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■■ ┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□ ┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/8/24号 no.118)━
寸志は「心ばかりの贈り物」か「働いた対価としての報酬」か
今回は、「寸志」の取り扱いについて書きます。
寸志とは、端的に定義すれば、「心ばかりの贈り物、少しばかりの
志、わずかなさしさわりや不満」とされています(大辞泉より)。
会社で寸志が取り扱われるときは、のし袋に小額のお金を入れて
渡しますね(ちなみに、大入り袋と寸志はまた違うもののよう
です。ただ、似たような理由で渡す場面もあり、境目は曖昧です)。
私も、大学時代に、寸志を貰ったことがあります。夏休みや冬休み
で帰省する際に、”寸志”と書かれた封筒を渡されていました
(ただ、貰える時と貰えないときがありました。店主さんの気分
で貰えたり貰えなかったりという扱いでした。ちなみに、小さな
小料理店でのお仕事でした)。
若い人達の中には、寸志というものがあるということを知らない
人もいるのではないでしょうか。
私も、大学生になるまで、寸志というものを知りませんでした
からね。
初めて受け取った時は「何コレ?」と思ったのですが、中身を
見るとお金でしたから、「ええっ?なぜお金が、、」と思った
ものです。
店主さんから、「おいしい物でも食べて」と言って渡していただい
たのを記憶しています。
今では、寸志を渡す会社も少ないのかもしれませんし、もし渡して
いるとしても、経営者の方が年配だったりするはずです。若い
経営者だと、寸志など取り扱わないでしょうね。
さて、その寸志ですが、会社によって取り扱いを変えている
ようです。
つまり、「労働の対価」として寸志を渡す会社もあれば、私の
ように、突発的に店主さんの気分で、「恩恵的な贈り物」として
渡されることもあるのですね。
となると、税金や公的な保険料にも関わってくることを考え
なければいけませんよね。
寸志がボーナスとして支給されている
人によっては、「夏季賞与が寸志として支給されました」という
方もいらっしゃるようです。
つまり、通常は賞与制度を設けずに、もし賞与を支給する必要が
生じたときには、「寸志」という名称を使って、実質的に「賞与」
を支給しようというわけですね。
「形式的には寸志、実質的には賞与」という扱いです。
しかし、賞与を支給するならば、「賞与」という名称を使って
欲しいです。
なぜなら、賞与ならば、税金や雇用保険料、社会保険料が課され
ます。しかし、純粋に寸志として扱えば、これらの費用は負担し
なくても良いのですね。
となると、寸志という外形を利用して、税金や雇用保険料、
社会保険料を免れ、実質的には賞与を支給するという処理もでき
得るわけです。
以前に書いた時間外手当の内容と似ていますね。
寸志という名称で煙幕を張っているのです。
もしかすると、賞与を寸志として支給している会社は、「賞与なら
費用負担があるが、寸志ならば費用負担無しで賞与を支給できる
から便利だな」と思っているのかもしれません。
本来は労働の対価であるはずなのに、恩恵的なお金だと見せかけて
いるわけですね。
この事実が発覚すると、脱税ですし、公的保険料の不払いにもなり
ます。
ゆえに、寸志ならば寸志、賞与ならば賞与として名称を固定する
べきです。
就業規則や賞与規定で寸志を取り扱うと、賃金や報酬になることもあります
ただ、寸志を労働の対価にすることは可能です。
「寸志=恩恵的な贈り物」と固定して扱わなければいけないわけ
ではなく、何らかの仕事に対して寸志を支給するとしても良い
のです。
つまり、寸志を賞与としてあつかうことも可能です(この場合は、
明確に寸志を賞与として取り扱うのであって、先ほどのような
寸志と賞与を混ぜて誤魔化す場面とは違います)。
ただ、賞与規定や賃金規定、就業規則などの規定類で、寸志の
性質を決めておく必要があります。賃金や報酬であることが分かる
ようにするのですね。
もちろん、労働の対価、賃金、報酬として扱えば、税金や保険料
は課されます。
ただ、わかりにくい名称を使うと、社員さんが誤解しますし、
その誤解を解くために会社も説明しなければいけなくなります。
そのため、賞与を寸志と呼ぶのは避けた方が良いです。
寸志という名称をあえて使う利点は特に無いのでしょうが、昔から
の伝統のようなものを大事にしたい人は、寸志という名称をこれ
からも使うのかもしれませんね。
私も、こういう風習や慣習のようなものは好きですが、トラブル
の元になってしまうならば、控えなければいけないのかなと思います。
メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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