がいい。休日の割増賃金は支給しても支給しなくてもどちらでもいい。支給するなら支給する、支給しないなら支給しないと決めてしまうとブレないだろう。
もちろん、代休ではなく振替休日に一本化してもいい。2つを併存させるのがダメなのであって、どちらか1つに収束すれば目的は達成できる。フワフワしたグレーゾーンを取り除くのがキモです。
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