book361(雇用契約を契約書なしで切り替えるとき)





■書類を作らずに雇用条件を会社と社員の間で変える。



雇用契約をキチンと締結するのは入社時のみという会社は多いですよね。


例えば、ある会社でパートタイムで採用された社員がいるとして、入社時にはキチンと雇用契約を締結し、契約書も確かに作成したとします。ただ、雇用契約というのは必ずしも不変のものではなく、社員の都合や会社の都合で内容が変わることがあります。週5日で勤務できるという条件で採用したパートタイム社員さんが、半年ぐらいすると週4日に変えて欲しいと言ったり、日曜日は出勤できないと言ったりすることがありますよね。

他にも、土日は必ず出勤できるという約束だったのに、1年ぐらいすると、日曜日は都合が悪くなりましたとか、土日の勤務はできなくなりましたので平日だけでお願いしたいのですが、と会社に要望を出すこともあるでしょう。

上記のように、雇用契約というものは入社時に確定するものとは限らず、契約中に内容が変わることもあり得るわけです。

ところが、契約中に内容が変わるときに、キチンと更改のための雇用契約書を作成しているかというと、ほとんどの会社では作成していないのではないでしょうか。会社と社員が話し合い、口頭で合意して、雇用契約の内容を変更していることが多いはず。

ここでポイントになるのは、契約書無しで契約を変更するという点です。






■雇用契約に書類は必要ないが、契約書を作ることそのものにも意味がある。



原則として、契約は、当事者の意思表示が合致すると成立します。つまり、「(会社)この条件で雇用契約を締結します」という意思表示と「(社員)その雇用契約で結構です」という意思表示が合致すると、雇用契約は成立します。ここでのポイントは「書類が必要ではない」という点です。雇用契約書無しでも雇用契約は成立するわけです。

ゆえに、雇用契約書無しでも雇用契約は成立するのだから、雇用契約書無しでも雇用契約を更新できるのですね。そのため、会社と社員が話し合って雇用条件を変更することも可能なのです。

だから、雇用契約を締結するのは雇い入れ時のみだけで、契約期間中に契約内容が変わっても雇用契約を更新しない会社が大半なのです。

確かに、書面無しで条件を変えることができるの長所でもありますが、ときには短所にもなります。


なぜ雇用契約書を作成するのかというと、「契約内容を担保するため」です。つまり、後になって、契約内容を契約の当事者の一方から勝手に変更されないようにするのです。例えば、マンションやアパートを借りるときの不動産賃貸借では、貸し主と借り主で賃貸借契約書を作成し、同じ契約書を2通作成し、割り印を押し、片方を貸し主が、もう片方を借り主が保有しますよね。これも、貸し主が借り主を一方的に追い出したりしないようにする効果があるわけです。もちろん、不動産賃貸借も口頭だけで成立させることができます。しかし、友達同士で賃貸借するならば口頭契約で良いものの、他人との契約で口頭契約を締結する人はいないでしょう。

会社でも雇用契約も不動産賃貸借と同じです。会社と社員という他人同士の契約なのですから、キチンと契約書で担保しないといけません。


会社と社員の間によほどの信頼関係が成立しているならば契約書を作らないという選択肢も選択できるのでしょうが、通常は避けるべきです。

雇用契約を締結するのは入社時だけではなく、契約内容を変えるときにも契約書を作って会社と社員で1通づつ保管するのが良いです。

内容を更改するだけで雇用契約書を作るのはめんどくさいと感じるのは分かりますが、後から揉めるかもしれないと考えれば、キチンと契約書を作る方が負担が少ないです。






山口正博 社会保険労務士事務所
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