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■問答無用の休業はヘンだ◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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休ませたらすべて休業、、、でいいの?
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■なんでも休業になる?
社員さんが自主的に仕事を休めば「欠勤」ですが、会社が休ませると「休業」として扱うのが労働基準法でのルールです。
最近だと、雇用を維持するための助成金やインフルエンザへの対処として休業を実施する会社もありますよね。休業については、労働基準法26条(以下、26条)に書かれており、コンパクトに表現すれば「使用者の責任で労働者を休ませると休業になり、その際には手当が必要ですよ」と書かれています。当然ながら、「欠勤」と「休業」は別のものですので混ぜてはいけません。
ところでこの「休業」という仕組み。26条を読んでいると、「使用者の責」という文言がありますよね。使用者の責とは使用者の責任という意味ですね。
その使用者の責任ですが、どういう場合に使用者に責任があるのでしょうか。
簡単に、会社の指示で社員さんを休ませたらすべて使用者の責任と考えて良いのでしょうか。つまり、休むきっかけを会社が作り出したら、ただちに使用者の責任と判断してしまっても良いのでしょうか。
それとも、単に会社の指示で休むだけでは休業にはならず、会社に何らかの落ち度があれば休業になるのでしょうか。
26条では「使用者の責」としか書かれておらず、休業かどうかを判断するための具体的な基準がないので問題になります。
休業とすべき場面なのに欠勤にしてしまうと、労働基準監督署や労働局から指導されるのでしょうから、休業と欠勤をキチンと判別したいところです。
■どこまで使用者の責任なのか。全部か一部か。
26条の「使用者の責」の意味を最も広く定義すると、「会社の判断で社員を休ませれば全て休業」という結論が出てきます。例えば、社員が病気でシンドそうにしている中で仕事をしており、その状態では仕事をするのは辛いだろうと考え、上司が「もう帰って休め。あと、明日1日休んで、明後日から改めて仕事をすればいい」とその社員に言ったとしましょう。上記の休業の定義だと、この場合も休業になるわけです。ただ、ここまで定義を広げるのも稀ですが、休業と判断することは可能です。
ここで不思議なのは、「会社が指示した休みは全て休業なのか」という点です。
26条を厳格に守ろうと考える人は、「会社が関わって休むときは全て休業だ」と主張しがちですが、私はどうもバランスが悪いと思うのです。一般の感覚から判断すると、「過剰に使用者の責を認定しているのではないか」と感じるはず。会社がきっかけになった休みといえども、休業にはならない場面もあるのではと思うわけです。
ただ、企業が社員を雇用しているということは、その人が持っている「時間を奪っている」と考えてよいかもしれません。人事では「時間拘束」などという概念がありますから、企業が社員の時間を買い取っていると考えることができるはず。ということは、雇用契約により企業がその人の時間を占領しているから、その占領の対価を支払う必要があるだろうと考えるわけです。ならば、仕事をしようと思えばできる状態で、無報酬で休むのは会社の責任であって、たとえ仕事をしてなくても時間に対する対価を用意すべきとも結論できます。
また、無給で休みになったからといって、他の会社で働くことはできないように企業のルールで拘束されている人もいるでしょうから、その犠牲に対して企業は補償すべきという考えは真っ当です。
ならば、会社がきっかけになって休む場面になれば、すべて会社が負担を負うべきという判断の方が説得力があります。
ただ、先ほどの例のように、社員さんが病気に罹っている状況で、上司が休みなさいと指示したからといって休業にするのは何とも不条理な感じがします。
他にも、店舗改装で社員を休ませるとか、新店設営の期間は仕事がないので休ませるという状況でも、休業として扱うのは十分に納得できません。
キチンとした理由で休ませたならば、必ずしも休業として扱わないのもアリではないかと思うのです。
■言葉だけでは基準になりきれない。
欠勤にするか休業にするかの判断を「使用者の責」だけで判断するのは容易ではありません。
経営難で社員を休ませると使用者の責任、ロックアウトで社員を休ませると休業ではない、というようにパターンはいくつかあるものの、客観的で定量的な基準は確立していないのが26条なのですね。
法律は、社会科学であって自然科学ではないので、どうも客観的で定量的な基準を示すのが苦手です。
法律の運用は、条文で決まるのではなく、その条文を使う裁判官や検察官、行政機関の上部で働く人によって決まります。つまり、条文よりも運用と解釈にウェートを置いて、後から都合良く結論を変化させることができるのですね。
そのため、わざと主観的で定性的な言葉で基準を示して、後から解釈で場面に合わせてやろうとせざるを得ないわけです。
解雇の基準も同様です。
「社会的に合理的な理由がなければ解雇できない」と決められているのですが、「社会的に合理的な理由」とは一体何ですかということと同じです。
合理的かどうかというのは客観的に決まるものではなく、相対的に決まるものですから、後から「合理的ではない」と言い張れば都合がついてしまいます。
しかしながら、客観性だけで法律を扱えば、「会社の判断で社員を休ませれば全て休業」などというヘンテコな結論が出てきます。
法律は主観と客観の間で永遠にウロウロするのでしょうね。
┏━━━━━━━━━━☆★ 編集後記 ★☆━━━━━━━━━┓
給食の献立はマニフェストだなと最近思いました。
小学校のときは給食でしたので、お昼になると給食当番が食器やパンやおかずを取りに給食室まで行くシステムでした。
この給食ですが、献立が決まっているのです。
毎月末頃になると、翌月1ヶ月間の献立表が配布され、絵柄と名称入りで30日分や31日分のメニューがズラリと記載されているのです。
これって考えるとスゴイことなんですね。
というのは、1ヶ月分の献立を前もって決めてしまっているのですから、後から変更できません。「明日はわかめご飯だけど、コッペパンに変えちゃおうか」とか「この冷凍みかん、無しにしちゃおうか」という変更はできない。
まさに献立にコミットして給食を作っているのですね。
政治家はマニフェストを守らないことが普通ですが、給食室のおばちゃんはキチンと守るのです。
もちろん、政治のマニフェストと給食の献立を同視するわけにはいきませんが、「約束を守る」という点では共通しています。
冷凍みかんを無くしてはいけない(極めて個人的な意見)。
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