会社を退職した後の健康保険を会社から退職者に案内しよう。

 


会社に在籍していると、会社経由で健康保険に加入しています。しかし、退職した後は社会保険から抜けますから、健康保険をどうするかが心配です。

大阪府の健康保険協会で、窓口に来て手続きをした人にアンケートが実施され、退職後の健康保険として利用される任意継続制度をどのようにして知ったか調査しています。

Q.任意継続の制度についてどこで知りましたか。
  ・退職した会社     45%
  ・家族や友人      18%
  ・以前加入経験あり   16%

これは回答の上位3つです。一番多かったのが退職した会社から健康保険の任意継続制度を知ったとのこと。

健康保険には在職中だけでなく、退職した後もしばらく健康保険に入れる任意継続という制度があります。これだと今までの健康保険を続けられるという安心感がありますね。ただし、会社での健康保険は一度脱退(被保険者資格を喪失)して、改めて任意継続被保険者として健康保険に入ります。なお、健康保険を任意で継続できるのは最大で2年です。

  1. 退職する日まで継続して2ヶ月以上、健康保険に加入していた。
  2. 退職日の翌日から20日以内に手続きする。


健康保険を任意継続するにはこの2点の条件があります。

 

 


保険料が増える人。保険料が減る人。


健康保険の保険料は退職時の収入に連動していますが、上限があります。平成29年度の場合は、28,364円。40歳以上の方だと32,984円が保険料の上限です。

健康保険を任意継続した場合の健康保険料

保険料表を見ると、上限額がそれぞれ28,364円、32,984円となっています。つまり、退職時の月収が27万円以上だった人は保険料が同じになるというわけです。月収27万円の人、月収49万円の人、月収89万円の人、月収172万円の人、この人達は全て同じ保険料になります。

在職時は会社と折半負担ですが、任意継続すると保険料は全額本人が支払うことになります。ただ、保険料は月3万円ほどで上限が設定されていますから、在職時に3万円を超えて健康保険料を支払っていた方は保険料が下がる場合があります。

例えば、月収79万円の人だと、在職中の健康保険料は8万円ほどになり、半分の4万円が本人負担になっています。この人が退職すると、在職時の保険料と比較して上限額(28,364円もしくは32,984円)を超えます。その結果、在職時よりも保険料が減ります。

在職時に、概ね月収60万円以上の人は、退職後に健康保険を任意継続すると、本人が負担する保険料が先程の上限額を超えるため、本人負担の保険料が下がります。
一方、月収28万円の人の場合は、在職時は本人負担が14,000円ほどですが、退職した後は28,000円ほどに上がります。

収入が高めで、在職時の健康保険料(本人負担分である半分)が上限額(28,364円もしくは32,984円)を超えている人(月収60万円程度から上の人)は、任意継続すると在職時よりも本人負担が減ります。

社会保険料には上限があると以前にも書きましたが、健康保険を任意継続する場合も保険料に上限があるんですね。


book788(税金に上限は無いが社会保険料には上限がある。)

 



税金も社会保険も会社任せ。


会社員にとって、税金や社会保険に関する手続きは会社におんぶに抱っこな状態ですから、会社から情報が提供されないと、退職する人は途方に暮れてしまいます。45%の人が退職時の会社から任意継続制度に関する情報を得ているわけですから、会社としては退職する人に積極的に情報を出してあげないといけないわけです。

まず、会社を退職した後は、選択肢が3つあります。

  1. 健康保険を任意継続する。
  2. 市町村の国民健康保険に加入する。
  3. 家族の健康保険を使って被扶養者になる。


この3つです。

任意継続については先程書いた通り。

一方、国民健康保険に入る場合は、管轄が市町村ですので、市役所や町役場に行って手続きします。退職日の翌日から14日以内の手続きが必要ですが、もし遅れても後から加入できます。ただし、手続きが遅れると、遡って保険料を支払う必要があるので注意。
例えば、大阪市の場合、国民健康保険の保険料上限は、平成29年度は年間で89万円。月あたりだと約74,000円ほどですので、協会けんぽの健康保険を任意継続した場合の上限額(28,364円もしくは32,984円)よりも高くなります。

在職時に収入が多かった人、月収60万円を超えていた人ならば、国民健康保険よりも任意継続で健康保険に入った方が保険料は安くなります。

また、国民健康保険には減免制度があります。他方、会社経由の健康保険には産休時や育休時などの保険料免除制度はありますが、そのような例外を除いて減免はありません。

それらの減免制度を利用して、国民健康保険の方が保険料が安いのか、それとも任意継続する方が安いのか。さらに退職時の収入がいくらだったか。これらを比較して、国民健康保険にするか、健康保険を任意継続するか、選ぶことが可能です。むろん家族が会社経由の健康保険に入っているならば、被扶養者になるのも選択肢の1つです。選択肢は3つありますからね。

