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■就業規則を周知する具体的方法は?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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周知が必要なのは分かるが、具体的な方法が定まらない
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周知していないと就業規則は無効?
就業規則を作成したり変更したりすると、労働者への周知が必要です。もし、周知が不十分だと、就業規則の効力が否定されることもありますので、就業規則の内容を周知させることが必要なのは確かです。
しかし、就業規則を周知させるといっても、どのように周知すれば良いのかが具体的に不明なのです。労働基準法の就業規則関連のルールは、89条と90条に書かれていますが、ここには就業規則の届出義務や作成についてしか書かれていません。10人以上になったら就業規則を届け出るとか、意見書を添付する必要があるという程度です。肝心の「周知」については書かれていないのです。ただ、106条には法令等の周知義務について書かれており、ここには就業規則の周知も含まれています。ただ、「労働者に周知させなければならない」と書かれているだけで、具体的な周知方法については書かれていません。一方、労働契約法では、10条と11条に就業規則関連の記載があるものの、ここでも「周知」という文言が10条に登場していますが、その具体的内容については書かれていません。
周知が不十分だと就業規則の効力が否定される可能性があるのに、なぜか周知の具体的な内容については記載がない。これでは現場の人が困りますので何とかしたいところです。
就業規則の周知については見解が分かれていて、「周知していなくても就業規則に効力がある」という見解がありますし、「十分に周知していないならば効力が否定される」という見解もあります。
そこで、就業規則の周知と効力がどう関係するかが焦点になります。
周知は形式的なものであって、就業規則の効力には影響しないと考えるのか。それとも、周知は必要な要素であって、その要素が欠けると就業規則は効力を失うのか。
法律の条文を読むだけでは解決できない現実的な問題ですね。
何をすれば周知として十分なのかが不明
就業規則の周知については、フジ興産懲戒解雇事件についての判例が有名なところでしょうか。労働判例百選にも掲載されている判例で、第8版の46-47頁の22項に掲載されています。
最高裁の判例は下記のリンクから。
(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=18557&hanreiKbn=05)
この判例の要点は、エンジニアリングセンターで働く社員がたびたびトラブルを起こすので、会社が就業規則の懲戒規定に基づいて解雇したというものです。ただ、このエンジニアリングセンターには就業規則が備え付けられていなかったという事情があり、就業規則を参照したいと思っても参照できない環境だったのでしょうね。社内イントラネットで閲覧できたかどうかという点までは判例文には書いていないので、おそらく書面で備え付ける方式だったのかもしれません。
この事件は、最高裁の前に、大阪地裁と大阪高裁でも審理されており、地裁と高裁ではさほどキッチリと周知しなくても就業規則は有効と判断しています。特に大阪高裁では、就業規則を事業所に備え付けていなくても効力を否定されないと判断しており、裁判所では就業規則の周知要件は随分と緩やかなのだなと判断できます。
さらに、この事件の厄介なポイントは、社員がトラブルを起こすようになってから解雇されるまでの間に、就業規則が変更されているんですね。
時系列で表現すると下記の通りです。
平成5年6月
社員がトラブルを起こし始める。
|
|(ここでは旧就業規則が有効)
|
平成6年4月1日
旧就業規則から新就業規則へ変更。
|
平成6年6月15日
社員が懲戒解雇される。
(ここでは新就業規則が有効になっている)
社員がトラブルを起こして解雇されるまで約1年という期間があり、その間に就業規則の新旧が入れ替わっています。
ちなみに、懲戒解雇は新就業規則に基づいて実行されています。
そのため、旧就業規則と新就業規則の懲戒規定は共通しているという理由で、旧就業規則の内容を知っていれば新就業規則の内容も知っているだろうと判断し、就業規則は周知されていたと大阪高裁では判定したようです。つまり、旧就業規則の周知でもって新就業規則の周知に代替させたというわけ。
