あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

退職時に年次有給休暇を全て使い切るときの注意点

退職有休

 

 


働いている間に有給休暇を全部使い切ってしまえば、

<退職時に有給休暇をどうするか>

で悩むことはないのですが、
多かれ少なかれ残日数がある方もいらっしゃいます。


そういう場合は、

「辞めるときに全部使うか」

と考えるわけです。


在職時に使えなかった休暇を一気に使って辞める。


給与も付きますし、

「ささやかな退職金」

のような感じになりますよね。


ただし、退職時に有給休暇を使う時はちょっとした注意点があります。

 

休みの日を有給休暇に変えられない

まず1点目の注意点としては、一気に有給休暇を使うとなると、

「スケジュールを詰めて有給休暇を入れてしまいがち」

です。


仮に、退職時点で15日分の有給休暇が残っているとして、これを退職時に全部使いたいとしましょう。

この場合、一気に15日間で15日分を使い切れるかというと、そうならない場合があります。

 

カレンダーで示すと、

2018年

16日(火曜日)
17日(水曜日)
18日(木曜日)
19日(金曜日)
20日(土曜日)
21日(日曜日)

22日(月曜日)
23日(火曜日)
24日(水曜日)
25日(木曜日)
26日(金曜日)
27日(土曜日)
28日(日曜日)

29日(月曜日)
30日(火曜日)


2018年の1月16日から30日までの15日間ですが、15日で出勤を終え、その後の15日間全てを有給休暇に変えられるのかというと、それができない職場もあります。


なぜかというと、

週休1日なり
週休2日なり

休日がありますよね。

この休日には有給休暇を充当できないんです。


だから、仮に土日を休みにする職場だとすれば、

20日(土曜日)
21日(日曜日)
27日(土曜日)
28日(日曜日)

この4日間には有給休暇を入れられないというわけなんです。

1月16日から30日の間で有給休暇を使うとなると、最大で11日分になってしまい、4日分が余ってしまいます。


こうなってしまうと、
4日分は使われることなく退職手続きが完了してしまうかもしれませんから、

「あ〜、4日分、損した」となってしまいかねないんです。

 

ただ、会社によっては、退職時に限って、

<休日を入れずに一気に有給休暇を入れてしまう>

ところもあります。

先ほどの例だと、1月15日から30日まで、15日間すべてを有給休暇にしてしまうわけ。

ここで、「え〜! そんなことしてもいいの?」と思えますよね。

だって、休日を入れるのは労働基準法に書かれていることですし、雇用契約でも休日については決めているはずです。


しかし、

「すでに退職して仕事をしていない」

のですから、休日が消滅してしまっても労働者には不利益はありません

いや、むしろ退職時には休日無しで一気に有給休暇を消化してくれる方が労働者には有り難いぐらいです。


とはいえ、

労働基準法 第35条
『使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない』

と書かれていますから、

退職時とはいえ有給休暇を使っている間は厳密には在職中です。

となると、休日を入れずに有給休暇を一気に消化するのは35条違反ではあります。


35条に違反しない範囲で有給休暇を使うならば、1週間のうち1日だけを除いて有給休暇を入れる方法もあります。

先ほどの例だと、

日曜日だけを休日にしておいて、月曜日から土曜日までを有給休暇にして消化していくのも手です。

週1日の休日を織り込んで、有給休暇を全部消化するには、1月16日よりも、もう少し早い時期(1月10日や12日ぐらい)から休暇のスケジュールを入れておくと良いでしょう。

 

「退職時に限って休日なしで有給休暇を全部使う」
のも悪い選択肢では無いと私は思うのですが、

35条関連で苦言を呈する人がいるでしょうし、
「休みの日を有給休暇にはできない」という指摘をする人もいるでしょう。

 

