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所定時間外の勤務(残業)は事前に決めていないとダメ?

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所定時間外の勤務は事前に決めていないとダメ?
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残業するか事前に決めているか

組織で働くことになると、「所定労働時間」という概念があって、「この時間からこの時間までの何時間が勤務時間です」と決めているのですね。これは「法定労働時間」という概念とは別に扱われているもので、法定労働時間は法律で決めたものであり、一方、所定労働時間は会社ごとに決めたものです。この所定労働時間の枠内で仕事をするのが雇用契約というわけです。

しかし、時には事前に決めた所定労働時間を超えて働くこともあるはず。例えば、1日4時間と契約しているところを、4時間30分とか5時間45分まで延長する時があるでしょう。その場合、就業規則や雇用契約書で事前に決めていないと所定外勤務ができないのかどうかが今回のテーマです。つまり、「なお、所定労働時間を超えて勤務することがある」などのような文言を就業規則や雇用契約書に含めている必要があるのかどうかが焦点です。

事前に決めていないと所定労働時間を超えることはできないのか、それとも事前に決めていなくても所定労働時間を超えて勤務することは可能なのか。

ちなみに、法定労働時間を超える場合は36協定で対応しているので、超えたときはどうするかは問題になりません。しかし、所定労働時間を超えたときはどうするかについては特に決めていないので問題となります。

残業するかどうかを予め決めるのは難しいときも

「所定労働時間は会社が独自に決める概念である」という点については先ほど書きましたよね。ということは、所定労働時間を短く設定しても、長く設定しても構わないわけです。5時間に設定してもいいし、7時間に設定してもいい。さらには、9時間とか10時間という所定労働時間の設定も可能ではあります。ただし、8時間を超えて所定労働時間を設定する場合は、36協定の手続きと時間外手当の支払いをキチンと行っているという前提が必要です。とは言っても、8時間を超えて所定労働時間を設定する会社はほとんどないでしょうね。意味のある設定ではありませんので。

会社が独自に決めることができるならば、その決めた所定労働時間のラインを超える場合も会社ごとに決めていいということになりますよね。当然ですが、8時間を超えたら会社ごとにというわけにはいきません。しかし、8時間以下の範囲内で、所定労働時間を超えることがあっても、法的に何らかの制約があるわけではありません。労働基準法でも、ルールを決めているのは法定労働時間であって所定労働時間は対象外です。

ならば、所定労働時間を超えるときは事前に就業規則や雇用契約書で決めるというルールでもいいし、所定労働時間を超える場合になったときに話し合いで決めるというのでもいいわけです。法定労働時間は当事者がコントロールできない(フレックスタイムや変形労働時間制である程度は制御できる)のですが、所定労働時間はコントロール可能なのですね。

労務管理で利用するルールは就業規則や雇用契約書に落としこんで運用するのが本来あるべき状態ですが、細大漏らさずに文書化するのは現実的ではないでしょう。あらゆることを雇用契約書や就業規則、労働協約で決めるのはそう簡単ではなく、現場では想定していないことが起こるもので、そのような場面まで想定して規定を整備するとなると時間や労力を多く費やしてしまいます。そのため、ある程度まで文書化し、文書化した範囲を超える部分はその都度当事者間で話し合って解決するというのが妥当な線です。

今回の所定労働時間を超える場面でも、予め想定して就業規則や雇用契約書に盛り込んでいる会社もあるかもしれませんが、規定整備に余り時間を配分できないところだと対応していないかもしれない。


もし、規定に書いていないことを実施するときは、当事者の合意で対処し、その段階で臨時に決めることも可能です。理想は、事前に規程類に決めておくべきなのでしょうが、現実にはどうしてもモレが出てくるので、その部分は当事者の合意で対応するのが実務です。

そのため、「事前に決めていないことはできない」というわけではなく、「決めていないことは話し合いで合意する」わけです。

法律のように国会の審議を経て処理しなければダメなものもありますが、所定労働時間の取り扱いは企業内で決める事柄ですので、法律のように厳格ではありません。

文書で記録を残す労務管理

文書規定がなくても労務管理は可能です。しかし、文書規定なしだとコストが高いので、企業は労務管理のルールを文書化するわけです。

もし文書に基づく規定がなければ、坂本さんに説明したことを安藤さんにも説明する、浜田さんにも説明する。須藤さんにも、立川さんにも、、、(続く)。このように、同じことを繰り返さなければいけない。文書なしでルールを運用するとこんな事態になりかねない。

例えるならば、飲食店でマニュアル無しで調理している場合と同じ。作るたびに味が変わり、盛り付けが変わる。甘い時があれば塩辛い時もある。分量が多いときがあれば少ない時もある。こんな飲食店も個人的にはいいと思いますが、商売としてはあまり好ましくないはず。

人は仕事を楽にするために文書を使っているのですね。事務作業の負担を軽くするため、調理作業を楽にするため、情報伝達を楽にするため。ちなみに、メールも文書であって、電話と違い記録が簡単で便利です。電話の録音設備(留守電機能ではなく、通話内容を記録する装置。逆探知装置のようなもの)を持っている人は少ないでしょうが、メールを記録する機能はおそらく誰でも持っているはず。携帯電話のメールはサーバーに自動的に蓄積されるし、PCのメールも同様です。

また、文書の規定は「予見可能性を高める」とも言えます。「どんな場合にどのように処理するのか」が事前に分かりやすいので、先が読めるわけです。一方で、口頭で規定を話していると形が残らないので、将来的にどんな処理がされるのかが想像しにくくなります。

道路標識を考えれば分かりやすいかもしれない。どういう道順で進めばいいのかを示すのが道路標識で、「名古屋126km」とか「京都49km」のような標識があるのでドライバーは運転しやすいのですね。しかし、道路標識がもしなかったら、おそらく運転に不便な環境になってしまうはず。

駅の案内表示も同じで、利用者が便利に移動できるように存在するのであって、利用者を邪魔するために存在するわけではないのですね。

労務管理のルールも、経営者や働く人を邪魔するために存在するわけではなく、利便性を高めるために存在しているわけです。

労務管理というと、「締め付けている」というイメージがあるけれども、それは使い方を間違っているのであって、規程類は人を締め付けるためにあるのではなく、煩雑さから解放するためにあります。

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