特例、加算、年金額の計算、厚生年金は複雑過ぎる。

 

年金の受取額が倍になることも。知らないと大損な「特例」とは?

 

 

スンナリと理解できますか?

 

厚生年金には、長期加入者に対する特例制度があり、長い期間にわたって厚生年金に加入していると、通常よりも多く年金を受け取れます。

Q. 私は、昭和26年10月生まれの男性ですが、厚生年金保険の加入期間が44年あります。老齢厚生年金は、いつからもらえますか。(日本年金機構)


日本年金機構のウェブサイトで説明されている内容を読んで、「なるほど」と理解できる人はどれほどいるのでしょうか。

上記のQでは、厚生年金に44年加入した人の例が掲載されていますけれども、何がどう特例なのか、どれだけ年金が増えるのか、これらをすっと理解できる人は僅かでしょう。9割ぐらいの人は「何だかよく分からない」という感覚になるはずです。

 

 


厚生年金を受け取る年齢は生年月日によって違う。


「年金を受け取れるのは65歳からやで〜」と言っている人もいますけれども、確かに65歳から受け取るというのは正しいです。しかし、全員が65歳からというわけではなく、個人差があります。

60歳から受け取れる人もいますし、62歳からの人、64歳からの人もいます。厚生年金を受け取る時期は、その人の生年月日と性別で決まりますから、「一律に65歳から」と誤解していると、受け取れる年金を受け取り忘れる人も出てきます。

上の例では、「昭和26年10月生まれの男性」ですが、この方だと、厚生年金を受け取り始めるのは60歳からです。

ここで、「そうか、60歳から厚生年金を受け取れるんやな?」と反応したいところですけれども、60歳から支給されるのは収入に連動した年金だけなんですね。

このように説明すると、「収入に連動した年金だけ? どういうこっちゃ?」と混乱します。ほんと、人の心が手に取るように分かります。こうやって説明していると、年金の仕組みが分からない人の気持ちが伝わってくるんです。

厚生年金は、収入に連動して保険料が決まります。平成29年9月分以降、保険料率は18.3%です。

保険料が収入に連動するため、支給される年金も収入に連動するわけです。それが「収入に連動した年金」というものです。難しい言葉を使うと、「報酬比例部分の年金」と表現します。

ここまで読んで、「『収入に連動した年金だけ』、と言ったんやから、他にもあるんか?」と思うでしょう。

はい。厚生年金には収入に連動した年金と「定額で支給される年金」があるんです。収入に連動するのが厚生年金なのに定額で支給される年金があると変な感じですが、厚生年金は2つの年金が層になって組み合わさっているんです。収入に連動する年金と定額の年金、この2つです。

厚生年金の年金額を計算する数値(日本年金機構)


定額部分の年金を計算する式は、「1,625 × 1.000 × 厚生年金の加入月数」です。

44年、厚生年金に加入すると、528月、これで計算すると年858,000円になります。1.000の部分は生年月日で決まっていて、昭和26年10月生まれの人は1.000になります。

厚生年金の定額部分の単価(平成29年度)


昭和26年10月生まれの男性だと、収入に連動した年金は60歳から支給されるのですが、定額の年金は65歳からなんです。

一律に65歳からではなく、昭和26年10月生まれの男性だと、60歳から年金を受け取るんですね。

「年金を繰上げて受給するのとは違うの?」と疑問に思う方もいるでしょうが、繰り上げ受給とは違います。生年月日と性別に応じて、厚生年金を受給できる年齢が決まっていて、時期を繰り上げたために、年金の受給時期が60歳になったわけではないんです。

ちなみに、昭和26年10月生まれの女性だとどうなるか。生年月日が同じでも女性の場合は、収入に連動した年金が60歳から(ここは男性と同じ)。さらに、定額の年金は63歳から受給できます。

男性の場合は、定額部分が65歳からでしたが、女性だと63歳からになるんですね。つまり、女性の方が受け取り時期では若干有利というわけです。

ただし、受け取る年金額は収入によって変わりますから、男性よりも女性の方が厚生年金を多く受け取るというわけではありません。


ここまで読んで、「あぁ、やっぱり年金は難しいな」と思ったでしょうけれども、『厚生年金を受け取る時期は生年月日と性別で決まるんだ』という点だけは知っておいてください。これだけならば頭に入りますよね。

 

 

 