有給休暇を消化する段階になれば、
「もう出勤をしておらず、仕事をしていない」
のですから、休日が無くても労働者側は困りません。

また、有給休暇をどのように使うかは当事者次第ですので、会社と社員でお互いに納得しているならば、休みの日を有給休暇に変えるのも1つの使い方のうちです。


退職するときは、どの日に有給休暇を充当するかを事前に決めておけば、今回のような問題は起こりません。                                

  1. 残っている休暇日数は何日か。
  2. 休暇をどの日に取るかというスケジュール。

この2点を決めて退職の手続きを進めるのが良いでしょう。

 

この方法ならば、休日を避けて有給休暇を充当できますから、35条が問題になることはないですし、「休みの日を有給休暇にはできない」という点も回避できます。

 

有給休暇を買い取るのはダメ、絶対

「退職時に有給休暇を買い取ればいいのでは?」

そう考える方もいらっしゃるはず。

この方法、私は反対です。

なぜ反対なのかというと、「買い取り単価を決められない」から。


有給休暇1日分をいくらで買い取るのか、この基準はありません。

そのため、極端に言うと、

「1日分を1,000円(ヤダ! 安すぎるぅ〜)」

で買い取ってもいいわけです。

ルールが無いからこんなことが起こるんですね。

 

さらに言うと、買い取るということは、

「有給休暇がまだ存在している」

わけですから、

「在職中」のはず。

 

となると、

「在職している人の有給休暇をお金で買い取っている」形になるので、

この点でもマズい。

 

というわけで、

「有給休暇を買い取る」

という発想そのものを持たない方が良いです。

ロクな結果になりませんから。


買うものじゃなく、使うもの。有給休暇は。

アルバイト・パートの有給休暇の計算方法
学生を含めたパートタイムで働く人たちは、1週間あたりの勤務日数や勤務時間がバラバラですから、年次有給休暇を付与する日数もバラバラになって管理に手間がかかりますよね。

 

有給休暇を使うのは在職中に。退職したら有給休暇は消滅する。

出勤しなくなった時点で退職。

そう思う方もいるでしょうが、有給休暇を使って辞めるとなると事情が変わります。


先ほどの例だと、1月16日から有給休暇を使う想定でしたが、

「じゃあ、1月15日が退職日というわけ?」と思うところでしょうが、その日は退職日じゃないんです。


有給休暇を使っている間は

「在職中」

ですので、1月15日には退職しておらず、有給休暇を使い切った時点で退職となるわけです。


そのため、仮に1月30日にすべての有給休暇を使い切ったとすれば、その日が退職日。

 

退職するまでは、社会保険や雇用保険で資格喪失処理ができません。

ここで資格喪失というのは、雇用保険や社会保険から脱退する処理のこと。


会社を辞めるとなれば、

雇用保険から脱退し、社会保険からも脱退します。


脱退という言葉を使っていますが、

正式には「被保険者資格を喪失する」と表現するのが正しいんですけどね。

分りやすくするために「脱退」という言葉を使っています。

 

次の職場に転職するなり、自営業で商売するとなれば、そちら側で新たに公的保険に入ります。

 

しかし、前の会社で有給休暇を消化している間は、

<まだ前の会社に在籍>

しており、

 

雇用保険や社会保険の被保険者資格を持っていますから、
新しい職場での保険に切り替える手続きができないんです。


次の職場での雇用保険なり社会保険に入るときは、

状況次第では、加入する手続きをちょっと待ってもらう必要があります。


退職して、被保険者資格を喪失(雇用保険や社会保険から脱退することを意味する)していないと次の会社で社会保険に入れない。

ここも退職時に有給休暇を使うときの注意点です。

 

ちなみに、有給休暇を消化している間に、他の会社でアルバイトができるかというと、それは可能です。

仮に、有給休暇が1ヶ月分残っていて、その間、時間があるから何かアルバイトをしようかと考える方もいらっしゃるかと思います。

退職する予定の会社では、雇用保険や社会保険に入っていても、他の会社、アルバイト先では入っていませんから、それらに加入しない範囲で働けば良いでしょう。


有給休暇が残っているとしても、多くて40日でしょうから、雇われてアルバイトで働く方はそう多くないのでは。仮に雇用されるとしても、週15時間程度にとどめておき、31日以上雇用されないようにして、退職する会社の方の雇用保険や社会保険と衝突しないようにします。

数日だけの短期間で働くとか、個人事業主として働くとか、長期間の雇用を必要としない働き方もありますので、有給休暇を消化している間に仕事をするならば、そういう仕事を選ぶのがおすすめです。

 

退職手続きが終わった後に年次有給休暇を取得できる?

