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就業規則で決める懲戒の基準は具体的に

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懲戒は会社ごとに独自に基準を設けるところ

懲戒処分として、一定期間の昇給を停止するという場合。

もしくは、一定期間の減給を実施するという場合。

例えば、定期昇給を4月の初めに実施する会社を想定して、その会社で2月に昇給停止の懲戒処分を受けたとします。

停止の期間は4か月とします。

この場合、昇給停止が解除されるのは、6月となりますので、4月の定期昇給はなされないということになります。

しかし、4月に定期昇給しないとしても、停止処分開けの6月には定期昇給しないといけないのでしょうか。

雇用契約の時にも、4月初めに定期昇給を行うということは伝えられているはずですから、たとえ懲戒処分を受けても、事後的にであれ定期昇給を実施しない(上の例だと、処分開けの6月になります)のは契約違反なのではないかと思えてしまいますよね。

労働基準法には、昇給停止の制裁について細かくは決めていません(減給制裁の限度は定めあり)。そのため、懲戒の内容や程度については、会社のルールによるしかありません。

もちろん、就業規則での根拠が必要ですが、懲戒の対象行為や懲戒の内容・程度に関しては、会社の自由に決めることができます。

過去には、「従業員トイレの蓋を閉め忘れたら、1,000円の罰金」という懲戒を実施した診療所もありましたね。珍妙な話ですが、事実です。

その診療所では、就業規則での根拠も無く、上記の懲戒を実施したために無効となりましたが、就業規則で決めていれば、有効になることも。

「えぇ~!、トイレの蓋を閉め忘れただけでペナルティーがあるの?」と思われるかもしれませんが、就業規則でルールにすることは可能です。

ペナルティーを課して人を動かそうとしても、人は思うように動いてくれません。何らかの利点や旨味を感じると人は動きますが、失敗を責める環境では働きがいを感じませんし、働きやすい職場にもなりません。

懲戒の基準が分かりやすいと安心して働きやすい

就業規則で懲戒の基準を具体的に定めることは、従業員にとって予測可能性を高めるだけでなく、会社にとっても適正な運用を行うために重要です。

従業員が安心して働ける

懲戒処分の基準が明確であるほど、従業員はどのような行動が問題とされるかを理解しやすくなり、不必要な不安を減らせます。また、規範に従った行動を促進できます。何をするのがいけないのかが分かるのは安心ですね。

公平性を確保できる

あいまいな基準では、運用にばらつきが生じやすく、不公平感を生む可能性があります。具体的な基準があれば、全従業員に対して一貫性のある対応が可能です。好き嫌いで懲戒処分の内容が決められる職場に人は集まりませんから。

根拠がある懲戒処分ならば納得できる

懲戒処分が不明確な基準に基づいて行われた場合、従業員との間で法的トラブルに発展するリスクがあります。具体的な基準があれば、会社の判断を正当化しやすくなります。

管理者の判断の容易化

管理者にとっても、具体的な基準があれば迷うことなく対応でき、迅速な処分が可能です。どのような場合に、どう対応するかが分かります。

例えば、

勤務時間中の無断欠勤が◯日以上続いた場合、雇用契約が終了し、退職となります。
故意に会社の財産を破損または紛失させた場合、その損賠を賠償するよう求めることがあります。
セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントが認定された場合、14日以内の出勤停止とします。
就業規則に定められた禁止事項に違反し、会社に重大な損害を与えた場合、30日以内の出勤停止もしくは懲戒解雇とします。

このように懲戒の基準を定めて対応します。

基準を列挙しきれないときは、具体的な基準を列挙した上で、想定外の事案にも対応できる包括的な条項を設けることが有効です。例えば、「その他、社会通念上、重大な違反と認められる行為」と定めると、列挙されていない事案にも対応可能となり、予測可能性と柔軟性を両立できます。

決まり事は具体的でないと判断できない

車やバイクに乗っている方だと、「道路交通法」という法律をご存知かと思います。

一時停止違反、スピード違反、駐車禁止違反、飲酒運転違反、など(他にもたくさんあるはず)のルールを決めている法律ですね。

もし、道路交通法がルールについて曖昧な決め方をしていると、どうなるでしょうか。

例えば、一時停止だと、「一時停止している感じがあれば、一時停止とみなす」と法律で決めていたらどうでしょう(曖昧ですよね。「感じ」ってどんな感じでなのしょう?)。

現実の法律では、どんな基準に違反すれば、どんなペナルティがあるのか、そしてどれくらいの期間、ペナルティが継続するのか、ということについて厳密に決まっています。

会社のルールも同様です。曖昧に決めている部分があると、そこから綻びが生じるものです。

昇給停止でも、「一定期間停止する」としか書かれていないと、物議を醸します。

「いつまでなのか?」
「会社が任意で決めてしまうのか?」
「根拠も無く期間を決めていいのか?」
など、必要な基準を追加しないといけませんね。

他には、故意性・過失性の有無、会社や同僚に与えた影響の重大性、過去の懲戒歴、違反行為の頻度や継続性、これらも懲戒の際の基準に含まれます。

懲戒処分の手順は、違反行為の確認と事実調査、従業員本人への弁明の機会提供、懲戒委員会(職場で組織していれば)による検討、懲戒処分の通知と理由説明、といった順番を決めておくと、きちんとした基準で懲戒処分がされていると納得できます。

就業規則とは別に、担当者向けの「懲戒処分ガイドライン」や「事例集」を作成しておくと、実際に懲戒処分を実施する際の判断基準として利用できます。

 

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