とはいえ、国民健康保険は退職から14日以内、健康保険を任意継続する場合は退職から20日以内と期限が短いため、退職したらすぐに健康保険の手続きを始める方が良いでしょう。このように手続きのための時間的猶予が短いので、退職時には健康保険をどうするか会社から案内しておかないといけないわけです。




国民健康保険の保険料は3種類。


給与明細に書かれた健康保険料を見れば、健康保険料は1つ、1種類、1個だけ、そう思ってしまいますけれども、それは会社経由で社会保険料に入っているからです。会社が加入する協会けんぽの仕組みはシンプルで、保険料は1種類だけ。40歳以上になると介護保険料が加わりますが、変化があるとすればそれだけです。

一方、国民健康保険料の中身は3つに分かれています。

医療分・後期高齢者支援金分・介護分、この3つに分かれていて、さらにそれぞれ平等割、均等割、所得割という内訳になっています。3つと書きましたが、実質は9つあると言っても過言ではないのです。

医療分が病気や怪我の治療に回る保険料。後期高齢者支援金分は後期高齢者の医療を支えるためのもの。介護分(40歳以上の人が対象)は介護保険に回る保険料です。
さらに、平等割というのは世帯あたりで発生する保険料。均等割というのは加入者1人当たりで発生する保険料。所得割は収入に応じて発生する保険料。

詳しくは大阪市のウェブサイトで御覧ください。


数字がいっぱいで慣れていないと訳が分からなくなるぐらい。社会保険のことは会社にお任せだった人は、国民健康保険の仕組みを理解するために少し時間がかかるでしょう。

国民健康保険料の軽減は、平等割と均等割の部分が対象になり、最大で7割軽減から最小で3割軽減まであります(市町村ごとに違いがある。今回は大阪市のケース)。

また、会社が倒産したり、解雇された場合も保険料の軽減があります。収入を7割減として保険料を計算するので、おおよそ保険料も7割減になります。

さらに、災害時の減免、自営業の人が倒産や廃業した場合にも減免があります。


減免のメニューが多いのが国民健康保険で、保険料に関することで何かあったら、市町村の保険担当の部署まで問い合わせるのが良いでしょう。

 



会社経由の健康保険と市町村の国民健康保険はどう違うのか。


この点で疑問を持つ方も多いですが、管轄がまず違います(健康保険協会と市町村)し、保険料の計算方法も違います。

さらに最大の違いと言っていいのは、法人と個人の違いです。協会けんぽは法人経由で入るもので、一方、国民健康保険は個人で入るものです。

会社経由だと、保険料が会社と個人で50%ずつ分け合う形になりますから、負担感が軽減されているように感じます。

また、個人の方であっても、自営業を法人化して、自分の会社経由で健康保険に入れば、法人のお金を自分の健康保険に回せます(半額分だけですが)。

さらに、自分自身が代表になっている法人ならば、自分への報酬も調整できます。つまり、法人にお金を残して、自分への給与を減らせば、社会保険料も減ります。法人がダムのような働きをして、資金の減りを抑えてくれるわけです。個人で加入する国民健康保険だと、法人のような調整弁がありませんから、収入を調整して社会保険料をコントロールするのは無理です。

コントロールしやすいという点を重視すれば、国民健康保険よりも、法人を間に挟める協会けんぽの健康保険の方が使い勝手が良いです。

 


退職者へ案内する内容は?

 

退職後の健康保険を案内するといっても、何をどう案内するのか、ここが分からないとどうしようもありません。

退職後の健康保険案内チラシ

協会けんぽではこういう案内も作成していて、任意継続、国民健康保険、被扶養者、これら3つの選択肢についても紹介されています。さらに、新しい保険証が届くまではどうするのかという点も説明しています。

このチラシを退職日までに余裕を持って(退職の1ヶ月前など)退職予定の人に渡してあげるといいでしょう。


さらに、協会けんぽ継続セットというものも用意されていて、

  1. 任意継続の手続書類。
  2. 説明用のリーフレット。
  3. マイナンバーの扱いに関するチラシ。
  4. 手続書類を郵送するための封筒。


この4点がセットになっています。

このセットも、退職日の1ヶ月前ぐらいから用意しておいて、退職する人に渡しておけば安心でしょう。



 

山口正博 社会保険労務士事務所
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