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国民年金 運用3号という話題 保険料がタダで年金に入れる人たち
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ニュースも新聞も分かりやすく説明していない
2011年3月の第2週頃だったか、国民年金の「運用3号」というものがニュースや新聞で話題になった。Yahooのトップニュースでも掲載されたし、報道番組でも言及され、さらに新聞にも掲載された話題です。3月11日の地震によって、運用3号の話題はご破算になったような雰囲気ですが、ニュースや新聞から消えたとしても、国民年金の運用過程で運用3号という処理が行われていたという事実は変わりませんので、ここで採り上げたいと思います。
ただ、「運用3号」というキーワードが出てきて、すぐに理解できた人はさほど多くないだろうと思います。「国民年金で運用? 年金資金のことか?」と思ったり、「3号ということは、2号や1号もあるのかな?」と思う人もいたはず。さらには、新聞をキチンと読み込んでも、ニュースをしっかりと聞いても、どうも仕組みがわからなかったのではないでしょうか。ただでさえ難しいと思い込まれている年金の仕組みですから、「3号」などといういかにも厄介そうな概念が登場すると、途端に「こりゃあダメだ、、」と感じる人もいるかもしれない。
今回のメルマガでは、この運用3号の仕組みと効果について書きます。もちろん、「年金=難しい」という先入観があるはずなので、なるべく専門用語を回避しながら進めるつもりです。
しかしながら、運用3号について理解するには、まず国民年金の加入者の種別を理解する必要があります。1号、2号、3号という種別です。
上記の3つの種別をシンプルに定義すると、
3号被保険者(以下、3号)とは、配偶者に扶養されている専業主婦(専業主夫もOK)のことを意味します。また、国民年金の掛金を負担せずに国民年金を受け取ることが可能な種別です。
2号被保険者(以下、2号)とは、会社で健康保険や厚生年金に加入している人を意味します。また、国民年金の掛金は厚生年金の保険料の一部から支払われています。
1号被保険者(以下、1号)とは、3号と2号以外の人を意味します(例えば、学生や自営業、パートタイムで働く一部の人など)。この人達は、個別に国民年金の掛金を納付しています。また、人によっては免除手続きをしている人もいますね。
「おいおい、いきなり専門用語じゃないの、、、」と思うかもしれませんが、どうしても必要な理解ですのでご了承ください。
なお、今回の話の中心になるのは、3号と1号です。
なぜ運用3号という仕組みが必要なの?
ズバリ、運用3号はどんな仕組みなのかというと、「3号から1号に切り替えるべき時に、やるべき手続きを忘れてしまい、その結果、国民年金の加入記録が欠落してしまう人が発生するので、その人達を救済するため」の仕組みです。
具体的には、専業主婦(or専業主夫)として掛金を納めずに国民年金に加入してきた3号の人がいて、配偶者である夫や妻が会社を辞めて2号ではなくなったときには、3号の人は手続きを行って1号に切り替えないといけないわけです。ところが、加入者本人の知識不足もしくは行政サイドからの周知が不足していたために、未手続きになってしまった人がいるのですね。その結果、3号から1号へ切り替えるべきとき以降の期間が国民年金の未納期間になってしまうわけです。
ちなみに、国民年金の掛金を納付する時効は2年であり、2年よりも古い期間に遡って掛金を納付することが現在では出来ません(なお、国会で審議されている「年金確保支援法案」が成立すれば、10年まで遡って加入者の任意で納付することが可能になるようです)。
ということは、知らずに未手続き(3号から1号への切り替え手続きのこと)になっている人が、7年や12年経過した後で、必要な手続きを行っていなかったために国民年金の加入期間が欠落していると知るわけです。ところが、遡って納付できるのは2年までであって、2年よりも古い期間は手が付けられなくなるわけです。ここが問題の発端です。
おそらく、加入者は「年金の手続きは役所でキチンと処理してくれているだろう」と思い込んでいたり、「夫や妻が会社を辞めても、専業主婦(or専業主夫)である自分自身の加入者種別(1号、2号、3号という種別)は変わらないだろう」と考え、何も手続きしないで放置してしまうのでしょうね。これは故意に放置したのではなく、何もしなくてもいいだろうという思い込みが原因です。
