労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

2010/10/8【定年無しから定年ありに変更。これは不利益?】



┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■┃  メールマガジン 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃  山口社会保険労務士事務所 http://www.growthwk.com?ml=20101111_20100915
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2010/10/8号 no.228)━



「あの店は味が変わった」と言う人がいる。

昔から通っている飲食店に久しぶりに行ってみて、食事をすると、料理の味が変わったというのだ。

使っている材料が変わったのか、調理している人が変わったのか、調理方法が変わったのか、色々と理由を探したりするのがよくあるパターン。

しかし、「あの店の味が変わった」というとき、2通りの解釈が成り立つ。

店側の環境が変わったために味が変わったという場合と食事をした本人の味覚が変わったという場合だ。

前者に原因を求めることが多いのだが、後者に原因があることを検討しない人がいるのだ。

加齢などで自分の味覚が変わったために、感じる味も変わってしまっているのかもしれない。

若い頃はコッテリしたラーメンを美味しいと感じたが、今では美味しいと感じなかったり。以前は肉類が好きだったが、最近では野菜中心だとか。歳を取ってから豆腐と茄子がおいしいと感じるようになったとか。昔は聞こえた音が聞こえなくなった(加齢に伴い高音域の音が聞こえにくくなるそうな)とか。

何か感じ方が変わったなと思ったら、外部の環境が変わったのではなく、自分が変わったのかもしれないということを検討した方が良いのではと思った。







■定年無しから定年ありに変更。これは不利益?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■
何もないところに既得権があるのかどうか。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄






■定年を設定したら不利益変更?



会社で働き、ある一定の年齢に達すると、「定年」という理由で解雇されます。何か解雇するべき理由があるわけではないが、一定の年齢に達したという理由で解雇されるわけです。

本来、解雇は、何か悪い出来事があって、それを理由に実施されるものですが、定年の場合は特に悪い理由が必要ではなく、一定の年齢という理由で解雇を実施できる。なお、定年は解雇ではなく「退職」と解釈されることもあり、定年解雇と定年退職の2つの表現がある。実質は同じものだが、表現が異なる。

定年制を実施する企業では、おそらく就業規則に定年の年齢が記載されているはずです。65歳か70歳が多いでしょうか。中には60歳に設定している企業もあるでしょうね(今はもう60歳の設定はできないのでしょうけれども)。

規模の大きな会社や規定類の整備された会社に入社するときは、すでに定年が設定されているでしょうが、創業間もない会社や極めて小規模な組織(社員数3人とか7人ぐらいのところ)だと、具体的に定年を設定していない場合もあります。

もちろん、定年を設定するかどうかは企業ごとの裁量ですから、定年を設定してもいいし、設定しないのもアリです。

ただ、長い間、定年無しで運営してきたけれども、これからは定年をキチンと設定しようと考えたとき、ちょっとしたトラブルが起こります。

今までは定年が無かったので、退職を考えずに働いていたが、これからは例えば65歳で終わりという設定にされると、働いている人の期待権というか既得権のようなものに影響が出る可能性があるのですね。

例えば、今現在ある会社で働いている67歳の人がいるとして、ここで就業規則に65歳の定年が設定されたら、この人はどうなるのでしょう。

すでに65歳以上に達しているから、直ちに定年退職になるのか。それとも、別の対応をするのか。67歳の人に65歳定年を設定するのはいわゆる不利益変更なのかどうか。

他方、65歳にまだ達していない人ならばどうか。例えば、54歳の人にとっては、65歳の定年を設定されても、今すぐに影響が出るわけではありませんよね。ただ、今までは定年が無かったので働けるだけ働けるだろうと考えていたものの、これからは65歳でストップになるわけです。これが不利益変更になるかどうかが問題です。







■「定年なし=終身雇用」と考えるのはムリ。



小規模な会社だと、就業規則がなく、雇用契約書だけで労使間の契約を完了しているところも多々あります。また、就業規則が無いほどの規模の会社ですから、雇用契約書も簡易なもので済ませているのではないかと思います。ひな形を使って、設定された空欄に必要事項を記入するだけでも雇用契約書は作成できますから、細かな設定はせずに契約は締結されるわけです。

雇用契約書には終業時間や賃金、休日という類いの項目はキチンと記載しているものの、定年についてまでは書いていないのではないでしょうか。おそらく、定年の内容は就業規則で決めるという一般的理解があるためか、契約書のひな形には定年の項目がないことが多いかもしれない。

ただ、定年について何も決めていないと、何歳になっても働けると思う人もいるようで、中には「定年が無い=終身雇用」と考えているフシもある。そのため、ある時点で、会社側が定年を設定すると、「それはいわゆる不利益変更ではないか」と考える人がいるわけです。今まで無かった制約ができたのだから、以前よりも待遇が悪くなったと考えるのでしょうね。

脱線しますが、終身雇用という言葉の辞書的な意味は、「企業などが、正規に雇用した労働者を、特別な場合以外は解雇しないで定年まで雇用すること。年功序列型賃金などとともに日本の雇用制度の特色とされる(大辞泉より)」と定義されています。終身雇用は日本の雇用制度の特徴らしい。これは本当でしょうか。規模の大きな会社に属しているならば終身で雇用されると考えてもよいのでしょうが、規模の大きくない会社で終身で雇用されると考えながら働いている人はそう多くないのではないか。ちなみに、日本の企業の約90%は中小企業で、そのような企業で終身雇用というわけにはいかないはず。終身雇用だけでなく、終身年金とか終身保険というように、終身という言葉がついたものがあるが、人間は必ず死にますので、終身など求めなくても良いのではと私は思います。


