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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/4/24号 no.83)━
無断欠勤している人を14日も待てますか?
「無断欠勤している社員さんがいるので、退職として扱いたい」
こんな場面はどこの会社でもあるのではないでしょうか。
解雇するとなると、解雇予告や解雇予告手当が必要になりますし、労働契約法の16条では、【解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする】と決められています。
ゆえに、無断欠勤という理由だけで解雇にできるかというと、簡単ではなさそうです。
かといって、無断欠勤している社員さんをいつまでも待たなければいけないとなると、会社も困りますよね。
労働基準法には無断欠勤の対応方法について決められていないのですが、民法では627条に雇用契約の解除について決まりがあります。
この民法627条に従うと、14日を経過すれば雇用契約は解約できますので、無断欠勤で14日が経過すれば雇用契約を終了させることができるとなります。
しかし、無断欠勤する人を14日も待たなければいけないというのは、一般的感覚からすると不合理ですよね。
突如として出勤しなくなって、仕事に穴が開いて、他の人の仕事量が増えて、、、。
このように、会社はある種の被害を蒙っていると言えますから、何らかのフォローが必要ですよね(無断欠勤というトラブルの原因を作っているのは社員さんの
側ですから、会社に非はありません)。
それでもなお、会社は、無断欠勤している社員さんを14日間は待たなければいけないのでしょうか。
ただ、「無断欠勤すれは即退職」というのも社員さんに厳しすぎるとも感じます。
何らかの事情(遠隔地で事故に遭ったとか、登山で遭難した等)で、連絡が取れず、結果として無断欠勤となってしまっているだけかもしれません。
今回は、無断欠勤が発生したとき、どうやって会社と社員の間のバランスを取るか、という点が核心の部分です。
民法は一般法、就業規則で無断欠勤時のルールを決めないといけない
民法627条1項では、【当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、
いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する】と定められていますから、この規定を使って、無断欠勤の場面に対応するのが通常の対処方法です。
しかし、労務管理の現場で、安易に民法の規定を使うべきなのかどうか、という疑問を私は抱きます。
なぜならば、民法627条は、本来、無断欠勤を想定して作られていなかったのではないかと考えるからです。
以前、「無届けで欠勤した日数が連続して3日に及んだときは、退職とします」と決めている就業規則を見たことがありますが、3日で退職するならば妥当な内容ではないかと。
その規定(就業規則)にさらに付け加えるとすれば、「なお、特別に斟酌すべき事情がある場合にはこの限りではありません(例外対応をしておく)」という原則に対する例外対応の可能性も残すことができます。
やむを得ず連絡できないため無断欠勤になった場合に対応できる
ように、事前準備をしておくということですね。
- 無断欠勤が続くと懲戒処分の対象になる。
- 一定期間(例:3日間、1週間など)連絡がない場合は自然退職とみなす。
- 事前に連絡を求める手順や期限。
このような規定が就業規則で定められていれば対応できます。
また、別途で考えるべきポイントとして、会社の判断で「退職」という処理をして良いのかどうかも考えなければいけませんよね。
無断欠勤程度では解雇は困難だから、退職としたいのが会社の思いですよね。
ただ、会社の判断でできるのは「解雇」であって、「退職」処理はできないのではないかという疑問も浮かび上がります。
退職は、原則として社員自身の自発的な意思表示によって行なわれる行為だから、会社の一方的判断によって行なうことはできないはずです。
自然退職としない場合は、就業規則に基づいて懲戒解雇もあります。通常解雇だと会社の責任で契約を解除したことになりますから、本人責任だと分かるようにするわけですね。
無断欠勤が生じたときの対応手順
従業員が無断欠勤している場合、まず連絡を試みます。電話やメール、メッセージアプリを利用して、さらに緊急連絡先にも確認します。
連絡を取れないときは、期限を設定します。連絡が取れない場合、具体的な期限を設定し、「○月○日までに連絡がない場合は、規定に基づき退職扱いとする」と通知する。例えば、3日間連絡なしで欠勤したときは懲戒解雇とする、と就業規則で決めている場合はこの連絡はしません。初日から3日目までは連絡を取るように試みて、それでも連絡できない場合は就業規則に基づいて懲戒解雇となります。
正式な手段として、内容証明郵便で通知を送付し、記録を残すのも1つの手段です。確かに連絡を取ったとの記録になります。
記録を残して、一方的に契約を解除していないと第三者に分かるようにしておきます。
無断欠勤は本人の責任ではありますが、無断で欠勤されてしまう職場の方に何らかの原因があるのではないかと考えると意外なことが分かるときもあるのでは。
無断欠勤時にどのような対応をするか、就業規則の内容を周知させておくのが大事ですね。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
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