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■■┃ メールマガジン 本では読めない労務管理の"ミソ"
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更衣を勤務時間に含む含まないの基準は曖昧
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着替える時間にも給与が出る?
勤務時間の処理は徐々に厳格になっていて、以前は30分単位で取り扱っていたものが15分単位になり、10分単位、5分単位、1分単位へとより細かい単位で勤務時間を把握するのが今のトレンドです。
以前は30分単位で勤務時間を管理しても差し支えなかったのに、何時からか30分単位で管理するのはダメになってしまった。何のきっかけで変わったのか不明ですが、行政通達や判例で勤務時間の管理単位をより細かくする方針へと変わったのでしょうね。
ただ、30分単位がNGになっても、15分単位はOKになっていて、なぜ1分単位に収束してしまわないのかと不思議ですが、色々と事情があるのかもしれない。時間の管理に幅を設けるからトラブルになるのであって、1分単位に限定してしまえば、時間の端数を切捨てて問題になることもないはず。27秒を切り捨てたとか9秒を切り捨てたと主張する人はおそらくいないでしょうからね。
時間の管理単位が細かくなるに従うように、始業時の更衣時間と終業時の更衣時間を勤務時間に含めるべきか否かが議論されるようになりました。
更衣と一言に言っても仕事に応じて、安全靴を履いたり、コックシューズを履いたり、帽子を被ったり、エプロンを付けたり、高所からの落下防止のための安全具を装着したり、作業服を着たりと、多種多様です。
更衣は、始業時と終業時に行うのがおそらく一般的で、所要時間は5分程度ではないかと思います。始業時に5分、終業時に5分ですので、更衣時間は1日で10分ですね。
この更衣時間を賃金の算定根拠となる勤務時間に含めるべき立場と含めない立場で考えが分かれています。
更衣時間は勤務時間に含めるべきか。更衣時間は勤務時間に含むべきではないか。それとも、勤務時間に含まれる更衣と含まれない更衣で分けるのか。
どの立場が最も現実的なのか。この点が今回の焦点です。
更衣時間と労働時間を分けるならば基準が必要
まず先に、「どの立場が正しいか」という点で判断すると、どの立場も正しいと言うべきところです。
仕事を行うにあたり、更衣は必要でしょうし、着替えなければできない仕事もあるでしょうから更衣は義務だとも考えられます。私服を着て飲食店で接客するわけにはいかないでしょうし、ジーンズにトレーナーを着てガソリンスタンドでサービスをするわけにもいかないはず。また、着替えは会社の施設内で行われているから仕事と同視できるという判断も可能かもしれない。
上記のように考えを構成すれば、更衣は勤務時間に含むと結論できますよね。
一方で、着替えは、必要だろうし一種の義務とも考えられないこともないけれども、実質的には仕事ではありません。必要な手続きなのかもしれないが、仕事そのものではないという判断です。あくまで、仕事が主であり、着替えは従であって、両者は別のものなのですね。また、もし更衣を勤務時間に含めるとなると、1日8時間着替えだけしていれば仕事として成立してしまうと考えることも可能といえば可能です。これは不都合でしょう。
このように考えれば、更衣時間は勤務時間に含まれないと結論できます。
片方が確実に正しく、もう片方が確実に正しくないとは言い切れないのです。
さらに別の立場として、更衣が勤務時間に含まれる人と含まれない人を分ける考えもあります。判例や実務でもこの立場を採用することがあるようです。事務服やエプロンを着る程度ならば勤務時間に含まず、安全具の装着などは含むと考えるようです。
確かに、簡単な制服ならば勤務時間に含まず、作業着や安全具の装着ならば勤務時間に含むとの考えはさも合理的であると思いがちです。しかし、この両者をキッチリ分けることが実務的に可能なのかというと容易ではないと思います。
