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■36協定の限度時間をなくす◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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改正労働基準法とは共存できない36協定の限度規制。
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■手当を用意しても限度を超えられない。
法定の時間枠である1日8時間もしくは1週40時間(例外44時間)を超えて勤務すると、いわゆる残業になるということはご存知の通りです。
また、法定の時間枠を超えれば、通常の賃金に25%以上の割増賃金を上乗せして支払うという点も良く知られている通りです。
もちろん、割増賃金を支払えば、時間外にわたって仕事をしてもらうことは可能なのですが、際限なく可能というわけではありません。「手当をキチンと支払っていれば、時間外に勤務できる」という理解は正しいのですが、「手当をキチンと支払っていれば、"時間数に上限なく"時間外に勤務できる」という理解は正しくないのですね。
時間外勤務や休日勤務を実施する企業は、いわゆる「36協定」を毎年届け出るのですが、この36協定を利用して時間外勤務や休日勤務を可能にするわけです。
ただし、この36協定には使用できる範囲が決まっていて、法定時間外の勤務は1ヶ月だと45時間までという上限があります。つまり、1ヶ月の勤務時間を170時間(これが法定労働時間の上限と仮定します)と予定していて、実際の勤務実績は215時間になったとすると、「215-170=45時間」ですから、45時間が法定時間外の勤務となるわけです。この場合は、1ヶ月に45時間の時間外勤務なのですから、36協定の限度枠(1ヶ月に45時間までという枠)に収まっています。
では、この36協定の限度枠を超えたらどうするのでしょうか。
「条件なしに限度枠を超えることはできない」のか、それとも、「時間外の割増手当をキチンと支払っていれば限度枠を超えても差し支えない」のか、どちらなのでしょう。
■改正労働基準法は36協定の制約を超える。
今年2010年の4月から新しい労働基準法が運用されますが、この労働基準法の特徴の1つとして、「1ヶ月に60時間を超える時間にわたって時間外の勤務したときは、割増賃金を50%以上に引き上げる」というポイントがあります。従来は時間外手当というと25%以上の割増でしたが、時間外勤務時間数が1ヶ月に60時間を超えると50%以上の割増に設定するというルールなのですね。
企業に対して時間外勤務のコスト負担を高めることで、時間外勤務を減らそうという目的のようです。この点に対しては、法定労働時間を月40時間よりも短縮すれば良いのではという考えも私にはあります。
ただ、この「1ヶ月に60時間を超える時間にわたって時間外の勤務したときは、割増賃金を50%以上に引き上げる」という点は、36協定の限度時間と共存できません。
つまり、改正労働基準法では「1ヶ月に60時間を超える時間にわたって時間外の勤務したときは、割増賃金を50%以上に引き上げる」と決めているのに対し、36協定の限度時間では「法定時間外の勤務は1ヶ月だと45時間まで」という上限があります。
この両者をつき合わせると、片方では月60時間を超える時間外勤務を想定しているのに対し、もう片方では月45時間までしか時間外勤務を想定していないのですね。
となると、改正労働基準法と36協定の限度時間を同時に受け入れることは矛盾を受け入れることと同じなのです。なお、特別条項付き36協定は臨時的にしか使えないので、上記の矛盾点を解消するポイントにはなりません。
ただ、この点については厚生労働省も対応していて、「改正労働基準法」と「36協定の限度時間」との間で調整を試みているようです。
下記ウェブサイトの「(3)労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準の一部を改正する件(※限度基準告示の一部改正)(平成21年厚生労働省告示第316号)」という部分を読んでみてください。
厚生労働省のウェブサイトです。
(http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/tp1216-1.html)
PDFで条文が閲覧できるはずです。
「延長することができる労働時間をできる限り短くするように努めなければいけない」という部分がキーポイントでしょうか。
客観的な基準を示すのではなく、「できる限り短く」という文言で制約するのがせいぜいのようです。さらには、「努めなければいけない」という文言ですから、義務規定ではなく努力規定(義務規定よりも制約が弱い)になっています。
従来は、客観的な基準として1ヶ月45時間までと示していたものの、改正労働基準法でその基準を打ち破ってしまったものですから、客観的に決めるのを控えたのでしょう。
厚生労働省の悩みは分かりますが、複雑な気持ちですね。
■時間外勤務に限度を設ける意味。
私は36協定の限度時間制約を取り払うべきだと考えています。労働基準法を改正するのですから、なにも36協定の限度時間に拘ることもないのではと思います。
上記のように法改正によって制度に歪みができてきて、あとから努力規定でフォローしてしまうと、客観性をウリにしている法律の立つ瀬がありません。
客観的に決まっているからこそ法律なのであって、主観が入り込むようでは法律としてはあまり望ましいものではないのですね。現に、主観や恣意が入り込む法律はそれなりにありますよね。解釈次第で何とでも結論を変えてしまうことができるという点は、法律の良いところでもあり欠点でもあります。会社経営者が検察官から嫌がらせを受けるのはその好例です。
私は、たとえ36協定の限度時間を超えて時間外勤務をしたとしても、キチンと割増手当を支払っていれば良いと思っています。過重な労働に拍車がかかるという意見を持つ人もいるでしょうが、そこまでして社員を働かせる会社は稀ではないでしょうか。大体は、程よい頃合いで仕事を切り上げるでしょうから、トラブルにはあまりならないと思います。
労働局や労働基準監督署でも、「時間外手当がキチンと支払われているかどうか」が大事であって、「労働基準法36条の限度時間を超えているかどうか」はあまり重視されていないのではないでしょうか。
あえて法律で制約せずとも、割増賃金という形でお金を使って解決できるならば、お金で解決した方が望ましいのではないかと私は思います。
┏━━━━━━━━━━☆★ 編集後記 ★☆━━━━━━━━━┓
新しいものを積極的に取り入れようとする人に好感をもつ。
GoogleからNexus oneというケータイが発売されましたが、日本ではまだ購入できません。
ところが、あの手この手を尽くして、Nexus oneを手に入れている人もいるとのこと。
アメリカ、イギリス、香港、シンガポールの4国だけに発送できるようで、日本で注文できても発送まではできないのがネックになっているようです。
そこで、海外のホテルに発送してもらってそこで受け取ったり、海外のバーチャルアドレスを借りて、海外を経由して転送で日本に送ってもらうという手段があるようです。他にも、Proxy serverを利用してIPアドレスを偽装してイギリスなどからアクセスしているように見せかけて注文する人もいるようです。
まさに「万難を排して行動を起こしていく」気概です。
そこまでの負担を受け持ってして新しいものを取り込むという姿勢。これは素晴らしい。
日本のSIMカードを挿入しても、Nexus oneはデータ定額にならないようですので、いわゆる「パケ死」のリスクも負うわけです。
こういう"前傾姿勢"。いいですね。
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