確かに、「公的保険の手続きは会社や市町村役場でキチンと手続きを半ば自動的にやってくれるだろう」と考えるのは無理のないことかもしれない。税金の計算も、会社任せにして源泉徴収と年末調整で処理しているし、健康保険や厚生年金の手続きも会社任せです。そのため、どうしても加入者の社会インフラに対する知識が深まらないわけです。
所得税の計算方法(4で割ったり、2.8を掛けたりと奇々怪々な計算をする)を知らない人は多いでしょうし、標準報酬月額と報酬月額の違いを知らない人も多いはず。
「他者にお任せ」という意識が定着しているために、一般人の公的制度へのリテラシーが低くなってしまうのですね。
おそらく、現段階で運用3号に関する最も詳しい資料は、【「運用3号」 職員向け「Q&A」集 (第2版)】だと思います。厚生労働省のウェブサイトでpdfファイルでアップされています(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011je9-att/2r98520000011jid.pdf)。なお、ファイルが今後消去される可能性があるので、こちら(http://goo.gl/2iA6V)にもアップロードしておきます。このファイルの内容を参照しながら後の話を進めます。
新聞やニュースでは、運用3号の仕組みをキチンと説明しないで、厚生労働大臣の辞任について焦点が絞られています。運用3号の何が問題なのかを教えてくれないのですね。運用3号はどんな仕組みで、どんな効果があって、何が物議を醸しているのかを説明しているニュースや新聞は私の知る限りではありません。
朝日新聞、2011年3月8日(火曜日)朝刊1面の記事では、読者が誤解するような記述があります。
「厚労相問責 野党が検討」という1面記事でしたが、その1面記事の本文第1段落からおかしな記述があります。
紙面では、
「サラリーマン世帯の専業主婦は、夫が脱サラなどで退職すれば国民年金に切り替えて保険料を払わねばならない(本文の第1段落より引用)」
と書かれています。
しかし、上記には誤解を招くような書き方がされている箇所があります。
それは、「国民年金に切り替えて」という部分です。この部分の何がおかしいのかというと、専業主婦はすでに国民年金そのものには加入しているのであって、国民年金に切り替える余地はないのです。「国民年金以外の何らかの年金に加入していて、夫が脱サラすると、国民年金に切り替わる」という話の筋ならば正しいのですが、「国民年金以外の何らかの年金」というものは存在しない。
よって、「国民年金に切り替えて」の部分を、「3号被保険者から1号被保険者に国民年金の種別を切り替えて」と書き直すと正確になります。「国民年金に」切り替えるのではなく、「国民年金の種別を」切り替えるわけです。おそらく、多くの人は、「国民年金に切り替えて」の部分を読んでも意味がわからなかったと思う。
話を本筋に戻すと、運用3号の何が人の興味をかきたてるのか。
最大の問題点は、「手続きをキチンと行って3号から1号へ切り替えた人」と「手続きを忘れて3号から1号への切り替えをしていなかった人」との扱いが同じになってしまうという点にあります。
つまり、「手続きをキチンと行って3号から1号へ切り替えた人」は、切り替え後は国民年金の掛金を自ら納付してきたわけです。しかし、「手続きを忘れて3号から1号への切り替えをしていなかった人」は、自分はまだ3号のままだと思い、掛金を納付してこなかったのですね。
となると、前者の人はキチンと年金を受け取れますが、後者の人は年金が減るかもしれないし、さらには、いわゆる「25年条件」を満たせないので年金そのものを受け取れないかもしれないわけです。ちょっと手続きを忘れただけで、結果が大きく異なるのですね。
そのため、手続きを忘れた人を運用3号という仕組みでもって、ずっと3号の身分だった(掛金を納付していないけど、納付したとして扱う)とするわけです。
そこで、「手続きをキチンと行って3号から1号へ切り替えた人」と「手続きを忘れて3号から1号への切り替えをしていなかった人」との間で不公平(掛金を納付した人と納付しなかった人が同じ扱いになってしまう)が発生します。ここが物議を醸しているのですね。
「なぜ、手続きをキチンと行い掛金も納付してきた人と手続きを忘れて掛金を納付してこなかった人が同じ結果になるの?」というのが運用3号の最大の問題点です。つまり、キチンと手続きを行った人よりも過失者が優遇されているわけです。さらに、運用3号では、2年で時効になった期間よりもさらに古い期間まで3号の身分で処理しています。本来ならば、時効で消滅する期間まで救済しているのですね。
