残業時間の計算は1日単位か、それとも1週間単位か
こんな勤務スケジュールで働いたとき、勤務時間をどのように把握するでしょうか。
例えば、週5日勤務で働いたパターンの場合。
(太田さんの勤務スケジュール)※太田さんは仮想の人物です。
月:9時間
火:10時間
水:5時間
木:10時間
金:9時間
土:休み
日:休み
1週間計:43時間
この例だと、1日あたりで計算すれば、6時間の時間外勤務ですね。他方、1週間あたりで計算すると、3時間の時間外勤務ですね。
この場合、時間外の勤務は6時間でしょうか、それとも、3時間でしょうか。
また別の例を設定すると、
(柴咲さんの勤務スケジュール)※柴咲さんは仮想の人物です。
月:8時間
火:8時間
水:8時間
木:8時間
金:8時間
土:8時間
日:休み
計:48時間
小規模な会社でよくある勤務スケジュールですね。
この例だと、1日あたりで計算すれば、時間外勤務はありませんね。他方、1週間あたりで計算すると、8時間の時間外勤務ですね。
この場合、時間外の勤務は0時間でしょうか、それとも、8時間でしょうか。
「うわぁ~、、何て微妙な状況なんだ、、、」と思う人もいるかもしれませんね。
残業時間を判定する基準は2つだが、時間数の多い方を採用する
法定労働時間の枠は、「1日8時間」と「1週40時間(例外44時間)」の2つあります(変形労働時間制度を除く)。
この2つの枠を超えたかどうかで時間外の勤務かどうかを判断するわけです。なお、上記の2つの枠は、どちらを超えても時間外勤務になります。つまり、「1日8時間」の枠だけを超えても時間外になりますし、「1週40時間(例外44時間)」の枠だけを超えても時間外になります。もちろん、「1日8時間」と「1週40時間(例外44時間)」の2つの枠を超えても時間外になります。
端的に示せば、「and(両方必要)」ではなく「or(片方だけでも可能)」なのですね。
そこで、先ほどの例に戻れば、太田さんの場合は、1日あたりで計算すれば、6時間の時間外勤務であり、1週間あたりで計算すると、3時間の時間外勤務です。
ではどちらを採用するかというと、時間数の長い方を採用します。つまり、太田さんの時間外勤務の時間数は6時間です。
一方、柴咲さんの例だと、1日あたりで計算すれば、時間外勤務はありませんが、1週間あたりで計算すると、8時間の時間外勤務です。
この場合も、時間数の長い方を採用し、柴咲さんの時間外勤務は8時間として扱います。
要するに、1日単位と1週間単位を比較して、長い方を採用すれば良いのですね。
週40時間だけを意識してはいけない
法定労働時間を守ろうとするときに、「週40時間(例外44時間)が上限だから、そこまでは勤務可能なんだな」と考えてしまう方がいらっしゃいます。間違っていませんし、正しい理解です。
確かに、勤務時間の上限は週40時間ですし、例外業種でも44時間が上限になりますね。
しかし、週40時間だけを意識していると、間違うこともあります。
週40時間という上限はもちろんですが、「1日8時間という上限もある」ということを忘れてはいけません。
つまり、たとえ、1週間で40時間を超えていなくても、割増賃金が必要な場面はあり得るわけです。
「1日8時間」もしくは「1週40時間(例外44時間)」を超えると法定時間外労働の割増賃金が必要です。
例えば、
月:3時間
火:9時間
水:10時間
木:4時間
金:4時間
土:休み
日:休み
という勤務スケジュールで働いた場合、
1週間の合計勤務時間は30時間です。
ここで、週40時間というラインだけを意識していると、「あぁ、40時間に達していないから、割増賃金は不要だね」と考えてしまい、間違ってしまいます。
確かに、週40時間には達していませんので、「週40時間のライン」はクリアしています。しかし、「1日8時間のライン」には引っかかっていますよね。
となると、火曜日と水曜日には時間外勤務の手当、つまり割増賃金が必要になります(もちろん、36協定も事前に必要です)。
火曜が1時間分。水曜が2時間分です。週30時間勤務でも割増賃金が必要になるわけです。
要点は、【「1日8時間」and「1週40時間」】(両方の条件を満たした時だけ手当を支給する)ではなく、【「1日8時間」or「1週40時間」】(どちらか片方の条件を満たしたら手当を支給する)ということです。
先に、1日8時間に達していないかどうか。その次に、1週40時間に達しているかどうか。二段構えで判定していきます。
時間外勤務を考える時には、【「もしくは」であって、「かつ」ではない】と意識しておくと良いのかもしれません。