健康な人ほど負担で健康でない人ほど軽い
ご存知のように、健康保険は、大きく分けて「毎月の固定保険料」と「利用時の費用」の2本立てで収入を得ています。毎月の保険料は基本は一定で1年間は変動しません(随時改定などによる変動を除く)。一方、利用時の費用は利用したときのみ発生するものであって、医療機関を利用しなければ発生しません。
ただ、健康保険の費用負担の仕組みにはちょっと不都合なところがあって、健康な人もそうでない人も負担は同じです。さらには、加入条件も緩やかで、持病や疾病の既往歴を考慮せずに制度に加入することが可能です。また、毎月の保険料も収入に応じて自動的に決まる仕組みになっており、利用者側で保険プランを設計することは不要ですし、プランを選択することも不要です。
問題の焦点は、健康な人もそうでない人も同じ扱いになっているという点です。本来、保険制度は、利用者の状況に応じて対応を変えるものです。例えば、医療保険だと健康な人ほど優遇され、そうでない人は通常待遇というのが通常です。自動車保険でも、ゴールド免許の人と青色免許の人では取り扱いが変わりますよね。
ならば、健康保険でも、保険らしく、健康な人とそうでない人で対応を分けるのが妥当と思えるわけです。
健康な人へのインセンティブを用意する
「健康保険は、健康な人を犠牲にして成り立つ制度」というのではあまりに皮肉です。「若い人や健康な人から高齢者や病気がちな人への所得移転だ」と指摘されてしまうこともありますよね。なぜ健康な人とそうでない人で負担が同じなのか。どうして健康な人には「ご褒美」がないのだろうか。これでは、「健康であることはいけないことなのか?」とも思えてしまうのではないか。
健康を促進するのは健康保険制度の目的の1つに含まれているはずです。ならば、より健康的に生活することを奨励するインセンティブを組み込んでいてもいいですよね。
先ほど書いたように、健康保険の費用は「基礎保険料」と「利用時費用」の2つで構成されていますが、この費用を利用実績に連動して変動させるようにすれば健康な人へご褒美を用意できると思います。
ただ、利用時費用は高額療養費制度があるので、ある程度以上の負担になるとフラットになります。そのため、利用実績に応じて負担割合を3割から引き下げたり、もしくは引き上げたりしても効果はさほどではないかもしれない。そのため、利用実績に連動させて変動するのは基礎保険料の部分になる。
自動車保険と同じ仕組みで、健康な人はゴールド免許を持っている場合と同じよいうに扱い、何らかのインセンティブがあっていいはず。医療保険でも健康な人には無事故ボーナスがありますからね。
もちろん、健康保険制度は公的な保険制度なので、生命保険会社の医療保険と同じような仕組みでは都合が悪いのかもしれないけれども、やはり健康な人へのインセンティブは必要だと思う。
そこで、利用額と利用頻度でマトリックス テーブルを作り、そのテーブルに加入者の利用実績を当てはめて基礎保険料を決めます。基礎保険料のマトリックス テーブルと利用時負担割合のマトリックス テーブルの2つを作ってもいいかもしれない。
ゆうパックや宅急便では、大きさと重さで料金を決めますよね。配送サービスでは、大きさと重さのマトリックス表があるので、荷物の3辺の長さと重さを測定し、その表に当てはめて送料を決定するわけです。これと同じように、利用額と利用頻度で健康保険の費用負担を決めると良いと思います。
絶対額で調整するか、パーセンテージで調整するかという問題もありますが、基礎保険料は絶対額で調整し、負担割合はパーセンテージで調整する(3割を2割に、3割を5割に、など)のがいいかもしれない。
公的な健康保険であっても、健康な人にご褒美を用意するのは有用なことではないでしょうか。