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定年無しから定年ありに契約を変更 これは不利益変更になる?

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■定年無しから定年ありに変更。これは不利益?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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何もないところに既得権があるのかどうか
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定年を設定したら不利益変更?

会社で働き、ある一定の年齢に達すると、「定年」という理由で解雇されます。何か解雇するべき理由があるわけではないが、一定の年齢に達したという理由で解雇されるわけです。

本来、解雇は、何か悪い出来事があって、それを理由に実施されるものですが、定年の場合は特に悪い理由が必要ではなく、一定の年齢という理由で解雇を実施できる。なお、定年は解雇ではなく「退職」と解釈されることもあり、定年解雇と定年退職の2つの表現がある。実質は同じものだが、表現が異なる。

定年制を実施する企業では、おそらく就業規則に定年の年齢が記載されているはずです。65歳か70歳が多いでしょうか。中には60歳に設定している企業もあるでしょうね(今はもう60歳の設定はできないのでしょうけれども)。

規模の大きな会社や規定類の整備された会社に入社するときは、すでに定年が設定されているでしょうが、創業間もない会社や極めて小規模な組織(社員数3人とか7人ぐらいのところ)だと、具体的に定年を設定していない場合もあります。

もちろん、定年を設定するかどうかは企業ごとの裁量ですから、定年を設定してもいいし、設定しないのもアリです。

ただ、長い間、定年無しで運営してきたけれども、これからは定年をキチンと設定しようと考えたとき、ちょっとしたトラブルが起こります。

今までは定年が無かったので、退職を考えずに働いていたが、これからは例えば65歳で終わりという設定にされると、働いている人の期待権というか既得権のようなものに影響が出る可能性があるのですね。

例えば、今現在ある会社で働いている67歳の人がいるとして、ここで就業規則に65歳の定年が設定されたら、この人はどうなるのでしょう。

すでに65歳以上に達しているから、直ちに定年退職になるのか。それとも、別の対応をするのか。67歳の人に65歳定年を設定するのはいわゆる不利益変更なのかどうか。

他方、65歳にまだ達していない人ならばどうか。例えば、54歳の人にとっては、65歳の定年を設定されても、今すぐに影響が出るわけではありませんよね。ただ、今までは定年が無かったので働けるだけ働けるだろうと考えていたものの、これからは65歳でストップになるわけです。これが不利益変更になるかどうかが問題です。

定年なしと終身雇用は違うもの

小規模な会社だと、就業規則がなく、雇用契約書だけで労使間の契約を完了しているところも多々あります。また、就業規則が無いほどの規模の会社ですから、雇用契約書も簡易なもので済ませているのではないかと思います。ひな形を使って、設定された空欄に必要事項を記入するだけでも雇用契約書は作成できますから、細かな設定はせずに契約は締結されるわけです。

雇用契約書には終業時間や賃金、休日という類いの項目はキチンと記載しているものの、定年についてまでは書いていないのではないでしょうか。おそらく、定年の内容は就業規則で決めるという一般的理解があるためか、契約書のひな形には定年の項目がないことが多いかもしれない。

ただ、定年について何も決めていないと、何歳になっても働けると思う人もいるようで、中には「定年が無い=終身雇用」と考えているフシもある。そのため、ある時点で、会社側が定年を設定すると、「それはいわゆる不利益変更ではないか」と考える人がいるわけです。今まで無かった制約ができたのだから、以前よりも待遇が悪くなったと考えるのでしょうね。

脱線しますが、終身雇用という言葉の辞書的な意味は、「企業などが、正規に雇用した労働者を、特別な場合以外は解雇しないで定年まで雇用すること。年功序列型賃金などとともに日本の雇用制度の特色とされる(大辞泉より)」と定義されています。終身雇用は日本の雇用制度の特徴らしい。これは本当でしょうか。規模の大きな会社に属しているならば終身で雇用されると考えてもよいのでしょうが、規模の大きくない会社で終身で雇用されると考えながら働いている人はそう多くないのではないか。ちなみに、日本の企業の約90%は中小企業で、そのような企業で終身雇用というわけにはいかないはず。終身雇用だけでなく、終身年金とか終身保険というように、終身という言葉がついたものがあるが、人間は必ず死にますので、終身など求めなくても良いのではと私は思います。

確かに、定年無しから定年有りに変わると、上限が無かった勤務可能期間に上限が設定されるのですから、不利益変更と考えるのも分かります。しかし、不利益変更というイベントが発生するためには、何らかの既得権が必要です。つまり、何らかの仕組みによって利益を得ている状況で制度が変更されることにより、その利益を失ってしまうというのが不利益変更です。

ここで、「定年が無い」という状況に既得権があるのかどうかが問題になりますよね。まず、定年が無いという状況とはどんな状況なのか。考えてみると、定年が無い状況というのは、何も無い状況と同じです。つまり、何もしなければ定年が無い状況を作り出せるわけです。

もし、定年無しという状況に既得権があるとすれば、会社が何もしなくても自然に既得権が発生してしまい、定年を設定するときにはその既得権が障害になってしまう。

つまり、不作為によって既得権が生み出されるのですね。

しかし、これでは定年を設定するだけにもかかわらず、随分と面倒です。初めて定年を設定する会社は全て定年設定のトラブルに遭遇することになりますので、これはヘンですよね。

過去の裁判で、定年が無いところに定年を設定してトラブルになった例がありました。その裁判では、55歳で定年(随分と昔の内容ですので55歳定年の設定も可能だったのでしょうね)というルールを設定したところ、その時点で既に55歳に達している社員が解雇されたという点が争点でした。

この判例では、会社側が勝ち、社員側が負けました。定年無しの状態から55歳定年に変わったために解雇されたのですが、定年無しの状況で既得権が発生する余地はないので、55歳定年という設定は認められると判断したのですね。なお、この会社では55歳定年を設定すると同時に、再雇用の特約も設けていたために、55歳定年を設定した段階で既に55歳に達してしまっている人へのフォローがあったという事情もあります。

特に、「定年無しの状況で既得権が発生する余地はない」という判断は妥当ですね。

雇用契約書で定年の条件をお知らせする

何もないところにルールを設けただけであって侵害されるような既得権はないと判断すれば、定年を新規に設定したとしても必ずトラブルになるわけではなくなります。やはり、何も無いところに既得権を発生させるのは不条理ですから。

ただ、先ほどの例のように、定年が設定されることで、ただちに定年解雇される人には既得権があるでしょうから、継続雇用や再雇用の特約を付け足すことでフォローするのが良い方策のようです。

もし、まだ就業規則が無ければ、雇用契約書にサラッとでもいいので、定年について書いておくといいかもしれない。例えば、「定年:65歳」と雇用契約書に書いているだけでもアナウンスする効果はありますから。今では定年まで働く人はそう多くないのかもしれませんので、さほど気にすることもないのでしょうけれども。

何も決めていないところに、ドカンと定年を設定すると、今回のようにトラブルになるのでしょうから、ちょこっとでいいので知らせる工夫があるといいのではないでしょうか。

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労務管理の問題を解決するコラム

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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