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無期雇用の意味 なぜ雇用契約で期間の定めをしないのか

無期雇用




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なぜ雇用契約は期間の定めをしないのか。
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雇用契約は無期限が普通なの?

一般に、契約(雇用契約に限定せず、契約一般を意味するものとします)を締結する際には、契約書を作成するのが通例です。契約書無しの契約もありますが、何かを買うとき、借りるとき、貸すとき、転貸するとき、譲るときなど、契約の内容を書面に落とし込みます。

契約の中身には、契約日、契約当事者(甲乙などで表記される)、契約期間、契約内容、その他の特約事項を記載しますよね。さらに、同じものを2通作って、契約当事者双方がその書面を保持するわけです。

契約の一種である雇用契約も契約という名称が付いており、一般の契約と同じように取り扱うことが可能です。契約日や契約期間、勤務する場所、勤務時間、賃金や休暇について決めるわけですが、今回はこの中でも「契約期間」が問題の焦点です。

ほとんどの契約では、契約期間を設定するのでしょうが、雇用契約はちょっと特殊な性質があって、契約期間を設けずに契約を締結することがよくあります。もちろん、契約は締結する当事者がその内容を自由に決めることができるので、法律に違反するとか、信義則や公序良俗に反する内容を除き、どのような内容であれ構わないわけです。

しかし、どのような内容であっても良いと言っても、契約期間を設定しないのは不都合ではないでしょうか。契約には日付があって、期限もあるのが普通です。しかし、雇用契約には期限を設けないのが普通になっている。契約期間が定まっていないということは、原則として永続的にその契約は有効になると考えるべきです。しかし、人間には寿命があるのですから、永続的に有効である雇用契約は本当に必要でしょうか。


この雇用契約の永続性が、企業と社員間の権利の均衡を崩しているのではないがというのが今回の考えどころです。




永続する雇用契約はあり得る?

期間を定めない雇用契約は、一般に「期間の定めのない雇用契約」と呼ばれます。パートタイム社員や契約社員、もしくは期間雇用社員だと、契約には期間を設定しているかと思いますが、フルタイム社員になるとなぜか契約期間を設定せずに雇用契約を締結することが多くなります。

では、なぜフルタイム社員の場合は契約期間を定めない雇用契約が締結されるのか。おそらく、理由は1つに限定されないはずです。

まず考えられる理由は、辞めることを想定してフルタイム社員を雇用しないからという点。パートタイム社員は入れ替わりの頻度が高いけれども、フルタイム社員は定年に達するか、余程の不祥事を起こさない限り退職することはありません。中には転職する人もいますが、今いる環境に満足していないという場合や自分で商売をしてみたいという場合でない限り起こらないことと考えてもいい。よって、企業も社員も辞めることを見越して契約を締結しないので、契約期間を設定しないのですね。

以前、新卒で損害保険会社に入社した人が「3年働いてどうするか考える」と言っていたのですが、その人はそのままその職場で仕事を続けています。3年経過した時点で何かを考えたのかどうかは定かではありませんが、人は居心地の良さを感じると職場を変えないのではないかと私は思っています。保険会社ですから、収入も相応の水準でしょうし、大手企業ですので休暇もキチンと取得できるでしょうから、あえて辞めなくてもいいだろうと判断したのかもしれない。

他の理由を考えると、退職金と企業年金の存在があるためという理由があります。つまり、退職金や確定給付型の企業年金を人質に使って、社員が辞めるコストを引き上げて退職しにくい環境を企業が作り上げているということ。退職金や確定給付タイプの企業年金には支給条件が設定されているはずで、入社後3年以内に退職すると支給なしになることがあります。退職金規約や企業年金規約に記載されていると思いますが、3年以内の早期退職者は退職金や企業年金がゼロになる可能性が高いです。

また、勤続年数が短いと支給額が極端に少なく、勤続年数が20年や25年を超え始めると急に支給額が増え始めるような仕組みになっていることも多いです。つまり、20年から25年ぐらいの勤続年数から逓増的に支給額が上昇し、一方で、勤続年数10年や15年ぐらいまではほとんど支給カーブが上昇しない構造になっているわけです。つまり、年功的な支給構造にしておくことで、若年者の離職を阻むように仕組まれているのですね。そのため、フルタイム社員を雇用する際には契約期間を設定しないのですね。