エプロンを付ける人も、安全靴を履く人も、作業着を着る人も、事務服を着る人も、更衣という点では同じです。コックシューズを履く時間は勤務時間に含まないけれども、安全靴を履く時間は勤務時間に含むという判断が本当に妥当なのでしょうか。おそらく、コックシューズでも安全靴でも、履くための所要時間はさほど変わらないのではないでしょうか。安全靴の方がベルトとか紐のようなオプションが多いかもしれませんが、履く際の時間差は数十秒程度ではないかと想像します。わずかこの程度の違いで、勤務時間に含むか含まないかを分けることに意味があるのかどうか。
エプロンと作業服でも同じでしょう。作業服が特別に着るのに難儀するわけではないですし、むしろ作業着は着てファスナーを上げるだけ(簡易な作業着を想定)なので、エプロンの紐を結ぶよりも所要時間は短いかもしれない。
この人の更衣は勤務時間に含まれますが、この人の更衣は勤務含まれませんとしてしまうと、「なぜ私の着替えは勤務時間に含まれないんですか?」と質問されるでしょう。この質問にあなたはキチンと答えられるでしょうか。おそらく、相手を納得させるほどの説明はできないはずです。感情的に「そういうものなんだ」と無理に納得させるのが限界だろうと思います。
更衣時間の扱いを人ごとに変えてしまうと、分ける基準を説明できないので袋小路に入ってしまうわけです。
労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間で、労働時間ならば賃金が出ます。更衣時間を労働時間と考えるならば、使用者の指揮命令下に置かれている時間になり、もし1分で着替えるように業務命令されたら、それに従わないといけなくなります。
着替えるのが早い方はそれでもいいのでしょうけれども、ゆっくり着替えたい人だと時間が足りなくなります。
着替える間は指揮命令下に置かれていない方が従業員にとっては都合が良いのではないかと。
着替える時間が労働時間になるか延々と議論されるワケ
更衣時間の取り扱いは、「全て含む」か「全て含まない」のどちらかです。
扱いを分けるのは合理的なように思えるが、分ける基準を説明できないので、必ず行き止まりに突き当たってしまう。
実務では、更衣時間を勤務時間に全く含まない会社があるし、全て含む会社もあります。
含まないならば、始業時は更衣が完了してから勤務打刻を行い、終業時は着替えをする前に勤務打刻を行います。一方、含むならば、始業時は更衣する前に勤務打刻を行い、終業時は更衣した後に勤務打刻を行います。
何でも同じですが、分けるには基準が必要です。例えば、卵の大きさをMS,S,M,L,LLに分けるには、重量の基準があるでしょう。マクドナルドのフライドポテトのサイズをS,M,Lに分けるときも重量の基準を使っているはず。未成年と成人を分けるにも基準があるし、暑いと寒いを分けるにも基準がある。
もし、基準を設定できないならば、分けるのはおそらく無理なのでしょうね。
更衣時間の取り扱いについては、裁判官も本気で判断する気はないのではないかと思います。着替える時間を勤務時間に含めても含めなくても、結果にさしたる変わりはないだろうと考えるのはマトモな判断です。
1日で5分×2で10分。
21日勤務だと、1ヶ月で10分×21日ですから210分ですよね。つまり、1ヶ月で3時間30分の更衣時間です。
これを「この程度」と考えるか、「こんなにも」と考えるかで違うかもしれないが、「誤差」として考えてしまうほうが楽だと思う。「誤差なんてとんでもない。パートタイム社員ならば3時間30分の賃金が失われているんだから、この程度と看過するわけにはいかない」と思う人もいるかもしれない。
確かに、上記のような思いもあるでしょうが、更衣時間を勤務時間に含むかどうかという話しは、不毛な議論ですし、話半分の話題とも考えられるし、本気にならない方がマトモではないかと思います。
知識のある人には、誤差として考えることをさも大きな問題であるかのように議論する傾向も稀にあって、「なぜそのような小さなことを大きな話題にするのか」と思うこともあります。人によっては、「全てがキチンとしていなければいけない」という価値観を持っているかもしれないが、細かなことを誤差として受け入れる価値観も必要ではないでしょうか。
今回も、メルマガ「本では読めない労務管理の"ミソ"」を
お読みいただき、ありがとうございます。
次回もお楽しみに。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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