一連の退職手続きが終わった後に、未消化の年次有給休暇を使ってから退職したい。こんな後出しジャンケンみたいに年次有給休暇を使いたいと申し出があったら、会社はそれに応じなければいけないのかどうか。

有給休暇を使うなら、もっと早く言ってよ。スケジュールの調整もあるのに。退職のための手続きはもう終わろうとしてる。そんな時になって、残っている年次有給休暇を使いたいなんて言われても困るよ。これが会社で手続きをしている人たちの気持ちでしょう。 

退職する際に、残っている年次有給休暇を全部使ってから仕事を辞めたい。そう考える方もいらっしゃるでしょう。お金に変わる休暇ですから、それをお金に変えてから退職するのが合理的です。 

本来、年次有給休暇は、在職している間に使える休暇制度であって、退職してしまって、在籍状況が消失して、後から有給休暇をやっぱり使いたい、と言われても、年休はもう残っておらず、雇用契約が終了したのと同時に無くなります。

会社が用意した退職届に記入して、ユニフォームなどの会社から借りてたものを返した。会社がハローワークに離職証明書を出して、ハローワークから離職票が発行される。さらに、雇用保険や社会保険の被保険者資格喪失手続きも終わっている。

そんな段階になって、未消化になっていた年次有給休暇を消化してから退職したい、などと言われても会社は対応する必要はありません。

ハローワークに提出した離職証明書を補正してもらって、退職日を変えて、とイレギュラーな対応をすることもありませんし、そういうことをすると退職した記録を改ざんしているという風にも捉えられますから。

退職するときに年次有給休暇を全部使って辞める。そういう予定があるんだったら、退職する1ヶ月前もしくは2ヶ月前ぐらいに、直属の上長と勤務シフトを調整して、退職日までに年次有給休暇が全て消化できるようスケジュールを組んでおくと良いでしょう。

被保険者資格の喪失手続き、退職証明書の提出、そういう退職の手続きがもう済んでしまってる段階で、使っていなかった有給休暇を使いたいと言われても、会社はそれに応じる義務はありませんし、応じてもらえなかったとしてもクレームを言うことはできません。

ですから、退職時に年次有給休暇を使って辞める予定なら、期間に余裕を設けて勤務シフトを調整し、年次有給休暇の消化スケジュールを決めておく。これぐらいの事前準備をしておく必要があります。

 

有給休暇の残日数管理を簡単にするには?
有給休暇の残日数はひとりひとり違うものですから、その日数を管理するのは労務管理では負担になります。年次有給休暇の管理もできる給与計算ソフトを使うと、その作業が楽になるのでは。

 

退職日までに年次有給休暇を全て消化して退職するときの対処法

退職するとなれば、残っている年次有給休暇を全部使ってから、と考える方もいらっしゃるでしょう。退職日から逆算して、何日分の年次有給休暇を消化できるかを考えて、勤務シフトを組むかと思います。

年休消化をするにあたって、労働基準法では法定休日を入れる必要がありますから、法定休日を潰してでも年次有給休暇を入れて消化しても良いのかどうか。

例えば、週休2日で休みがあって、出勤日は1週間に5日。こも条件で雇用契約を締結している人だと、通常は1週間に最大で5日分の年次有給休暇を消化できます。出勤日に年次有給休暇を充当することができますので。

では、休日となっている残り2日にも年次有給休暇を充当して消化していくことができるのかどうか、ここが問題となります。普段と異なり、すでに退職する日程が決まっている方が残った年次有給休暇を消化していくという場面ですから、出勤日だけでなく休日も年次有給休暇に変えていきたいと考えるところです。