上記のような問題があるものの、運用3号の処理は実際に行われたわけです。では、なぜ不公平が発生することを分かっていながら、運用3号の処理を実行したのか。不公平が発生してでも実行する理由があったのか。ここが疑問を抱くところです。
厚生労働省の中の人は、運用3号を利用すると、「不公平が発生する」、「法律に根拠がない取り扱いを行っている(時効消滅する期間を救済している)」、「憲法85条の"国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする"という部分に違反するかもしれない」、という点は事前に想定していたはずです。この程度のことを知らないということはまずあり得ません。ということは、今回のようなクレームが出ると分かっているけれども、どうしても実行しなければいけないという理由があったはずです。では、その理由は何なのか。
厚生労働大臣が運用3号を知らなかったことが問題の核心ではありません。大臣は知識がない人が着任することが多いでしょうし、国会議員であって専属の担当者ではありませんからね。財務大臣だからといって、財務に精通している人が着任するとは限らないし、法務大臣だからといって、法務に精通している人が着任するとは限らないのと同じです。乗数効果を知らなくても財務大臣にはなれるのです。
厚生労働大臣が辞任するかどうかではなく、なぜ運用3号という扱いが必要だったのかを知るべきでしょう。メディアは大臣が辞任するネタのほうが都合がいいのかもしれないが、情報を受け取っている我々からすれば、大臣が辞任しようとしまいとあまり興味はないはず。総理大臣や国務大臣がポンポンと辞任するのは日本の得意技であり、我々も慣れましたからね。
「運用3号」ではなく「運用1号」が妥当だった
運用3号の最大の問題点は、手続きを忘れた人が、加入期間のみならず掛金の納付まで救済されている点にあります。運用3号で救済される人は1号被保険者なので(ただ、厚生労働省の解釈では、手続きモレの期間は1号期間ではなく3号期間として扱われているようだ)、もし救済するならば加入期間のみ救済するのが妥当なところです。にもかかわらず、掛金の納付まで救済されてしまった点にクレームが出るわけです。
国民年金の加入期間のみを救済する、言わば「運用1号」のような扱いにとどめておけば良かったのではないかと思います。この処理ならば、憲法85条が問題になることもなさそうですし、キチンと手続きをした人とのバランスも取りやすかったのではないでしょうか。もちろん、この点は、厚生労働省の中の人も想定していて、選択肢として検討したのでしょうが、法律に根拠がないことを理由に見送っています(【「運用3号」 職員向け「Q&A」集 (第2版)】のQ6で説明されています)。
確かに、法律上の根拠は無いのかもしれませんが、今回の運用3号も同じように法律上の根拠は無いはずです。時効で法的処理ができないはずの期間まで救済しているのですから、法律上の根拠がないという点では運用3号も運用1号も同じです。
国民年金の3号被保険者の扱いは以前から物議を醸していて、もともと公平な仕組みではないという指摘もあります。3号被保険者は、掛金を納付していないのに納付したとして扱われるのですから、1号被保険者や2号被保険者の立場から考えると釈然としないかもしれない。ただ、専業主婦(or専業主夫)は思うように仕事ができないので、3号被保険者としてフォローするのがいいだろうという判断にも合理性はある。
国民年金の3号被保険者は健康保険の被扶養者ともほぼ連動している仕組みなので、国民年金の側だけでなく、健康保険の側でも足並みを揃えないと、仕組みが変わりにくいのかもしれない。さらには、税制の配偶者控除も絡んできて、国民年金、健康保険、税制の3つがリンクしてお互いがお互いの仕組みを支えているような構図ではないかと思います。
メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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┃それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
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