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みなし労働時間制とは "みなす時間"を決める

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みなし労働時間制は魔法の杖なのか

ご存知のように、労働基準法には、「1日8時間」という枠がありますね。

8時間までが法定内、8時間を超えると法定外と扱われるわけです。

これが原則の時間管理ですね。

一方で、

事業場外労働のみなし労働時間制、専門業務裁量労働制、企画業務裁量労働制、という3つの例外の時間管理制度があります。

これらの3つの制度を使うと、原則による時間管理ではなく、変形的な時間管理ができるようになります。

ちなみに、専門業務裁量労働制、企画業務裁量労働制は、ホワイトカラーエグゼンプションの走りのような制度です。

さて、ここからが本題ですが、みなし労働時間制を採用していると、みなされた時間以外の部分は勤務時間として計算しなくても良いと思っている会社もあります。

つまり、みなした時間が1日の勤務時間だというわけですね。

確かに、1日の勤務時間を正確に把握できないので、みなし労働時間を採用したのですから、「1日の勤務時間=みなされた勤務時間」と考えたいのは分かります。

しかし、みなされた時間を実際の勤務時間が超えた時は、「1日の勤務時間=みなされた勤務時間」と扱うと支障があることもあります。

みなされた時間を超えた時間に対する給与が不払いになっている会社もありますからね。

それゆえ、みなし労働時間制は、「みなした時間しか計算に入れない」と都合良く扱えるほど万能な制度ではないですね。

みなす労働時間の範囲を決めて運用する

勤務時間をみなすと言っても、どこまでをみなすのかを決めずに、みなし労働時間制を採用すると、トラブルが起こります。

例えば、「実際の勤務時間<みなし時間」という状態ならば、みなされた時間よりも実際の勤務時間が短いですから、トラブルにはなりません。

8時間のみなし枠があるけれども、実際は6時間で終わったというような場面ですから、支障は無いわけです(この場合、働いた時間は8時間と計算される)。

これならば何も言いたいことは無いはず。

一方で、「実際の勤務時間>みなし時間」となると、みなされた時間よりも実際の勤務時間が長いですから、トラブルになる可能性が生まれます。

実際の勤務時間とみなし時間との間に発生した差は、どのように扱われているのかが気になるのですね。

そこで、「実際の勤務時間>みなし時間」という状態になったときの対策として、例えば、

「みなす勤務時間は、1日8時間とします。なお、8時間を超えた勤務時間に対しては、別途計算の上、時間外勤務手当を支給します」

という様に決めておけば、「みなされる範囲」と「みなされない範囲」が分かりますよね。

なお、みなし労働時間制でも勤務時間数の把握は必要です。

ただ、みなす時間は8時間までという制約はありません。

例えば、1日10時間までをみなし時間として設定して運用することも可能です(法定時間を超えるみなし労働時間制ですので、届出が必要です)。

ただ、法定労働時間を超えるみなし労働時間制を運用するときは、「時間外勤務の時間数」と「時間外の手当の額」がきちんと整合しているかという点に注意が必要です。

時間外勤務の部分を込みでみなし労働時間にしていますから、本体賃金と時間外賃金の境目が曖昧になるかもしれませんからね。

「内訳はキチンと示す」のがキモです。

労働基準法38条の2では、「業務の遂行に通常必要とされる時間労働したとみなす」と書かれているだけですから、目安にならないのですね。つまり、「通常必要」という判断をどのようにするのかが分からないのです。

「通常必要」と判断すれば、10時間でも8時間に変えることができるのか、それとも、変えることはできないのか。迷いますよね。

そのために、みなす時は、「みなす範囲」を決めなければいけないのです。

労働時間を誤魔化すためにみなし労働時間制を使うのはダメ

「勤務時間は、みなし労働時間制によるものとします」のように曖昧な決め方をしていると、社員さんからツッコミを受けてしまうかもしれません。

「みなす範囲」を事前に示しておかないと、社員さんは「会社は勤務時間を誤魔化そうとしているのでは」と考えてしまう

私が考えるに、労働基準法では、原則の仕組み(1日8時間という制約)で例外の仕組み(みなし労働時間制など)を制御しようとしているのではないでしょうか。

「勤務時間をみなしているのに時間数の管理は必要」というのはまさに上記の好例です。

「原則→→(制御する)→→例外」という形です。

「原則の時間管理」と「例外の時間管理」は、お互いに性質が違うものですから、他方が他方を制御することは難しいのではないかと私は思います。

そのため、例外と原則は、お互いに分離して機能していないと変になるはずなのですね。

今回の場合だと、みなし労働時間を採用しているのに、結局は8時間の枠で拘束してしまっては、みなす効果も減少してしまうのではないでしょうか。

勤務時間をみなしているのに時間数の管理を要求したり、これは矛盾ですよね。管理できないからみなしているのに、時間をみなしていても管理せよというのは、やはり変です。

勤務時間をみなすなら、タイムカードはいらないし、時間管理もしないのが妥当なはずなのですが、どうもそうなってはいないのですね。

さらには、みなすことができる時間は、「事業場外での仕事時間」だけであって、いわゆる内勤の時間は計算から除外して扱わなければいけないのですね。つまり、「事業場外のみなし時間」と「内勤の時間」を合算したものが勤務時間となるわけです。

こうなると、原則ルールの時間管理よりも、みなし時間制度を使う方がかえって管理が難しく、事務の取り扱いも面倒になってしまうのではないかと私は思います。

「水と油の関係」とまでは言いませんが、原則の時間管理と例外の時間管理はそれに近いぐらい性質が異なるものです。

例えるならば、労働基準法の本体システムに、合わないモジュールやアドオン(みなしや裁量労働制度など)を追加しているような感じです。


現状では、「歪み」を発生させながら運用されているのが労働基準法なんですね。

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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┃ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
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