book351(健康保険の自己負担を引き上げて保険料を下げるべき)





■元気な人ほど困る仕組み。



ご存知のように、協会健康保険(以下、協会健保)と国民健康保険(以下、国保)は、加入者が月ごとに保険料を支払う仕組みを採用しています。この点は組合健康保険でも同じですね。

毎月で平均8.2%の保険料(協会健保では都道府県ごとに保険料は異なる)を負担し、病院で診察や治療を受けると通常は3割の費用を負担します。

ただ、この負担の仕組みは、病気がちな人には有利ですが、健康な人には不利です。全く診察や治療を受けなくても、毎月の保険料は負担しなければいけないわけです。保険料は報酬によって個人ごとに変わるのですが、毎月数万円を負担している人も多いですよね。

また、現状では健康保険は「使ってナンボ」の仕組みですから、利用しなければ保険料が丸々損になると感じてしまうわけです。


それゆえ、健康保険は健康な人ほど不利な仕組みになっているのですね。

保険会社で販売されている医療保険は、健康な人ほど負担が軽くなります。保険事故が少ないならば、それに応じて加入者を優遇する仕組みなのですね。これは常識的な構造です。


しかし、健康保険は健康な人ほど負担感が増していく仕組みなのですね。これはやはり公正ではないだろうと思うのです。








■利用負担にウェートを置き、アフターフォローを入れればよい。



私は、健康保険の「保険料部分(約8.2%負担の部分)」と「自己負担部分(3割負担の部分)」を組み替えるべきだと考えます。

具体的には、保険料を8.2%程度から5%程度まで引き下げ、一方、現行の自己負担割合を6割程度まで引き上げるというものです。つまり、5%の保険料を毎月負担し、医療機関を利用した時の自己負担は6割にするという仕組みですね。なお、5%や6割という数字の部分は別途で詰める必要があります。

要は、自己負担割合を引き上げて、なるべく健康保険を使わないように方向付ければ、加入者の「元を取る」という発想を除去できるのではないでしょうか。


現行の健康保険では、保険料の負担が重く、自己負担部分が軽くなっていますので、加入者に対して「なるべく使わなければソンだ」というインセンティブを抱かせる仕組みになっています。そのため、風邪をひいて病院で薬を処方されるときに、本来ならば3日分の薬で足りるところを、10日分処方してもらったり1ヶ月分処方してもらったりする人が出てくるのです。あらかじめたくさん薬を処方してもらっておけば、また風邪をひいたときに飲めると考えてのことなのでしょう。他にも、湿布薬を多めに貰ったり、液体うがい薬を1本ではなく3本貰ったりするわけです。

上記のような仕組みでは、医療への負担が大きくなることはあっても、少なくなることは考えにくいでしょう。「たくさん保険料を払っているのだから、使わなきゃソンだ」と思わせてしまう仕組みには改善が必要です。


それゆえ、「保険料部分(約8.2%負担の部分)」と「自己負担部分(3割負担の部分)」を組み替えることを提案しているのです。

保険料を軽くして、利用負担を重くすれば、「あぁ、なるべく病院に行かないでおこう」というインセンティブを加入者に与えることができますから、より健康に生活するための行動を促すことができます。夜更かしするとか、過度にお酒を飲むとか、過度に喫煙をするという不摂生を避けさせる効果があるはずです。また、健康な人ほど負担が軽くなる仕組みにもなりますよね。


ただ、病気がちな人もいますから、何らかのフォローが必要です。上記のように利用負担を引き上げると、病気がちな人の負担が過度になりますから、その負担を緩和する仕組みが必要です。

そこで、高額療養費制度の要件を緩和するのはどうでしょうか。

「医療費が高額になった人」と「他頻度で健康保険を利用する人」に対して、所得や医療負担額に応じてフォローするようにするわけです。ここでのキモは、「"後から"再分配効果を発揮させる」という点です。保険料の負担が多く、利用負担が軽い状態だと、これは「"事前に"所得再分配」の効果を発揮させていることと言えますから、この状態を変えるのですね。高額負担者と多頻度利用者へのフォローが狙い所です。

他にも、税制で医療控除の枠を広げるのも一考です。控除枠が広がれば、税金の還付が増えますから、高額負担者と多頻度利用者へのフォローとして使えます。



ゆえに、私は、健康保険の「保険料部分(約8.2%負担の部分)」と「自己負担部分(3割負担の部分)」を組み替え、結果として負担が重くなりすぎたときには高額療養費制度や医療費控除でフォローするのが望ましいと考えます。

山口正博 社会保険労務士事務所
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