20歳から入っても64歳までかかる。


さて、厚生年金に長期間加入した人の話ですが、特例扱いを受けるには44年間、厚生年金に入る必要があります。

仮に44年間、厚生年金に加入したとすると、先程の「昭和26年10月生まれの男性」の場合、定額で支給される年金も60歳から受け取れるわけです。

定額部分の年金が858,000円で、これを5年分受け取るとすると、合計で429万円です。これが44年間にわたって厚生年金に加入した人へのご褒美です。

5年で429万円を多いと感じるか、多くないと感じるか、それは個人差があります。


このように確かに年金は増えるのですけれども、長期といっても3年とか10年程度のものではなく44年も加入しないといけないのが厄介なところです。

44年間も厚生年金に加入するのは、言葉で書くのは簡単ですが、実際に加入し続けるとなると簡単なことではありません。

528ヶ月、厚生年金の保険料を払うとして、仮に月5万円の保険料だとすると、2,640万円もの保険料が44年間で発生します。これだけ可処分所得を減らして、ジッと厚生年金に加入し続ける忍耐力は大したものですが、あえて狙ってまで手に入れるほどの見返りがあるかどうかというと「う〜ん、、、」という感じです。

44年、528ヶ月、1ヶ月でも足りなければ特例は適用されませんから、527ヶ月とか522ヶ月だと、特例によるご褒美はありません。「ちょっとぐらいオマケしてくれや〜」と言っても通りません。


20歳から厚生年金に入ったとして、44年を達成するまで64歳までかかります。これを長いとみるか、そうではないと考えるか。一概には答えにくいところですけれども、私は「長すぎる」と思います。

 

 


加入期間44年を達成する方法。


厚生年金に入り続けるには、

  1. 会社に所属して、そこを経由して社会保険に加入する。
  2. 自分で商売を始めて、法人を作り、その法人経由で社会保険に加入する。

この2通りです。

1の場合は、フルタイム勤務だけでなく、パートタイマーとして厚生年金に入った期間もカウントされます。

2の方法は、自分で法人を作り、そこの社長なり代表になれば、その法人経由で厚生年金に入れます。社会保険では社長も従業員と同じ扱いですから、一般社員と同じように厚生年金に入ります。


ちなみに、国民年金だけ加入している期間は対象外です。例えば、大学生が国民年金の保険料を支払って加入している期間は、今回の44年の中にはカウントされません。

さらに、自営業の人も国民年金だけ加入していますから、この加入期間も44年には含まれません。


考えると、44年というのはハードルが高すぎます。しかも、あえて目指すほど大きなニンジンではありません。44年分の命を投じてまで、わずかに年金を増やすだけです。

 

 


厚生年金は仕組みが難しすぎる。


大学生の頃から感じていますが、厚生年金の仕組みは複雑すぎます。

説明する側は理解していても、それを他の人に説明するのは至難の業です。


定額部分と報酬比例部分なんて言葉を使われてもサッパリ分からない。
特別支給の老齢厚生年金と言われても、何がどう特別なのか分からない。
生年月日や年金額など数字がワンサカと出てきて、訳が分からない。
さらに振替加算だの配偶者加給だの、珍妙な仕組みまである。

これが普通の人の感覚です。このように思ったり感じたりするのがマトモな人。

「あぁ、全部分かるよ」なんていう人は、その道の専門家です。一般の人じゃありません。

 

年金の仕組みを人に説明するのは難しいんです。大枠が分かれば、それほど難解ではないのですけれども、大枠を理解するまでに苦労するんですね。

自分でテキストを読んで理解しても、それを人に説明するとなると難易度が上がります。

年金のことを説明する人は、立て板に水のごとく説明していくのですが、話を聞いたり、文字を読んでいる人は置いてけぼりなんです。ここで書いている内容もそうなっている恐れあり。

どれだけ簡単に、分かりやすく説明しても、理解してくれるのは10人中2人か3人ぐらい。いや、100人中6人とかではないかと思います。

「年金 = 難しい、ややこしい、分かりにくい」こういう先入観ができてしまっているため、これを崩していく必要があります。


私が国民年金や厚生年金を理解したのは大学生の頃(社労士試験のために学習した)ですが、国民年金はさほど難しくないと感じましたが、厚生年金の複雑さにはウンザリしましたね。同じ年金なのに、これほど複雑さが違うのかと。

国民年金と厚生年金は別々の制度ですが、お互いに連携している部分もあって、この点も理解を妨げている原因の一つです。

 

 

 


金融資産は他にもある。


長く加入しなくちゃと思うよりも、年金を増やしたいならば確定拠出年金で資産を増やす方が簡単ですし、気が楽です。

44年間も会社にロックインされる方が大損というケースもあるでしょうし、厚生年金を中心にして人生を設計しないほうがよいのではないかと思います。年金が破綻するという話は抜きにしても。


厚生年金だけで将来を設計せず、他の方法で金融資産を作っていく選択肢も考える方が良いでしょう。


確定拠出年金
株式
不動産
投資信託

確定拠出年金は使いやすくなりましたし、枠は小さいですがNISAもあります。

金融資産は年金以外にも多々あります。今ならば仮想通貨も金融資産として扱われています。


厚生年金に拘らず、柔軟に選択肢を広げて考えるのをオススメします。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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