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解雇する基準の厳しさよりも不明朗さが厄介
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どのような条件を満たせば解雇できるのか
労務管理で起こる問題で最も多いものの1つが解雇です。
解雇するときはトラブルが付きものと言っても言い過ぎではないぐらい問題が起こるようです。また、トラブルのパターンはどれも似ていて、解雇されたものの、その解雇が納得のいくものではなかったというパターン。解雇予告機関なしで解雇、解雇予告手当なしで解雇という場合もありますが、予告期間や予告手当を用意していても解雇のトラブルは起こり得ます。労基法の手順を踏まえていても、解雇した理由が曖昧であると、その点からトラブルに繋がるというパターン。
解雇で最も躓くのは、労基法の手順で解雇手続きを進めたものの、解雇の理由に納得しないという点でトラブルになったときです。法的にはキチンと処理したが、法律以外の部分で解決に至れないときにどうするかが当事者(企業、社員)の悩みになります。
企業は、「キチンと理由がある解雇だし、手続きも正しい」と主張する。一方で、社員側は、「解雇する理由に納得できないので無効だ」と主張する。
手続きの条件を満たすのはさほど難しいことではありません。解雇予告期間を設けるか、解雇予告手当を用意するかという点がコアの部分ですから、法律の内容通りに手続きを進めれば差し支えないところ。
しかし、解雇に対して「十分な理由を提示する」のは手続きほど容易ではありません。
どんな条件を満たせば解雇が有効なのかが客観的に定まっていないので、理由の十分さはどうしても相対的に判断せざるを得なくなります。ササッと理由を説明するだけで解雇を完了できる場面もあるでしょうし、その程度の説明では解雇手続きを進められないこともある。企業文化によっても解雇の難度は変わります。人の入れ替わりがそれなりに起こる職場でしたら解雇は受け入れられやすいでしょうし、逆に、ほとんど退職する人や解雇される人がいない職場だと解雇は受け入れられにくいでしょう。
例えば、外資系投資銀行で解雇を実行する場合と日本航空で解雇を実行する場合では、やはり違いがあるでしょうね。
100%OKな整理解雇はない
1本の筋道で固定されていないのが解雇の厄介なところですし、良いところでもあります。
客観的に解雇の手順を決めてしまえば、いわゆる予見可能性が向上しますし、曖昧な手順で手続きが進められることも少なくなるでしょう。しかし、調整の余地が少なくなってしまうのが難点です。もし、手順が厳格だと、企業は人材を雇用することに消極的になるかもしれませんし、必要な手順を満たせない場合は解雇できなくなります。解雇の理由は多様ですから、予め手順を決められてしまうと、解雇したい場面でも実行できないことがあるかもしれません。
一方、解雇の手順を客観的に定めなければ、人材の採用はしやすくなります。どうしてもという時には解雇可能という選択肢を残しておけば、経営側も雇用の調整が用意になりますので、人材採用に積極的になるでしょう。ただ、解雇の手順が定まっていないと、どうも納得しにくい手続きで解雇が実行されたり、不明朗な理由で仕事を辞めなければいけなくなる人も出てくる可能性があります。
整理解雇について話すときによく挙げられるのが「整理解雇の4要件」という基準で、回避義務や配置転換の可能性など4つの要件が過去の解雇事案の判例で示されたので、その要件を抜き出して整理解雇の4要件と通称で呼ばれています。
ただ、この4要件も万能ではなく、要件に事案を当てはめるときにどうしても主観が入り込むのが欠点です。もちろん、法律には主観的判断が付きものですから、主観が入り込む点を欠点と言ってしまうのは酷かもしれません。しかし、この主観判断が解雇の実行を難しくしていることは確かです。例えば、配置転換の可能性を検討するとき、どの程度検討したのかによって結論が変わります。簡単に検討しただけなのか、それとも検討に検討を重ねて考えたけれども、どうしても配置転換で対応できそうにないという水準まで検討したのか。このようなことは第三者には把握しにくいわけです。