ちょっと強引な判定のような気もしますが、こういう判断もアリなのでしょうね。ただ、前提となっている旧就業規則が周知されていたのかどうかまでは判例文からは分からないので何とも言えないのですが、たぶん周知されていたのだろう、、、と思っています。
就業規則の周知で最も焦点になるのは、「何をすれば十分に周知したと判断するのか」という点です。どんな手段を使って、どれだけ周知すれば十分なのか、この点が条文でも判例でも不明朗になっていて、裁判官もあえて周知については深く突っ込まないようにしているようにも思えます。具体的にどんな手続きをするべきなのかを表明してしまえば、現場の人にも判断基準ができるのですが、最高裁でもお茶を濁しているのが実状です。
中には、「就業規則を労働基準監督署に届け出た=就業規則を周知した」と考えているフシもあって、さすがに届出=周知では無理がありますよね。他には、「意見書が附されている=周知されている」という判断もあるようで、これはイケそうな感じもしないではないのですが、意見書を添付した段階では組合や労働者の代表しか内容を知らない(ただ、この人達もキチンと就業規則の内容を読んで意見書を書いているとは限らない)でしょうから、「周知」とは言い難いでしょう。従業員側の代表者は知ることができるが、それ以外の人は知ることができません。また、意見を附すのは「届出手続き」であって、「周知手続き」ではないですからね。
他の判例では、朝日新聞小倉支店事件の判例もあります。この判例でも就業規則の周知について言及しています。
(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=57123&hanreiKbn=01)
この判例では、「就業規則が存在すれば周知もできている」とみなしており、これでは労働基準法106条が無意味になるのではないかとも思えます。他の判例でも同様ですが、周知についてはあまり詳しく検討しないで済ませている傾向もあります。検討するための基準もないので避けているのかもしれませんね。
就業規則を周知する意味 知らないルールには対応できない
もし、「伝えられていないものをどうやって把握するのか」という素朴な疑問を抱く人がいるとすれば、それはマトモな感覚です。
アナウンスされていない事柄を知るのはなかなか難しいもので、お互いに十分に仲が良い友人同士とか親子同士や兄弟同士ならば、伝えていないことでも類推して知ることが可能なのかもしれない。しかし、会社と社員の間など他人同士の関係です。相手がこちらに知らせてくれなければ知ることはまず無理です。
就業規則の内容も、会社が社員に知らせないと社員は知ることができません。
作っても会社の書類棚にしまわれている。書面で配布しない。イントラにアップしない。備え付けない。口頭でも説明しない。これで就業規則の効力を認めるというのは無理です。
最高裁も就業規則を周知する必要があるとのメッセージは出すものの、では具体的にどのような手段で周知すればいいのかを言わない。具体的な周知方法については踏み込まないのは、出過ぎたことをしないという配慮なのかもしれませんが、周知の内容について条文今後作成されると期待するのはおそらく無理です。条文では汎用性を持たせるために、あえて抽象的に書かざるを得ないものですから、就業規則の周知手段について細かく労働基準法や労働契約法に記載されることはないと思います。
私ならば、「書面+説明」で周知することを提案します。
具体的には、雇用契約時に「要約版の就業規則」を配布し説明する、就業規則の全文は事業所に備え付ける。これで必要な周知は可能であろうと思います。
説明会や勉強会を開催するという手段もありますが、時間がかかりますし、何よりも面白くありませんのであまり気が進まない方法です。
契約時に就業規則の全文を説明する時間はとりにくいでしょうから、89条の絶対的記載事項をベースに要約版の就業規則を利用するのが便利です。要約版は就業規則本体を作成したときに一緒に作成し、要約版を説明用、全文版を備え付け用として使い分ければ良いだろうと思います。
条文にも判例にも具体的方法が書かれていないので、自主的に周知作業をやらねばならないのが悩みどころですが、やらないわけにはいきませんので自主的にではあれやらざるを得ない手続きです。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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