book398(就業規則の不利益変更について労働基準法は何もしない)




■「一部無効」と「不利益変更」は違うもの。


就業規則が備え付けられている会社で、就業規則を変更することになり、以前のルールよりも不利益に変更することになったとしましょう。

いわゆる「不利益変更」ですね。

ただ、不利益変更と言っても、「労働契約の不利益変更」ではなく、「就業規則の不利益変更」です。


労働契約の不利益変更は労使の合意がないと実行できないのですが、就業規則の場合は少し事情が異なり、必ずしも労使の合意がないと実行できないわけではないのですね。

ちなみに、就業規則は会社の判断で作ることができますし、変更も同様です。


労使の合意が無ければ、就業規則を作成できないとか、変更できないという決まりは無く、会社の判断だけで作成や変更を実行できるのですね。

「従業員代表の意見を聞き、意見書を作成する」という手順は用意されているものの、就業規則の作成や変更を拒否できるほどの力は無いのです。

ちなみに、「労働基準法や労働協約の基準に満たない就業規則は、基準に満たない該当部分に関しては無効」というルールが労働基準法にはありますが、これは「就業規則の一部無効」を決めているにとどまり、就業規則の不利益変更を阻止するものではないのです。





■就業規則に対する拒否権。


労働基準法は、就業規則の不利益変更について何も規定していないのですね。

就業規則の「作成」と「変更」について会社が主導できるようになっているのですから、「不利益な変更」も会社が主導できるようになっているのかもしれません。


労働契約の不利益変更には労使の合意が必要なのに、就業規則には必要ないとなると、ちょっとバランスが悪いですよね。

労働契約よりも就業規則の方が立場上は上ですから、就業規則の方が容易に変更できると考えるのはちょっとヘンです。ちなみに、労働法では、「(強い)労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約(弱い)」という関係があります。

労働契約よりも就業規則の方が変更しやすいために、どうしてもトラブルになるのですね。

もし労働契約が変更できないならば、就業規則を変更し、この就業規則で労働契約を制約するという方法がありますからね。つまり、「上から下を制約する」という関係ですね。

ただし、今では労働契約法9条と10条がありますので、労使の合意がないにもかかわらず就業規則を変更することはできませんので、「上から下を制約する」ということは簡単ではありません。とは言っても、労働契約法には罰則が無いですから、キチンと運用されるかは分かりません。

ゆえに、就業規則の作成や変更を社員代表(労働組合を含む)が否認できる仕組みがあれば良いのではないかと私は思います。労働契約法9条を使うのも良いのですが、社員側が拒否できるようにすれば、より確実なのではないかと思います。


従業員代表の意見を聞くだけではなく、もし過半数の拒否があれば、その就業規則は運用できないというような拒否権を与えるべきではないでしょうか。


山口正博 社会保険労務士事務所
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