さらには、4要件といってもこれだけで整理解雇を審査するわけではなく、いわゆる総合的判断というか複合的要因に基づいて判断するのが実務であり、この点がさらに解雇の実現を不透明なものにしています。どんな要因がどれほどのウェートでもって評価されるのかという相場が形成されていないので、企業、個人、専門家、裁判官それぞれで判断が異なってしうわけです。どの判断も正解であり、同時に、どの判断も不正解であるという言わば哲学の問題を考えているような状況です。
確実に言えることは、「必ずOKになる整理解雇はない」ということです。
感覚的に分かるかと思いますが、法的整理を実行している(or 実行した)企業だと整理解雇は認められやすいでしょう。日本航空、武富士、ウィルコム、リーマンブラザーズ、GMなど(この中には整理解雇を実行していない企業も含まれるかもしれません)。株主や債権者、経営者が責任を取っているので、社員も責任をという流れは発生しやすいのではないかと思います。
2010年11月頃だったか、日本航空で整理解雇の対象になったキャビンアテンダント社員たちが整理解雇が無効であると提訴予定であると新聞に書かれていました。回避しようとすれば回避できる整理解雇なので無効を主張するとのこと。
ただ、提訴する気持ちも分かるのですが、もし整理解雇が無効になったらどうするのでしょうか。そのまま会社で仕事を続けるのか。一度解雇の対象になっているにも関わらず居続けるわけですから、居づらいのではないかと想像できます。
マトモな大人ならば、解雇を無効化させて会社に居続けると、その人がどんな立場になるか分かるはず。AERAという雑誌で書かれていた内容では、解雇の対象になっているパイロットには空白の勤務スケジュールを渡していたとのこと。これと同じように、キャビンアテンダントにも白紙の乗務スケジュールを渡すのではないでしょうか。例えるならば、何もすることがなく部屋に閉じ込められるのと同じような状況ではないかと思います。
法律や判例による基準で解雇の可否を審査するのも大切ですが、それだけでは解決したくても解決できない状況があるかもしれません。
例えば、解雇予告手当を3ヶ月分とか6ヶ月分用意すれば、整理解雇を認めるのも良い方法であろうと思います。解雇はお金で解決するのが最もいい方法なのかもしれない。「お金の問題じゃない」と言う人もいますが、お金の問題にすれば精神的な悩みを軽減できるはず。
感情が絡みやすい問題ほどお金の問題にすべきなのです。感情をベースに問題を解決しようとすると、時間的負担も精神的負担も大きいので、金銭補償で解雇に対する制約を緩和したいところ。金銭と感情を組み合わせながら解決するのが解雇問題を早く解決する道であろうと思います。
解雇するための制約が厳しいのではなく、基準が不明朗な点が問題
日経新聞の朝刊(2010年11月30日火曜日)で、確か専修大学の労働経済が専門の先生が経済教室のページ(日経新聞には「経済教室」というコラムページがある)で、整理解雇について書いていた。そこでは、解雇の制約が厳しいかどうかについて書いており、思ったほどは厳しくないとの内容でした。日本と他国を比較して、日本の解雇規制はさほど厳しくないと指摘されていたと記憶しています。
しかし、整理解雇で焦点になるのは、「制約の厳しさ」というよりも、「制約の不明朗さ」ではないかと思います。整理解雇の4要件を検討すると、基準が厳しいというよりも、基準に主観が入り込む余地があり、実務上での運用が不明朗になるのが焦点であろうと思います。その不明朗さゆえに基準が厳しいかのように錯覚してしまっているのではないでしょうか。
もし手順がキチンと決まっていれば、制約が厳しくとも差し支えないでしょう。その手順で手続きを進めれば良いのですからね。
ただ、この基準を満たせば大丈夫という基準を作ることはおそらく無理なのかもしれない。
あえて「遊びの部分」をあえて残しておく方が企業にとっても社員にとっても都合がいいのかもしれない。
解雇の基準をギッチリと決めると、企業は雇用にたいしてネガティブになるし、応募者は採用されにくくなる。ゆえに、最後まで交渉できる余地を残すために、雇用に関するルールをあえて厳格にしていないのかもしれませんね。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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