確かに、定年無しから定年有りに変わると、上限が無かった勤務可能期間に上限が設定されるのですから、不利益変更と考えるのも分かります。しかし、不利益変更というイベントが発生するためには、何らかの既得権が必要です。つまり、何らかの仕組みによって利益を得ている状況で制度が変更されることにより、その利益を失ってしまうというのが不利益変更です。

ここで、「定年が無い」という状況に既得権があるのかどうかが問題になりますよね。まず、定年が無いという状況とはどんな状況なのか。考えてみると、定年が無い状況というのは、何も無い状況と同じです。つまり、何もしなければ定年が無い状況を作り出せるわけです。

もし、定年無しという状況に既得権があるとすれば、会社が何もしなくても自然に既得権が発生してしまい、定年を設定するときにはその既得権が障害になってしまう。

つまり、不作為によって既得権が生み出されるのですね。

しかし、これでは定年を設定するだけにもかかわらず、随分と面倒です。初めて定年を設定する会社は全て定年設定のトラブルに遭遇することになりますので、これはヘンですよね。

過去の裁判で、定年が無いところに定年を設定してトラブルになった例がありました。その裁判では、55歳で定年(随分と昔の内容ですので55歳定年の設定も可能だったのでしょうね)というルールを設定したところ、その時点で既に55歳に達している社員が解雇されたという点が争点でした。

この判例では、会社側が勝ち、社員側が負けました。定年無しの状態から55歳定年に変わったために解雇されたのですが、定年無しの状況で既得権が発生する余地はないので、55歳定年という設定は認められると判断したのですね。なお、この会社では55歳定年を設定すると同時に、再雇用の特約も設けていたために、55歳定年を設定した段階で既に55歳に達してしまっている人へのフォローがあったという事情もあります。

特に、「定年無しの状況で既得権が発生する余地はない」という判断は妥当ですね。








■雇用契約書で定年のアナウンス。



何もないところにルールを設けただけであって侵害されるような既得権はないと判断すれば、定年を新規に設定したとしても必ずトラブルになるわけではなくなります。やはり、何も無いところに既得権を発生させるのは不条理ですから。

ただ、先ほどの例のように、定年が設定されることで、ただちに定年解雇される人には既得権があるでしょうから、継続雇用や再雇用の特約を付け足すことでフォローするのが良い方策のようです。


もし、まだ就業規則が無ければ、雇用契約書にサラッとでもいいので、定年について書いておくといいかもしれない。例えば、「定年:65歳」と雇用契約書に書いているだけでもアナウンスする効果はありますから。今では定年まで働く人はそう多くないのかもしれませんので、さほど気にすることもないのでしょうけれども。

何も決めていないところに、ドカンと定年を設定すると、今回のようにトラブルになるのでしょうから、ちょこっとでいいので知らせる工夫があるといいのではないでしょうか。








今回も、メルマガ【本では読めない労務管理の「ミソ」】を
お読みいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。

労務管理のヒント

http://www.growthwk.com/entry/2014/04/07/135618?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_2

ニュース

http://www.growthwk.com/entry/2014/03/12/082406?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_3


┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ┃本では読めない労務管理の"ミソ"山口社会保険労務士事務所 発行
┣━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┃メルマガの配信先アドレスの変更は
http://www.growthwk.com/entry/2008/11/28/122853?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_4

┃メルマガのバックナンバーはこちら
http://www.growthwk.com/entry/2008/07/07/132329?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_5

┃メルマガの配信停止はこちらから
http://www.growthwk.com/entry/2008/06/18/104816?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_6


┣*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*

┃労務管理のヒント
http://www.growthwk.com/entry/2014/04/07/135618?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_7
┃仕事の現場で起こり得る労務の疑問を題材にしたコラムです。

┃ニュース
http://www.growthwk.com/entry/2014/03/12/082406?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_8
┃時事ニュースから労務管理に関連するテーマをピックアップし、解説やコメントをしています。

┃メニューがないお店。就業規則が無い会社。
http://www.growthwk.com/entry/2007/11/01/161540?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_9

┃山口社会保険労務士事務所 
http://www.growthwk.com?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_10

┃ブログ
http://blog.ymsro.com/?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_11

┃『残業管理のアメと罠』
┃毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、
┃月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、
┃平均して8時間勤務というわけにはいかない。
┃しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、
┃ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
┃それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
http://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_source=mailmagazine&utm_medium=cm&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_12

┃電子タイムカード Clockperiod
┃始業や終業、時間外勤務や休日勤務の出勤時間を自動的に集計。
┃できれば勤怠集計の作業は随分とラクになるはず。Clockperiodは、
┃出退勤の時刻をタイムカード無しで記録できます。タイムカードや出勤簿で
┃勤務時間を管理している企業にオススメです。
https://www.clockperiod.com/Features?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_13


┣*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*
┃Copyright(c) 社会保険労務士 山口正博事務所 All rights reserved

┃新規配信のご登録はこちらから
┃(このメールを転送するだけでこのメルマガを紹介できます)
http://www.growthwk.com/entry/2008/05/26/125405?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_15

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com
お問い合わせ

© 社会保険労務士 山口正博事務所