あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

社会保険料が割高? 給与が変動しても社会保険料が変動しないワケ

社会保険

 

 

収入が変わるのに保険料が変わらない疑問

多くの方は給与や賞与から社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金)や労働保険料(雇用保険)が支払われているかと思います。給与明細を見れば、各項目について記載があるはず。人によっては雇用保険だけの方もいるでしょうし、中には保険は何も無し(!?)という方もいるかもしれない。

公的保険の保険料を毎月支払っていると、ちょっとした疑問を抱くこともあるかもしれない。その疑問の中の1つとして、「毎月の給与は変動するのに、なぜ社会保険料は変動しないのだろうか」という疑問があるかと思います。

社会保険料は、ザックリと、健康保険と介護保険と厚生年金の3つから構成されます。そして、それぞれに保険料が個別に設定されています。ならば、「毎月の給与に保険料率を掛けて保険料を計算すればいいのではないか」と思えるはず。しかし、実際には毎月の給与に保険料率を掛けて社会保険料は計算されません。

社会保険料は、毎年7月に決定し、その決定した保険料率がそのまま1年間適用されます。詳しく言えば、7月に標準報酬月額(給与の平均額のようなものと考えてください)というものを決定し、その標準報酬月額に保険料率を掛けて保険料決めます。コンパクトに書くと、「保険料=標準報酬月額×保険料率」となります。ちなみに、雇用保険料は毎月の給与に応じて計算されます。この点は、社会保険と雇用保険の違いですね。


そこで、「給与が変動するのになぜ社会保険料は変動しないのか?」という点が問題となります。

保険料率は設定されているのだから、毎月計算できるはずだと思うのが普通ですから、あえて1年間も保険料を固定する必要はないだろうと思うはず。

 

 

毎月計算するか、1年に1回だけ計算するかの違い

なぜ1年間も保険料を固定するのか。それは、制度の収支を予測し、安定させるためです。

1年間にわたって保険料を固定すれば、1年間の収入総額が分かります。

例えば、厚生年金では、37万円から39.5万円の間の給与の人は、毎月30,510円(本人分のみ)の保険料を支払う。1年間で計算すれば、30,510円×12ヶ月=366,120円となる。ゆえに、この人から1年間に支払われる保険料の総額は、366,120円です。

一方、厚生年金の給付も固定的です。老齢厚生年金は偶数月に年6回の頻度で支給される。また、その給付額がコロコロ変わることはなく、安定的に年金は支給されています。

給付を安定させるには、収入も安定させなければいけない。ならば、保険料も1年間固定する必要があるわけです。もし、年金の給付額が変動しても良いならば、保険料も変動させることができます。しかし、実際には給付を固定しているので、保険料も固定せざるを得ないのです。また、社会保険料は金額が大きいため、給与を変動させて社会保険料を調整されると制度側に都合が悪いという理由もあるかもしれない。

健康保険は厚生年金ほど固定的に給付がなされているわけではありませんが、限りなく固定的と考えるのが妥当かもしれない。高齢者は3日に1回ぐらいの頻度で病院に行く人がいるし、病院をカフェのような感覚で訪問しているのではないかと思える人もいる。一般の人でも、歯の治療や風邪の治療のために、4ヶ月に1回ぐらいは病院に行くのではないでしょうか。健康保険が適用される範囲も広がり、マッサージにまで保険が使える状況ですから、保険支出はかなりのものだと予想できます。また、入院しながら治療する人もいるでしょうから、保険支出は限りなく固定的と考えるべきかもしれない。

それゆえ、健康保険の保険料も、1年に1回決定した後は、そのまま1年間固定されるのです。

保険料を固定すれば、1年分の保険料収入が見通せる。この点が制度運営者にとって都合が良いのかもしれません。

 

一方、雇用保険は、支出が固定的ではなく、また黒字化しやすいためか、保険料を固定していない。労働保険も社会保険と同じように毎年7月に保険料の精算作業を行うので、保険料を固定しようと思えば固定できるはずですが現在は固定していません。

雇用保険における大きな保険支払いは失業の時の基本手当です。他には、教育訓練給付などもあるが、額は大きくない。さらに、教育訓練給付制度は、以前は有利な仕組みでしたが、ここ数年で随分と使いにくくなりました。他には、助成金による支出もありますが、これも固定的に支出されるものではなく、支給条件に合致した時のみの支出です。

雇用保険の保険料は固定されておらず低額ですが、それでも広く浅く集めるので、総額では結構な額になるはず。フルタイム社員だけでなく、パートタイム社員の多くも雇用保険には加入しているので、加入者の裾野が広い。それゆえ、加入者に負担感を感じさせにくく、かつ、たくさんの保険料を集めることができる。さらに、保険料が固定されていないといっても、給与が変動しなければ、雇用保険料も実質的に固定されてきます。給与が毎月大きく変動する人は多数ではないかと思いますので、雇用保険料も現実には固定的と言っていいかもしれない。

キャッシュフローがプラスになりやすいならば、あえて保険料を固定して収支の予測をする必要はないはずです。


「給付が固定的ならば、収入も固定的にしなければいけない。一方、給付が変動的ならば、収入も変動的で構わない」と理解しておくと分りやすいですね。

 

 

月の途中で入社したら社会保険料は日割り計算になるのか

例えば、給与計算の期間が、毎月21日から翌月の20日までの1か月間だとして、5月10日に入社したとしたら、その人の社会保険料はいくらになるのか。

給料計算する期間が当月21日から翌月の20日だから、10日に入社したとすると、給与の締め日までの期間は11日です。

本来なら、給与の計算期間は1ヶ月あるわけですが、10日に入社すると計算期間が11日と少なくなります。となると、「社会保険料は日割り計算すると1/3ぐらいかな」と考えてしまうところです。

携帯電話の料金など、月の途中で契約した場合は、契約月の料金が日割りになることもありますから、月の途中で入社した場合は社会保険料も日割りになるんじゃないか、と思ってしまいますよね。

ですが、社会保険料は、入社した月に被保険者資格を取得したと扱われますので、仮に5月10日に入社したとすると、5月から社会保険に加入している状態になります。さらに、最初の社会保険料は、翌月の6月から支払うことになります。

5月の社会保険料は日割りで1/3になる、ということはなくて、被保険者資格を取得した時に決定される標準報酬月額に基づいて社会保険料は算出されますから、月の途中で加入したからといって、社会保険料がその月だけ安くなる、ということはないのです。

仮に、社会保険料率は30%だとして、標準報酬月額が50万円と決まった場合は、社会保険料は15万円。これを会社と従業員本人の間で折半して支払います。

入社した月である5月の社会保険料は15万円ですし(支払うのは6月です)、翌月6月以降の社会保険料も15万円となります。

ゆえに、入社して給料の締め日まで日数が少なかったとしても、社会保険料は日割りになることはないのですね。

 

あやめ社労士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
i@growthwk.com
お問い合わせはこちらから

自動音声メッセージによるお問い合わせもできます。
電話(050-7114-7306)をかけると音声メッセージを録音するように切り替わります。
お問い合わせの内容を電話でお伝えください。
内容を確認させていただき折り返しご連絡させていただきます。

© あやめ社労士事務所
登録番号:T3810687585061
本ウェブサイトは、アフィリエイトによるプロモーション、広告を掲載しております。