本来、退職金や企業年金はポータブルな性質を持つのが望ましく、企業の責任で支払う仕組みだと、企業の経営が行き詰まったり、清算したり、法的に再生する場面になると、デフォルトが起こります。会社が倒産すると退職金は支給されませんからね。そのため、例えば建設会社だと、建設業退職金共済という共済制度を普段から利用して、毎月数千円もしくは数万円を外部に積み立てて、会社が清算したとしても退職金が保全されるようにリスクヘッジしているところもありますね。他にも、中小企業退職金共済などもあり、企業から退職金を分離する手段が用意されています。

日本航空もOBの企業年金を減額するべく手続きを進めて、喧々諤々の交渉がなされニュースで報道され、新聞や雑誌にまで記事になりました。日本航空の企業年金は確定給付タイプのもので、日本航空が支給内容に責任を負う仕組みでした。そのため、会社の運営が上手くいっているときは満足な結果を得ることが可能なのですが、環境が逆になると企業にとっても社員にとっても満足しにくい結果になってしまいます。企業が責任を負わない確定拠出タイプの企業年金ならば、上記のような交渉も必要なかったのでしょうが、まさか日本航空の経営が行き詰まるとは考えていなかったのかもしれません。


さらに他の理由を考えると、単に設定すべき契約期間が分からないので、契約期間を設定せずに雇用契約を締結しているという可能性もあります。小規模な会社だと、契約書を作らずに雇用契約を締結することが多く、口頭だけで契約手続きが完了しています。フルタイム社員であれ、パートタイム社員であれ、契約書無し、契約期間も無しで雇用されているわけです。


契約期間を設定せずに雇用契約を締結すれば、暗に「終身で雇用する」とのメッセージを送ることが可能のなので、企業にとっては人材を集めやすく、社員にとってはある種の安心感を得るので、双方にとって都合が良いと考えることも可能です。しかし、社員にとって良いとしても、企業にとっては必ずしも良いとは言い切れないはず。







すべての労働者は契約社員に

契約期間を設定しないということは、契約を終わらせる意思がないと考えても不思議ではないでしょう。しかし、期間無しで雇用したからといって、ずっとその人を雇用し続けるのは不都合なときもあります。時には、雇用契約の内容を見直したいときもあれば、やむを得ず解雇したい時もあります。そんな時、期間の定めのない雇用契約を締結していたらどうするのか。

一度、契約期間無しの契約を締結したら、その内容を当事者は保持することが可能です。そこで、会社側が契約内容を変更したいとか、契約を解除したいと申し出たとき、社員の立場ならばどう反応するか。

以前締結した期間無しの雇用契約には、契約を見直すことは書かれていないし、契約の解除方法についても書かれていないとすれば、企業はどうやって契約の変更や解除を実行するのでしょう。ここが契約期間を設定しない契約の欠点なのですね。

もちろん、民法の雇用規定や労働基準法の解雇予告手続きなどを使えばある程度の対処は可能ですが、社員側としては雇用契約には期間が設定されていないのだから、その契約内容をある種の既得権として考えるはずです。


人はいつか死にますので、永久に雇用されることは不可能です。そのため、雇用契約も無期限ではなく有期限で締結するのが妥当なのですね。

私は、すべての労働者は契約社員になるべきと考えています。

契約期間を設定しないと、雇用契約の内容を変更したり、契約を解除する余地が企業に無くなります。そのため、契約期間をキチンと設定して、企業側に更新するかどうかを審査させるチャンスを与えるべきなのです。

「契約期間を設定しない=実質的に終身雇用」になるのはおかしいのであり、企業が雇用契約を審査する権利を奪っているのではないでしょうか。

契約期間を設定するとなると、「雇い止め」が問題になりますが、雇い止めそのものは普通のイベントです。世間的には、雇用契約を更新しないことが全て雇い止めであると認知されており、契約を更新しなければどんな理由があっても雇い止めと言われてしまうわけです。

しかし、「更新しない=雇い止め」と判断されてしまうと、では何のために雇用契約の期間を設定したのか分からなくなります。期限が到来すれば更新するか更新しないかのどちらかの結果になることは想定できるはずで、当たり前に更新されるとは限りません。

当然に更新されると期待に織り込むのではなく、企業にも契約を見直す余地を残すべきでしょう。一度雇用したら解雇できないというのでは、企業と社員間の関係に均衡を欠くのではないかと思います。

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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