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有給休暇を取ったら皆勤手当は出ないの?

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□□ ┃  山口社会保険労務士事務所
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有給休暇で休んでいるのだから皆勤ではない?

会社で働いていると、いろいろと手当がありますが、最近では手当の種類も減りつつあるのかもしれませんね。

そこで、今回は、皆勤手当と有給休暇が競合する場面を採り上げます。

中には、「有給休暇を取得した月には皆勤手当は支給しない」というルールを設けている会社があるかもしれません。

つまり、皆勤手当は、休み無く出勤したことに対して支給される手当だから、休暇を取得した月には支給されないというわけです。週休や公休は織り込まれた休みだから皆勤手当には影響しないが、有給休暇は織り込まれていない休みだから皆勤手当に影響するのですね。

確かに、休暇を取得すれば皆勤ではないと考えることはできます。休んでいるのだから皆勤ではないだろうという思いなのでしょう。

しかし、有給休暇を取得したという理由で、何らかの不利益な影響を及ぼすのはダメだと決められています。つまり、有給休暇を取得することを社員さんに遠慮させるような取り扱いはできないというわけです。

ただ、皆勤手当制度は会社が自主的に決めている仕組みなのだから、その条件や手当の金額に関する運用方法は会社が決めて良いはずです。独自に条件を設定して、独自に金額を決めるのは会社次第というわけです。

となると、「休暇で休んだ日がある月には手当を支給しない」という条件の設定も可能ではないのかとも思えますよね。

「不利益な取り扱い」とは?

「有給休暇を取得した労働者に対して,賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」というのが法律の決めるルールです。

労働基準法附則第136条
使用者は、第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

ここで、「賃金の減額」というのは確かに不利益な取り扱いですよね。

では、「その他不利益な取扱い」というのは何でしょうか。

具体的に挙げているのは賃金の減額だけなのですが、他には何があるのか分かりませんよね。

例えば、解雇、降格、降職という扱いは不利益な取り扱いになりそうです。常識的にも不利益と判断できますからね。

では、「有給休暇を取得した月には皆勤手当は支給しない」というのは、「その他不利益な取扱い」に含まれるのでしょうか。

つまり、理解しにくいのは、「その他不利益な取扱い」の範囲はどこまでなのかという点です。

有給休暇を取得したという事実が、労務管理的に何らかの影響を及ぼすことは一切ダメという思いで「その他不利益な取扱い」の範囲を決めているのか、

それとも、

何らかの影響を及ぼすことは一切ダメというところまでは言っていないのか、

どちらでしょうか。

ちなみに、判例では、有給休暇を取得した月には皆勤手当は支給しないのは不利益な扱いであるからダメと示されています。つまり、上記の比較では前者の立場です。

しかし、私は、「その他不利益な取扱い」の範囲を広くしすぎているのではないかと考えています。

有給休暇を取得したという事実が何らかの影響を及ぼすことは一切ダメ、と考えてしまうのは、有給休暇を利用する立場を少し強め過ぎているのではないでしょうか。

ただ、現実では、有給休暇は取得しにくい休暇ですから、その休暇を取得する立場を強調することにも一理あります。

しかしながら、皆勤手当の内容は会社が決めることであって、その運用も会社自治で行われるのが妥当ではないかとも考えることができます。つまり、有給休暇を取得した月には皆勤手当は支給しないという対応は、手当制度の運用の範囲内であって、それを不利益であるとして禁止するほどのものではないと判断することもできないことはないのですね。

皆勤手当制度は会社が独自に作っている

ただ、判例は私とは反対の立場ですし、労働基準法でも、「その他不利益な取扱い」という包括文言を使って、想定外の場面を捕捉するように書かれています。

となると、私の分が悪いですね。現状では、私の立場は不利です。

また、今現在、有給休暇を取得した月には皆勤手当は支給しないという対応をしている会社も立場が悪いでしょう。それゆえ、休暇を考慮せずに手当を支給するか、それとも、皆勤手当を廃止するかを検討する必要がありますね。

余談ですが、有給休暇などの法定の休暇以外の休暇(会社独自の休暇)を手当に影響させるのは特に支障はありません。

介護休暇、育児休暇も有給休暇と同様に扱われますので、上記のような対応が必要です。

ただ、手当の内容、条件、金額といった運用方法は会社が決めることであって、休暇を取得した月は皆勤手当を支給しないという判断も納得できるものですから、この立場が間違いだと断定するのは気が引けるのですね。

「その他不利益な取扱い」の範囲が広くなりがちになっているのではないか、というのがモヤモヤな感じです。

「手当制度の自主性」と「判例と法律のルール」が競合しているのが今回のポイントです。

精勤手当や皆勤手当そのものが無ければ起こらない問題ですし、皆勤を判定する期間を1ヶ月ではなく1年に設定すれば、対象者も絞れてきますし、手当の額も多くできるのでは。

毎月だとほぼ全員が皆勤でしょうが、1年間となると、病気などの本人都合で休む日はあるでしょう。対象者が減れば、その分だけ支給額も増やせます。

1ヶ月ごとの判定のときは1,000円だったものが、年間判定で15,000円にするのも一案です。

判定期間を延ばし、支給額も増やす。そうすれば、年次有給休暇で休んだ日を考慮に入れなくても気にならないのでは。

少額の手当を支給しない、支給せよとスッタモンダして、人が辞めてしまっては、小銭を拾って大金を捨てているようなものですから。

会社と従業員が満足できる着地点を探る。これも労務管理なのです。

年休を取ると皆勤手当が出なくてもOKと判断した判例が過去にありますので、年休と皆勤手当の関係は実態を見て個別に判断していく必要があります。

1ヶ月ではなく1年間皆勤で皆勤手当を支給する

皆勤手当を毎月支給する条件で、年次有給休暇を取得した月は皆勤手当を支給しない、もしくは減額するとなると、労働基準法附則第136条に抵触し、年休取得の際に不利益な取扱いをしたとの問題が起こります。

労働基準法附則第136条
使用者は、第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

1ヶ月ごとに皆勤かどうかを判定していると、期間が短いので皆勤を達成できる人が多くなります。となると皆勤手当を支給される対象者も多くなります。これはこれで悪くはないのですが、皆勤手当の趣旨に合わなくなってきます。

そこで、期間を1年に設定して、年間で皆勤を判定し、皆勤手当を支給するとどうでしょうか。年間を通して休みがなかった場合に皆勤手当が支給されるようになりますから、有給休暇を取得した日は皆勤手当に影響しないようにして、個人的な都合で休んだり、病欠などで休んだりした場合は皆勤手当はないという条件です。

1ヶ月ごとに皆勤手当を支給していたときは、例えば毎月2,000円だとしましょう。1年間で皆勤手当を支給するようにしたならば、1年間皆勤だったら30,000円の皆勤手当を支給する。これなら納得しやすいのでは。24,000円では魅力に乏しいですから。達成できる人が少なくなりますから予算の範囲内に収まるだろうと想像します。

1月1日から12月31日を判定期間にして、1月の給与で30,000円の皆勤手当を支給する。

月間で判定せず年間判定ならば皆勤手当も手当制度として有効でしょうね。

参考:
私の会社では有給休暇を取得すると賞与の査定にあたってマイナスに評価されてしまいます。会社は有休を取得しなかっただけ多く働いたのだから当然と言っていますが、これは法律上問題ないのでしょうか。

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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