休憩を分けて取っても実質は同じだけれども、雇用契約と実態が異なる
ある会社で、10:00から15:00までの勤務で、12:00-13:00までは1時間の昼休憩があるという前提で働く人がいるとします。実質的な勤務時間は4時間で、休憩が1時間というわけです。
さらに、雇用契約では、週5日勤務で勤務時間は10:00から15:00と決めています。また、休憩時間は12:00から13:00の1時間です。
上記の条件で働く人がもし自分の都合で休憩時間を1時間から30分に短縮したらどうなるでしょうか。ここでは、休憩時間が30分短縮されるので、終業時刻も30分早めるという狙いがあるのですね。
また、勤務時間帯は10:00から15:00と契約で決めていますが、この時間帯を14:30から19:30という時間帯に変更したらどうか。実質的には4時間に変わりないのだから、どの時間帯に働いても良いだろうと考えているのですね。
そこで、契約では勤務時間も休憩時間も事前に決めているものの、自己の都合でそれらの時間を変更してしまうのは良いのかどうかが問題となります。
契約と実態は一致させることに意味がある
まず、休憩時間を1時間から30分に短縮する点を考えると、勤務時間が4時間で休憩時間が30分ですから、労働基準法(以下、労基法)的には問題ありません。
労基法34条では、6時間の勤務で45分、8時間の勤務で1時間の休憩が設定されています。4時間勤務の場合の休憩時間は設定されていないですが、この場合は休憩時間があってもなくても差し支えないわけです。そのため、4時間の勤務時間で1時間の休憩時間の設定は可能ですし、30分の休憩時間でも可能です。
ただ、法律上は問題がないからといって、契約上も問題がないとは限りません。
もし、1時間休憩すると決めているにも拘らず、自己の判断で30分に切り上げて、終業時刻も30分早めることを自己の判断で行うと、雇用契約違反や服務命令違反と判断される可能性もあります。ただ、30分の調整を行うことを会社側が了承していた場合は、契約違反や命令違反にはならないでしょう。契約の内容をキチンと履行するかどうかは当事者間の私的自治の範囲ですからね。
次に、勤務時間帯を変更した場合はどうか。この場合も、休憩時間と同じで、本人の判断だけで行うと違反扱いですが、会社側が了承していた場合は差し支えないです。
ただ、会社側の了承があったとしても、雇用契約の内容と実態が相違していますので、この点は修正するのが良いです。
雇用契約はその内容通りに履行されることで効果を発揮しますので、契約内容と実態が乖離してしまっては契約の意味がありません。一致させないならば、雇用契約は不要ですからね。
もちろん、雇用契約は「絶対に契約通りに履行しなければダメ!」というほど柔軟性に欠けるものではなく、一時的な契約時間外の勤務程度ならば許しているのが実際です。だからといって、契約と実態がずれてもよいというわけでなく、可能な限り契約と実態は一致させるようにしないと、契約を締結した意味が薄れてしまいますからね。