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時間単位の年次有給休暇はなぜ5日分までなのか

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■時間単位有給休暇は5日分まで?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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計画有給と時間有給を同じにする必要は無い。
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時間単位の有給休暇を5日分までに制限した意図は何か

平成22年4月から改正された労働基準法が運用されます。

改正では時間外勤務に関する変更が中心ですが、時間単位の有給休暇についても決められていますよね。

通常、有給休暇は、1日単位もしくは半日単位で利用されるものだと思いますが、時間割りで休暇を使うことを公式に認めようというのが今回の改正です。

ただ、時間単位で休暇を使うには条件があるようで、「1年に5日分が限度」とのこと。

これだけを知ると、「ふ~ん、5日分までなんだ、、、」と思ってしまいますよね。


しかし、何か腑に落ちない感じがします。


制度を設計した人達はなぜ5日分までに制約したのでしょうか。

あえて制約する必要があったのでしょうか。


計画付与の有給休暇(労働基準法39条5項)には確かに制約がありますね。

しかしながら、時間単位の有給休暇にも制約を課す必要があるのでしょうか。



そこで、「時間単位の有給休暇を1年で5日分までに制約する必要があるのかどうか」という点が今回のテーマです。









「計画付与の有給休暇」と「時間単位の有給休暇」はお互いに別物

筆者は、時間単位有給休暇と計画有給休暇を同列に扱わなくても良いのではないかと考えています。

なぜならば、計画有給休暇は「会社の強制による休暇」ですが、時間単位有給休暇は会社の強制によるものではなく「社員さんの判断による休暇」だからです。


なぜ、計画付与の有給休暇が労働基準法39条5項で制約されているのかを考えると、会社の強制が働くからです。

「5日を超える部分の休暇については会社の判断で休暇を与えることができる」というのが計画付与の有給休暇ですよね。

つまり、5日を超える休暇について社員さんはコントロールできないのです。

会社の強制力を伴った休暇だから、法律でルールを作ろうというのが労働基準法39条5項の趣旨なのですね。


では、時間単位の有給休暇だと、上記のような会社の強制力が働くでしょうか。

おそらく働かないのではないかと。


なぜならば、時間単位の有給休暇は「メニューの1つとして用意されるにとどまる」からです。

つまり、たとえ時間単位有給休暇を採用することになったとしても、1日単位また半日単位で休暇を利用できる選択肢は残すはずです。「1日単位、半日単位、時間単位」という3つのメニューを社員さんに提示して、社員さんがその中から選ぶという運用方法を大半の会社では採用するのではないでしょうか。

「有給休暇は全て時間単位で利用すること」などと決める会社は無いはずです。

ゆえに、社員さんが休暇のメニューを選択できるならば、会社の強制もないのですから、あえて法律で制約することもないのですね。



計画は強制だけれども、時間単位で休暇を使うかどうかは任意で選択できるから、計画有給と時間有給を似たような視点で制約しなくても良いのではないかと思うのです。


公的には1年に5日以内でと決めるが、労使協定で独自に定めれば、1年に5日を超えて時間単位で有給休暇を使えるようにした方が都合が良いと私は思います。

計画有給のように強制を伴わないのですから、もうすこし会社の自主性を認めても良いのではないでしょうか。

任意のメニューとして用意するにとどまるものだから、無制限で時間単位で休暇を使えるようにしても差し支えがあるものではありませんよね。もし時間単位で休暇を使うのが嫌ならば、1日単位で使えば良いのですから。









代替休暇と時間単位有給休暇はセットで採用しなければいけない

改正労働基準法には、「代替休暇」という仕組みも用意されますね。

代替休暇とは、「50%に引き上げられた割増部分」と「従前の割増部分」との差分に対して、手当を支給するのではなく休暇で支給することも可能になるという仕組みです。

ただ、ここで気になるのが、代替休暇は時間単位で処理しなければいけないという点です。

例えば、50%割増の対象になる時間が1ヶ月に3時間あったとして、その3時間分を休暇で与えようとすると、どうしても時間単位の有給休暇が必要です。

つまり、代替休暇の仕組みを有効に機能させようと思えば、時間単位の有給休暇も一緒に採用しなければ、代替休暇自体が使えなくなります。


もし、代替休暇を採用すると決めたならば、代替休暇と時間単位有給休暇はセットで採用しないとうまく回らないでしょうね。

別の側面から言えば、「時間単位有給休暇を採用しないならば、代替休暇も採用しない」という流れになります。ここでは逆は真ではないです。代替休暇には時間単位有給休暇が必要ですが、時間単位有給休暇は代替休暇がなくても単独で採用できますからね。


しつこいですが、60時間を超えた時間外勤務を代替休暇で処理したいと考えると、必然的に代替休暇は時間単位で捌かなければいけなくなります。そうなると、どうしても時間単位で有給休暇を使える仕組みが必要になりますよね。

にもかかわらず、改正労働基準法では、時間単位の有給休暇に上限日数を設けているわけです。

1年に5日分だけの時間単位有給休暇で代替休暇を捌ききれるのでしょうか。

1日を8時間と計算すると、5日で40時間です。つまり、1年で使える枠は40時間ですから、この枠内で代替休暇を処理しないといけないわけです。

ちょっと無理があると感じませんか?

もしかすると、代替休暇だけで40時間の枠を使い切ってしまい、社員さんが自主的に時間単位で有給休暇を使う余地がなくなるのではないかと私は思うのです。

考え方を変えれば、代替休暇が貯まって、ある程度のロットになってから、時間単位ではなく1日単位で休暇を取れば大丈夫とも考えることが可能なのですけれども、なんだかぎこちないですよね。



どうしても時間単位有給休暇が1年に5日分までとされてしまうのだったら、代替休暇を設けない方が良いのではないでしょうか。

時間有給の日数に限度があるとなると、代替休暇を時間単位有給休暇で逃がすことが難しくなりますからね。


やはり時間単位の有給休暇には日数の限度を設けない方が良いのではないかと。



年次有給休暇の管理にまつわる疑問と正しい対応例
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【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

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このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

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【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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