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■休業手当の濫用を防止したい◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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弾力的に所定労働時間を設定したらOKか。
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■何でも休業になっちゃう状況。
数回前のメルマガではキムチ工場の例を出して、休業について考えました。キムチの価格が高騰してキムチを生産できなくなって、そのために社員を休ませても休業になってしまうのが現実で、何とも経営者にとってはツライ仕組みなのですね。
仕事に基づいて賃金を払わせているのではなく、雇用契約書に基づいて賃金を払わせているのが休業手当制度です。
組織に属して働く人は、雇用契約で約束した時間を確実に仕事のために確保しておかなければいけないのだから、他の予定を入れることができないわけです。例えば、平日の10時から17時までが勤務時間だとすると、平日の10時から17時は仕事以外の予定を入れることができないのですね。「水曜日の11時から15時まではディズニーランドへ行く」というような予定を立てることはできません(休暇を取得しているならば別)。にもかかわらず、犠牲を払って時間を確保したのに仕事ができないとなると困るので、雇用契約で約束した時間内で休みになってしまった分は手当を用意して補償しなければいけないというのが休業手当制度の仕組みです。
ところがこの休業手当制度という仕組みはなかなか扱いにくいところがあって、「使用者の責任で休みになったときは手当を用意する」というのが休業手当制度ですが、この使用者の責任というのが曖昧で、どこまでが使用者の責任で、どこまでは使用者の責任ではないというように分けることがとても難しい仕組みなのです。
そのため、会社の判断で休みになれば、すべて休業という判断もなされてしまい、どうも休業手当制度が濫用されている傾向もある。店舗改装で休みにしても休業と判断されてしまうので、やはりちょっと行き過ぎなのですね。
休業すると利用できる中小企業緊急雇用安定助成金や雇用調整助成金が普及し、休業手当制度が知れ渡り、その仕組みも認知されてきているのだろうと思います。それゆえ、これは休業、それも休業、あれも休業と判断されがちなのかもしれない。
もし上記の助成金がなかったら、多くの企業では休業手当を支給せずに休ませていたのではないかと思うことがあります。
中小企業緊急雇用安定助成金の説明をすると、「仕事をしていないのになぜ賃金を支給するのか」という点を理解しにくい人も多いのですね。「休んでいるんだから、賃金も無いのでしょう?」というのは確かに一般的には正しいのですが、雇用契約が成立している関係ではこの判断は正しくないのです。
そこで、行き過ぎた休業判定をどうやって調整するかが今回の焦点です。つまり、会社の判断で休みにすれば休業と判断されるのは行き過ぎなので、なんとか休業判定の範囲を狭めることができないかを検討したいところ。ただ、休業判定の範囲を狭めるといっても、休業の余地が無くなってしまうほどに狭めてしまうのは、これまた行き過ぎですよね。
なるべく休業の範囲を限定しながら休業手当制度を運用できないかが今回の考えどころです。
■所定労働時間を固定しなければいいのでは。
私が長い間考えてきた解決策は、所定労働時間を弾力的に設定する方法です。
所定労働時間は、通常だと「1日8時間」とか「1日7時間30分」というようにキチンと限定して雇用契約が締結されます。また、就業規則でも同様に所定労働時間は何時間何分かを特定してるはず。そのため、事前に設定した所定労働時間の分だけ仕事を用意せずに休みにしてしまうと、その休んだ分は休業になってしまうわけです。
そこで、所定労働時間を事前に限定してしまうのではなく、例えば「所定労働時間は1日5時間から8時間の間で日ごとに設定する」というように雇用契約書や就業規則に決めておけば、繁閑の差に合わせて勤務時間を調整できると考えたのです。忙しいときは8時間、さらには時間外勤務で対処し、仕事が少ないときは5時間までの勤務で運用すれば、休業にはならないわけです。
仕事の内容に合わせることができるように、所定労働時間に弾力性を持たせておくのが狙いです。
所定労働時間を固定するから無理にその時間分だけ仕事を用意しなければいけないのであって、所定労働時間を流動的にしておけば無理無く仕事に合わせて勤務時間を調整できると言う算段ですね。
しかしながら、上記の仕組みには気になる点があります。
確かに、所定労働時間に弾力性を持たせておけば、仕事に合わせて労働時間を調整できるので、過剰に休業判定されることは回避できます。
しかし、所定労働時間に弾力性を持たせるといっても、どの程度までの弾力性ならばOKなのかが分からないのですね。
例えば、上記の例だと「所定労働時間は1日5時間から8時間の間で日ごとに設定する」でしたが、「所定労働時間は1日3時間から8時間の間で日ごとに設定する」ならばどうか。または、「所定労働時間は1日1時間から8時間の間で日ごとに設定する」というルールにしてしまってもいいのか。もっと極端な決め方だと「所定労働時間は1日8時間以下で日ごとに設定する」というルールならどうするのか。
ざっと4つのパターンを挙げてみましたが、全て選択可能な選択肢なのでしょうか。それとも、これはOKだけど、これはNGというように分けるのでしょうか。もし分けるとしたら、分ける基準は何か。
■所定労働時間に幅を設けるとしても、限度が無い。
弾力的に所定労働時間を設定すれば休業手当制度の濫用を防げるというのは妙案のようですが、「弾力性」の部分に限度なり基準がないので、こちらはこちらで濫用される可能性があるのですね。
「所定労働時間は1日5時間から8時間の間で日ごとに設定する」という程度ならば、まあ受け入れ可能な選択肢かもしれませんが、「所定労働時間は1日8時間以下で日ごとに設定する」という選択肢はさすがに行き過ぎです。これだと、所定労働時間がゼロでも休業にならないことになりますので、労働基準法26条(休業手当)を設けている意味がなくなります。
非雇用者は契約した勤務時間には他の予定を入れてはいけないという犠牲に対して休業手当制度が設けられているのですから、26条を無効化するほどの所定労働時間の弾力化はできないのです。
例えば、「所定労働時間には幅を設けることができる。ただし、所定労働時間の最小時間と最大時間の差は3時間まで」というように限度が設定されていれば理想ですが、今現在はそのようなルールはありません。
最小時間と最大時間の差をキチンと限定していれば、所定労働時間の弾力化も可能ですし、休業手当制度の濫用もある程度は防げるのではないかと私は考えています。
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