仮に、土曜日と日曜日が休みで、出勤日が月曜日から金曜日までの5日間とすると、土曜日と日曜日に年次有給休暇を入れることができれば、通常よりも速いペースで年次有給休暇を消化して退職することができます。

ならば、休日である土曜日と日曜日に年次有給休暇を入れて消化していくことができるのかどうか。

既に退職することが決まっていて、年次有給休暇を消化してる間はもう会社には出勤してこないわけですから、休日をそのまま休日にしても良いですが、それを年次有給休暇に変えてしまったとしても労働者には不利益がありません

休日が潰れたとしても、どっちにしろ出勤しませんので、休日になろうと年次有給休暇になろうと、どちらにしても休みの日です。

だったら土曜日と日曜日も年次有給休暇に変えて消化するスピードを上げてもいいんじゃないかと思えますよね。

しかし、法定休日を1週間に1日は入れなければいけないと労働基準法で決められていますから、年次有給休暇でその法定休日を潰してしまうと法律違反になってしまいます。厳密には。

仮に、法定休日を日曜日だとすれば、もう一方の休日である土曜日は法定外の休日ですから、休みにするかどうかは雇用契約で当事者間で決めることができます。土曜日を休みの日にしてもいいですし、出勤日にしても構わないわけです。

雇用契約で決めた内容ですから、当事者間の合意でもって、その契約の内容とは違う形にすることも可能です。とはいえ、契約として一度決めたことですから、後から好きなように変えてしまうのはそれはそれでまた別の問題がありますが、今回は退職に際して残った年次有給休暇を一気に消化していきたい、という労働者側の要望に応えるための契約変更です。 

ですから、土曜日を年次有給休暇に変えて、週6日のペースで年次有給休暇を消化していくのは、当事者間で話し合って合意しておけば可能です。

ですが、もう一方の休日である法定休日まで潰してしまうと、厳密には労働基準法に違反してしまいますから、最大でも週6日のペースで年次有給休暇を消化して退職するのが妥当な対処法です

とは言え、法定休日を潰して年次有給休暇を入れて、週7日のペースで有給休暇を消化していたとしても、もうすでに本人は退職することが決まっていて、出勤してくることは無いですから、法定休日が取れなかったとしても本人には不利益はありません。

不利益が無いなら法定休日を年次有給休暇に変えちゃってもいいんじゃないか、とも思えるんですけれども、形の上では労働基準法に違反してしまいますから、このせめぎ合いをどう考えるかによります。この違反で使用者に何かペナルティを課される可能性は低いでしょう。

やはり妥当な解決策としては、法定外休日である土曜日を年次有給休暇に変えて、週6日のペースで退職日に向けて年次有給休暇を消化していくのが良いでしょう。

この方法ならば、雇用契約の範囲内でできることですし、当事者間で法定外休日である土曜日にも年次有給休暇を入れて消化していく、とお互いに合意すれば可能になることです。

法定休日まで潰してしまうと、表面的であれ、形式的であれ、労働基準法違反の状態にはなってしまいますから、そこを避けたいならば法定休日を残しておいて、残りの6日間で有給休暇を入れて消化していくと良いでしょう。

 

 

口で伝えるだけでなく、書面で年次有給休暇を申請する

「退職するときに残った有給休暇を全部使います」
「うん、分かったよ」

と言葉だけで約束する職場もあるでしょうが、

チャンと「有給休暇取得届」を作ってください。


決まったフォーマットは無いのですが、

1.申請日
2.名前
3.有給休暇を取る日

この3点は記録に残しておかないと、

 

後で、

「こんなはずじゃなかったのに」

と後悔するハメになります。

 

どの日に有給休暇を使って、退職していくのか。

このスケジュールのすり合わせをしていれば、退職時のトラブルは減ります。

 

年次有給休暇の管理にまつわる疑問と正しい対応例
働いてる人にとって年次有給休暇は関心を集めますから、労務管理でも疑問や問題が生じやすいところですよね。労務管理でもトラブルになりやすいのが年次有給休暇の取扱いです。ならば年次有給休暇についてキッチリしている職場にすれば、働いている人たちからの評価も上がっていくでしょうね。

 

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